HPの『Victus 16(AMD)』(以下、”Victus 16″)は、エントリー(入門向け)クラスのゲーミングノートPCです。CPUはZen3+世代のモバイルRyzen 6000シリーズで、GPUはGeForce RTX 3050 / 3050 Ti。144Hzの高リフレッシュレートで、人気ゲームをなめらかな動きで楽しめます。
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16.1インチフルHDディスプレイ搭載の『Victus 16』
人気ゲームをフルHDの144Hzで楽しむには十分な性能ですが、本体の品質部分でややチープな印象を受けます。画面は少し暗く、本体は大きくてゴツい外観。キーボードは一般用途向けのスタンダードノートPCと変わりません。セールなどで安く買えるのならアリですが、高級機ほどの仕上がりではなく、ある程度の割り切りが必要です。とは言え、これ以下の価格で販売されているゲーミングノートPCについては、どれも似たような仕様と考えていいでしょう。
この記事ではメーカーからお借りした実機を使って、デザインや性能、実際の使い心地などをレビューします。
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Victus 16(AMD)
スペック
OS | Windows 11 Home |
---|---|
ディスプレイ | 16.1インチ 1920×1080 IPS 非光沢 タッチ非対応 250nit 144Hz |
CPU | Ryzen 5 6600H / Ryzen 7 6800H |
メモリー | 16GB(8GB×2) ※DDR5-4800、最大32GB、スロット×2 |
ストレージ | 512GB PCIe Gen4 x4 NVMe SSD |
グラフィックス | RTX 3050(4GB) / RTX 3050 Ti(4GB) |
通信 | Wi-Fi 6E、Bluetooth 5.2、有線LAN(1Gbps) |
インターフェース | USB Type-C(映像出力対応)×1、USB Type-A×3、HDMI2.1、有線LAN、SDカードスロット、ヘッドセット端子 |
生体認証 | なし |
サイズ / 重量 | 幅370×奥行き260×高さ23.5mm / 約2.48kg |
バッテリー | 約8~9時間 |
本体デザイン
Victus 16の見た目は、一般用途向けのスタンダードノートPCと変わりません。RGBイルミネーションでハデに光ることはなく、筐体にも奇をてらったようなデザインは見られませんでした。多少大きくてゴツい点を除けば、よくある普通のノートPCのように見えます。
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Victus 16の外観。本体カラーはセラミックホワイト。透明感のあるさわやかな白です
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CPUやGPUの熱を効果的に排出する必要があるため、筐体はやや大きくてゴツい印象
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ボディは樹脂(プラスチック)製ですが、安っぽさは感じられません。ホワイトのカラーには、キズや指紋が目立たない効果があります。エンブレムはダークグレーの鏡面仕上げ
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ディスプレイを開いた状態
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左右と上部のベゼルは標準的ですが、下部がかなり太めです。余計な部分がちょっと気になりますが、これは内部の熱がこもらないようベース部分が大きく作られているためでしょう
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ディスプレイ上部のカメラは92万画素。写真は1280×720ドットで、動画撮影は720p 30Hz
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キーボード面はホワイト
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インターフェース類は多くはありませんが、十分な構成です。USB端子が左右にあるので、取り回しも比較的楽に行なえるでしょう。ただし本体の両脇は、ケーブルでゴチャつきがちです。ワイヤレスタイプのゲーミングデバイスを使うといいでしょう
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電源アダプターは200Wの丸口タイプ。重さは603gで、かなり大きめです
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スピーカーは底面部の左右に配置。左右の聞き分けはなんとか可能ですが、前後や上下の聞き分けはかなり厳しいでしょう。音質もほどほどレベルで、ゲームにはヘッドセットの着用をおすすめします
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排気口はヒンジ裏のこの部分だけ。メーカー的には問題ないとの判断だと思いますが、内部の熱が不安です。個人的には、ノートPC冷却台の使用をおすすめします
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底面部の吸気口
サイズと重量
前述のとおり、本体はやや大きくてゴツい印象です。ディスプレイが一般的な15.6インチよりもわずかに大きいので、それなりの存在感があります。内部に熱がこもるのを防ぐために筐体を大きくしているのだと思いますが、排気口を左右側面にも配置すればここまで大きくしなくてもすんだのではないかという気もします。
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本体サイズは幅370mm、奥行き260mm
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A4ノート(ピンク)とB5ノート(ブルー)とのサイズ比較。B4サイズよりもわずかに大きく、最近の16インチタイプとしては大きめです
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高さは実測で23.7mm(突起部を除く)
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底面部のゴム足(突起部)を含めた高さは28.9mm。設置時にはそれなりの厚みを感じます
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重さは実測で2.409kg。本体が大きいため、重量もけっこう重めです
ディスプレイについて
ディスプレイは、ちょっと大きめの16.1インチです。画面が大きいぶん映像の迫力が増すほか、小さなターゲットが多少認識しやすくなるメリットがあります。品質的にはエントリー(入門)クラスで、eスポーツレベルの高度なプレー向きではありません。
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画面サイズは16.1インチで、解像度は1920×1080ドットのフルHD
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リフレッシュレートは144Hz。最近はエントリー向けでも165Hzが多く144Hzはスペック的にはやや下ですが、それほど大きな差を感じるほどではないでしょう
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シャッタースピード1/1600で撮影したディスプレイの映像。グレーの部分で、残像が3フレーム目まで確認できます。最近のゲーミングノートPCでは2フレーム目までが一般的
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映像は自然な色合い。輝度は250nit(公称値)でわずかに暗く感じますが、ゲームに大きな影響はありませんでした
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16.1インチの映像は一般的な15.6インチよりも、わずかに迫力があるように感じられます
キーボードについて
キーボードはゲーム中の操作に直結する大事な部分ですが、Victus 16はゲーム向けのキーボードではありませんでした。一般用途のノートPCと変わらない仕様です。とは言えエントリー向けであることを考えれば、妥当なスペックなのかもしれません。より快適に操作したい場合は、外付けのゲーミングデバイス(キーボードやコントローラー)の利用をおすすめします。
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Victus 16のキーボードは、テンキー付きの日本語配列
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キーボードはバックライト対応ですが、明るい場所ではキートップの文字が見づらいので注意
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キーの間隔がやや狭いものの、配列に特殊な部分はありません
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ただし一部のキーがかなり小さく作られています。特にゲームで使うことが多いCtrlキーやAltキーはかなり小さく、打ち間違いが生じやすいかもしれません
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キーストロークは約1.5mm。押した瞬間のクリック感は軽く、タイプ感は総合的には軽めです。文章入力向けのスタンダードノートPCのような使用感です
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タイプ音は軽い力でもタクタクと聞こえますが、うるさく感じるほどではありません
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キーの同時押し認識数を検証している様子。最大認識数は9キー程度で、組み合わせによっては数キー程度の場合があります。WASDキー周りはリーン操作(W+E+Dキー)が効きませんでした。スタンダードノートPCと変わらないキーボードです
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ゲーム向けに配慮されたキーボードだと、このように大量のキーを同時に認識できます ※画像はほかの機種
ベンチマーク結果
試用機のスペック
CPU | Ryzen 5 6600H |
---|---|
メモリー | 16GB |
ストレージ | 512GB NVMe SSD |
グラフィックス | RTX 3050(4GB) |
最大グラフィックスパワー | 75W |
※ベンチマークテストはWindows 10の電源プランを「バランス」、電源モードを「最適なパフォーマンス」に設定した上で、標準収録ユーティリティー「OMEN Gaming Hub」の「パフォーマンスコントロール」を「パフォーマンス」に、「ファン速度」を「自動」に設定。さらに電源アダプターを接続した状態で実施しています
※ベンチマーク結果はパーツ構成や環境、タイミング、個体差などさまざまな要因によって大きく変わることがあります
CPU性能
CPUとしては、AMD Zen3+世代のRyzen 7 6800HまたはRyzen 5 6600Hが使われています。
Ryzen 5 6600H搭載の試用機で行なったCPUベンチマーク結果は、以下のグラフのとおり。ゲーミングノートPC向けCPU(末尾が”H”または”HX”)のなかではやや低めの性能ではあるものの、ノートPC全体で見れば「中の上」あたりでなかなか優秀です。Ryzen 7搭載の上位モデルなら、より高いパフォーマンスを期待できるでしょう。
CPUの性能差 (マルチコア性能)
CPU | CINEBENCH R23 CPUスコア |
---|---|
Core i9-12900HX |
21119
|
Core i7-12700H |
16039
|
Ryzen 7 6800H |
13673
|
Ryzen 9 5900HX |
12654
|
Ryzen 7 5800H |
11346
|
Core i7-11800H |
11123
|
Victus 16(Ryzen 5 6600H) |
10237
|
Ryzen 7 6800U |
10183
|
Ryzen 7 5825U |
9740
|
Core i7-1260P |
9254
|
Ryzen 5 5600H |
8901
|
Core i5-1240P |
8928
|
Ryzen 5 5625U |
8267
|
Core i7-1250U |
7552
|
Core i5-11400H |
7529
|
Core i5-1235U |
7104
|
Core i3-1215U |
6086
|
※10分間実行し続けた際の最終スコア。そのほかのスコアは当サイト計測値の平均
CPUの性能差 (シングルコア性能)
CPU | CINEBENCH R23 CPUスコア |
---|---|
Core i9-12900HX |
1906
|
Core i7-12700H |
1804
|
Core i7-1255U |
1743
|
Core i7-1250U |
1726
|
Core i7-1260P |
1680
|
Core i5-1235U |
1616
|
Core i3-1215U |
1622
|
Core i5-1240P |
1606
|
Ryzen 7 6800H |
1532
|
Core i7-11800H |
1502
|
Victus 16(Ryzen 5 6600H) |
1477
|
Ryzen 7 6800U |
1471
|
Core i5-11400H |
1461
|
Ryzen 9 5900HX |
1459
|
Ryzen 7 5825U |
1437
|
Ryzen 5 5625U |
1394
|
Ryzen 7 5800H |
1375
|
※10分間実行し続けた際の最終スコア。そのほかのスコアは当サイト計測値の平均
ちなみにベンチマーク中の駆動音については、多少は聞こえるものの気になるほどではありませんでした。しかし設定しだいでは、排気音がかなり大きくなるので注意してください。

標準収録の『OMEN Gaming Hub』でパフォーマンスを調整可能。今回は「ファン速度」を「自動」にしていますが、「最大」に変えるとファンの音がかなり大きく聞こえます
グラフィックス性能
グラフィックス機能としてはエントリー(入門)向けのRTX 3050またはRTX 3050 Tiが使われています。今回試用したのは、RTX 3050搭載の下位モデルです。3Dベンチマークテストを行なったところ、同じGPUの平均値を大きく上回りました。
おそらく高いCPU性能が影響しているのと、最大グラフィックスパワーが75Wに設定されているためだと思われます。RTX 3050の仕様上の上限は80W。DYNAMIC BOOST 2.0は使われていないものの、GPU性能を十分引き出していると考えていいでしょう。
GPUの性能 (DirectX 12、WQHD)
GPU | 3DMark Time Spy Graphicsスコア |
---|---|
RTX 3080 Ti |
13493
|
RTX 3080 |
11612
|
RTX 3070 Ti |
10357
|
RTX 3070 |
9707
|
RTX 3060 |
8297
|
RTX 3050 Ti |
5207
|
Victus 16(RTX 3050) |
5080
|
RTX 3050 |
4426
|
GTX 1650 |
3178
|
Iris Xe (Core i7) |
1250
|
Radeon (Ryzen 7) |
1000
|
※そのほかのスコアは当サイト計測値の平均
RTX 3050 / 3050 Tiはレイトレーシングに対応していますが、パフォーマンスはかなり低めです。事実上の非対応と考えてください。
GPUの性能 (レイトレーシング)
GPU | 3DMark Port Royal Graphicsスコア |
---|---|
RTX 3080 Ti |
8527
|
RTX 3080 |
7148
|
RTX 3070 |
5957
|
RTX 3060 |
4909
|
Victus 16(RTX 3050) |
635
|
RTX 3050 Ti |
585
|
RTX 3050 |
537
|
※そのほかのスコアは当サイト計測値の平均
ゲーム性能
Ryzen 5 + RTX 3050の下位モデルでゲーム系ベンチマークを試したところ、重いゲームでも普通に楽しめそうな結果が出ました。ただしグラボの機能としてはレイトレーシングに対応しているものの、実際のゲームではFPSがかなり低下するので、事実上の非対応と考えたほうがいいでしょう。そこそこ重めの人気FPSでも、画質を調整すれば高リフレッシュレートでプレー可能です。
検証結果まとめ
- ・激重タイトルは低画質ならOK
- ・中量級タイトルは高画質でも快適
- ・事実上レイトレ非対応
- ・中量級FPSは画質調整で100~144Hz
- ・競技系FPSは外部出力で240Hz可能
※平均60 FPS以上が快適に遊べる目安
FF15ベンチ (重い)
画質 | スコア / 評価 |
高品質 | 4956 / やや快適 |
標準品質 | 7296 / 快適 |
軽量品質 | 9451 / とても快適 |
※スコアが6000以上で「快適」
FF14ベンチ:暁月のフィナーレ (やや重い)
画質 | スコア / 平均FPS |
最高品質 | 13143 / 91.5 FPS |
高品質 | 15774 / 113.4 FPS |
標準品質 | 18362 / 136.4 FPS |
ファークライ6(そこそこ重い / DX12)
画質 | 平均FPS / 最小FPS |
最高画質 | 61 / 53 |
最低画質 | 93 / 82 |
アサシン クリード ヴァルハラ (激重)
画質 | 平均FPS / 低位1% |
最高画質 | 36 / 21 |
最低画質 | 49 / 38 |
※画質は「最高」
エーペックスレジェンズ 射撃訓練場(中量級)
画質 | 平均FPS / 低位1% |
最高画質 | 58.3 / 47.1 |
最低画質 | 187.5 / 127.1 |
※解像度はフルHD。実際のプレーではこの結果よりもFPSが低下します
レインボーシックス シージ(軽い) ※Vulkan
画質 | 平均FPS / 最低FPS |
最高画質 | 274 / 233 |
最低画質 | 326 / 282 |
※画質は最高設定。ゲーム内ベンチマークの結果
ヴァロラント 屋外射撃場(軽い)
画質 | 平均FPS / 低位1% |
最高画質 | 140.6 / 98 |
最低画質 | 296.7 / 161.8 |
※画質は最高設定、屋外射撃場で武器を使用しながら走り回った結果。実際のプレーではこの結果よりもFPSが10%程度低下します
性能は十分でも本体の仕様が微妙
エントリー(入門)向けとしては、十分なゲーム性能です。PCならではの、高いフレームレートで人気タイトルを楽しめます。性能面ではRyzen 7 + RTX 3050 Tiの上位モデルのほうが有利ですが、下位モデルから劇的に変わるわけではありません。予算を抑えるなら下位モデル、ゲーム以外にも使うなら上位モデルを選ぶといいでしょう。
冒頭でも述べましたが、各部の微妙な安っぽさが気になります。メーカーとしては、エントリー向けなのでこれで十分という判断なのかもしれません。しかし最近はエントリー向けでも165Hzが主流ですし、筐体も小さくてスタイリッシュなものが増えています。キーボードはメーカーによってまちまちですが、もうワンランク上のものを使ってほしいところです。

個人的にはキーボードの操作感がゲーム向けでない点が気になります
とは言え、はじめからハイグレードモデルを選んでも十分に使いこなせるとは限りません。その意味では、はじめはこれくらいにしておいて後々に機材を買い足したり、丸ごと買い換えたりというのもアリです。もちろん、はじめからいいもの(HP製品だとOMENシリーズ)を使う考えあります。そのあたりは自分の好みと予算に応じて選んでください。

Victus 16(AMD)
*
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