Thursday, March 3, 2022

塩粒サイズのコンピュータに組み込む極小バッテリー 約10時間の電力供給が可能 - ITmedia NEWS

Innovative Tech:

このコーナーでは、テクノロジーの最新研究を紹介するWebメディア「Seamless」を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。

 ドイツのChemnitz University of TechnologyとドイツのIFW Dresden、ドイツのDresden University of Technologyによる研究チームが開発した「On-Chip Batteries for Dust-Sized Computers」は、塩粒サイズ(1平方ミリメートル未満)のコンピュータに組み込む極小オンチップバッテリーだ。円筒型のシリンダー電池の構造を模倣したこのバッテリーは、フットプリント面積を減らしても十分なエネルギー密度を維持できるという。

塩粒よりも小さいバッテリー

 1平方ミリメートル未満のコンピュータを駆動するための電力は、電気を収穫するか、チップ上に適切な電池(オンチップバッテリー)を搭載するかによって供給できる。前者は太陽光や温度、超音波による振動などの外力によって供給される。外力ベースだとフットプリント面積を小さくできるが、例えば体内にコンピュータを入れた場合など、外力が届きにくい場所での使用が困難になる。

 一方、後者のオンチップバッテリーだと、いつでもどこでも使用できるため理想的だ。これまで積層薄膜やピラー電極などのオンチップバッテリーが提案されてきたが、十分なエネルギー密度を確保できてもフットプリント面積を1平方ミリメートル未満にはできなかった。今回は、十分なエネルギー密度を維持しながら、1平方ミリメートル未満のコンピュータに組み込むためのオンチップバッテリーを目標とする。

 この目標を達成するために、積層薄膜(集電層、正極膜、負極膜、固体電解質膜など)をシリンダー電池のように巻いて円筒状にするアプローチを採用する。バッテリーの断面がロールケーキのように見えるためか、巻く方法をスイスロールと呼ぶ。

 これによってエネルギー密度を維持しながらフットプリント面積を減らすことに成功した。巻く工程は外力ではなく、自己組織化プロセスによって巻かれるため、ウェーハ表面で大量に生産できる。

チップ上の積層薄膜とロール状の模式図

 スイスロール式オンチップマイクロバッテリーを実際に製作し試した結果、エネルギー密度の下限は1平方センチあたり100μWhだったという。これは周囲の温度を継続的に測定するために、10時間程度の電力供給ができる程だという。例えば体内の腫瘍に注入し、そこで得られる温度変化を診断に利用する方法などが考えられるだろう。

Source and Image Credits: Li, Y., Zhu, M., Bandari, V. K., Karnaushenko, D. D., Karnaushenko, D., Zhu, F., Schmidt, O. G., On-Chip Batteries for Dust-Sized Computers. Adv. Energy Mater. 2022, 2103641.

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