Thursday, September 1, 2022

オルミエントが円形脱毛症の適応を取得 - 日経メディカル

 2022年6月20日、ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬のバリシチニブ(商品名オルミエント錠4mg、同錠2mg)の適応が追加された。追加された適応は「円形脱毛症(ただし、脱毛部位が広範囲に及ぶ難治の場合に限る)」、用法用量は「成人に1回4mg経口投与する。なお、患者の状態により2mgに減量すること」となっている。

 円形脱毛症(AA)は、主として類円系の脱毛斑を後天性に生じる疾患である。脱毛症状は頭部だけでなく眉、まつげなど、毛髪が存在するあらゆる部位に及び、脱毛斑の数、範囲、形態などにより、通常型、脱毛巣が全頭部に拡大する全頭型、脱毛が全身に拡大する汎発型、頭髪の生え際が帯状に脱毛する蛇行型に分類されている。患者の大半は比較的若年層であり、約8~9割は40歳までに発症し、性別や毛髪の色により罹患率に差はないとされている。脱毛症状の経過は様々であり、重症例では増悪・軽快を繰り返しながら脱毛斑が拡大することが報告されている。罹患患者では、脱毛は感情的、心理的苦痛を伴い、日常生活でのQOLに大きく影響する。

 AAは毛包を標的とした慢性の臓器特異的自己免疫疾患と考えられている。毛包の周囲に自己反応性CD8陽性T細胞が浸潤し、炎症が誘発され、毛包が傷害されることにより脱毛が生じるとされている。AAの薬物治療には、AA 患者の重症度や症状に応じて、ステロイドの外用療法、局所注射療法、局所免疫療法、内服療法などが対症療法として用いられている。脱毛斑が少数の場合は発症後1年以内に毛髪が回復することが多く、経過観察のみでもよいとされているが、症状固定期の重症AAに対しては、局所免疫療法、紫外線療法等の使用を考慮されている。しかし、保険適応外の局所免疫療法には接触皮膚炎等の副作用の懸念があり、経口ステロイドは休薬後の再発率が高く長期的な予後の改善に関するエビデンスが限られているなど、脱毛面積が広範囲な重症 AA に対する治療選択肢は限定されているのが現状である。

 バリシチニブは、2017年より「関節リウマチ(関節の構造的損傷の予防を含む)」、20年に「アトピー性皮膚炎」、21年4月に「SARS-CoV-2による肺炎」の適応で臨床使用されており、今回、AAの適応では日本初となるJAK阻害薬である。

 AAの発症には、多数のサイトカイン(IFNγ、IL-15、IL-2、IL-7など)が関与している。バリシチニブは、これらサイトカインの細胞内シグナル伝達(JAK-STAT)経路に重要な役割を果たすJAKファミリー(JAK1、JAK2)に対する阻害作用を示し、サイトカインによる免疫反応の過剰な活性化を抑制することでAAを改善する薬剤である。

 重症または極めて重症のAA患者を対象とした国際共同第II/III相試験(BRAVE-AA1[JAHO]試験)(第III相パート)、国際共同第Ⅲ相試験(BRAVE-AA2[JAIR]試験)において、同薬の有効性と安全性が確認された。海外では2022年6月時点でトルコ、米国でAAの適応で承認されている。

 副作用としては、LDLコレステロール上昇(10%以上)などであり、重大なものは帯状疱疹(2.8%)などの感染症、消化管穿孔(0.1%未満)、好中球減少(0.9%)、リンパ球減少(1.1%)、ヘモグロビン減少(0.1%)、ALT上昇(1.0%)などの肝機能障害、黄疸、間質性肺炎(0.1%未満)、静脈血栓塞栓症(0.2%)が報告されているので十分注意する必要がある。

 薬剤使用に際しては、下記の事項についても留意しておかなければならない。

●同薬の適応患者は「投与開始時に、頭部全体のおおむね50%以上に脱毛が認められ、過去6カ月程度毛髪に自然再生が認められない患者」が対象となる

●同薬による治療反応は、通常投与開始から36週までに得られる。36週までに治療反応が得られない場合は、投与中止を考慮すること

●医薬品リスク管理計画書(RMP)では、重要な潜在的リスクとして「横紋筋融解症、ミオパチー」「悪性腫瘍」「心血管系事象」が挙げられている

●製薬会社から患者への服薬指導等に利用可能な患者向け説明書が発行されている

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