熱海市伊豆山の大規模土石流を巡り、静岡県行政対応検証委員会の委員を務めた出石稔関東学院大法学部長(行政法)が17日までにインタビューに応じ、検証委の報告書に関し「結果的に市の対応に焦点が当たり過ぎ、県への検証が不十分だった。十分な対応ができず個人的には悔いが残っている」との認識を明らかにした。
■委員主導のヒアリングできず
検証委は昨年12月から今年5月にかけて非公開で4回開催。行政法に詳しい出石氏は、担当職員へのヒアリングを当事者の県や市が行ったことについて「県から早期に報告書をまとめるように求められ、検証期間が限られた」と委員主導でヒアリングを実施できなかった理由を釈明した。
県が是正したと主張する森林法の林地開発許可違反は、投棄された残土が撤去されていないとして「違法状態が今も継続している」と問題視。「この点を検証委で指摘したが、報告書では市への指摘に比べ十分とは言えなかったかもしれない」とした。
残土投棄を初期段階で止められた可能性のある砂防規制の放置問題についても「(規制範囲を国に申請する)県側の説明が十分でなかったためか、ほとんど議論がなかった。委員は受けた説明の範囲でしか判断できない」と振り返った。
その上で、森林法や砂防法、県土採取等規制条例など関係法令の規制の重複を避けて他部署に任せようとする県や市の各担当部署の姿勢を「被害を受ける住民を考えた時に、可能な法令を極力適用させることがあっても良い」と批判。「関係法令は重複適用されていい」とし、行政の縦割りで規制が不十分になることを避けるべきだと指摘した。
事務局が意見交ぜて説明 出石氏一問一答
静岡県行政対応検証委員会の出石稔委員(関東学院大法学部長)へのインタビューの一問一答は次の通り。 ―議事録で事務局が「森林法による規制は困難だった」などと説明している場面がある。議論が事務局主導だったのではないか。
「事務局が森林法の解釈を示しているという面は否めない。県当局の説明を代弁しているという取り方もできるが、いずれにせよ、事実に意見を交ぜて説明している点は、多少なりとも事務局の役割の範囲を逸脱しているのではないか」
―砂防法対応の説明は十分だったのか。
「砂防法の議論はほとんどしていない。砂防指定は広範囲に面的に行うもので、個別法に基づく盛り土規制とは趣旨が異なり、盛り土の崩落と直接関連しないとの認識だった。ただ、私自身は砂防法にあまり詳しくなく、委員の知見が及ばなかった」
―県や市の当事者による検証は限界があったのではないか。
「内部検証の延長だった。委員は事務局から受けた説明の範囲でしか判断できないので、その範疇(はんちゅう)でしか意見が言えない面はあったかもしれない」
―関係法令を重複して適用することは避けるべきなのか。
「重複適用されていい。県は県で、市は市で、各担当部署ごとに所管する法令にのっとって対応していけば良かった。一つに絞れと言って、お互いに相手の仕事だと考えるから、各部署の仕事がおろそかになる。被害を受ける住民を考えた時に、可能な法令を極力適用させることがあっても良い」
―検証委報告書の今後の取り扱いは。
「一定の役割を果たしたという自負もあるので、私から再度、報告書の加筆や修正をすべきとは言えない」
<メモ>熱海市伊豆山の土石流に関する行政対応検証 大規模土石流を招いた盛り土(残土の投棄)を規制する関係法令は複数あり、砂防法や森林法など、法令ごとに手続きの権限は国、県、市に分かれている。県が設置した行政対応検証委員会は弁護士や学者ら4人が県と市を検証した。市議会は調査特別委員会(百条委員会)で市の対応の検証に当たる。県議会は今後、特別委員会を設置して県の対応を検証する方針。
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