公的保険制度に関する
情報提供は定着するか?
監督指針の一部改正は保険提案に変化をもたらすか?
昨年12月28日、「保険会社向けの総合的な監督指針」等の一部改正が施行された。その内容は、お客さまの意向把握とそれに沿った提案を行うことの一環として、公的保険制度に関する情報提供をしていくことに着眼するというものである。
その背景には、将来の公的年金に対する不安をあおることによる過剰な契約の防止や、高額療養費などの健康保険からの給付を十分に説明しないまま医療保険を提案しているのではないか、という危惧がある。
さらには、募集文書への単なる注意喚起文言の挿入や、動画による研修を提供するといったレベルのものではなく、実効性までを網羅した創意工夫を要請している。監督指針は保険業界と代理店の両者へ求めているものだが、ここでは保険代理店の態勢整備と、それに対する保険会社の支援についてフォーカスしていこう。
安易なスクリプト(話法)の提供は逆効果
保険会社においては、これらの分野の研修や資料作成は教育部門が中心となって進めていく。ここで安易にやってしまいがちなのが、これまでのコンテンツの焼き直しである。直接お客さまと接することが少ない教育部門の担当者は前例に倣うことをよしとする習性がある。すると、以下のようなスクリプトが展開されてしまう。
募集人「公的年金は、老後のためだけのものではないのです。それ以外に支給されるケースについてはご存じですか?」
お客さま「いえ、知らないですね」
募集人「実は……、亡くなったときの遺族年金、障害を負ったときの障害年金があるのです!」
お客さま「えっ!そうなのですか?知りませんでした」
募集人「このようなことを知らない!という方がいらっしゃいましたら、3名ご紹介いただければ……」
このような陳腐な話法が代理店へ提供され、全く使いものにならず、誰も見ない教育動画が垂れ流され続けることになる。
現在の保険業界における教育コンテンツは、平成初期に構築されたものが多い。昭和時代の生命保険販売はGNP営業(義理・人情・プレゼント)と揶揄(やゆ)されてきた。これは平成に入り、パソコンを駆使したコンサルティングセールスという手法が出始めたころからだ。30年たった現在も続くこの“呪縛”について、述べていきたい。
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