Monday, January 16, 2023

<特派員の眼>中国「ゼロコロナ」転換の背景に抗議デモ 直後に ... - 東京新聞

 新型コロナウイルスの感染拡大を徹底的に抑える中国の「ゼロコロナ政策」が今月8日に終わった。昨年10月の中国共産党大会が終われば厳しい防疫措置は段階的に緩和されるだろうとみられていたが、実際は緩和どころか「放棄」ともいえるほどの急転換だった。転換直後は北京でも感染爆発に伴う混乱があったものの、コロナ前の日常を取り戻しつつある。

ゼロコロナ政策終了の経緯

ゼロコロナ政策終了の経緯

◆きっかけは11月の会議

 習近平しゅうきんぺい総書記が党大会で成果を強調した政策が、なぜあっさりと放棄されたのか。昨年11月下旬に上海や北京で起きた「白色革命」とも呼ばれる抗議デモに習氏がショックを受けたとか、集団免疫を短期間で獲得しようとしたなどさまざまな臆測が流れるなか、国営新華社通信は8日に政策転換の背景を解説した記事を配信した。つじつま合わせの感もあるが、当時中国が直面した現状や課題を率直にまとめており、参考になる。

 記事によると、政策転換のきっかけは11月10日に開かれた習氏ら党幹部が重要政策や方針を協議する党中央政治局会議だったとする。ここで変異株による感染の急拡大が始まっていることが報告され、「コロナ防疫の社会コストと代償が高まった」として隔離基準の緩和や過剰な防疫措置の厳禁などを盛り込んだ「20条措置」と呼ばれる政策緩和を決定し、「主導的に防疫政策を最適化する明確なシグナルを出した」と強調する。

 この措置は現場の混乱を招いた上、過剰な防疫措置がなくならなかったことなどから、上海や北京の抗議デモにつながった。このため12月に入ると感染防止よりも経済活動の回復に力を入れる方針に転換し、同月後半に政策緩和から一層踏み込んでゼロコロナ政策の終了を意味する新型コロナの防疫レベルを引き下げる決定をしたという。

 こうした政策転換の背景に抗議デモがあったのは間違いないようだ。新華社の記事は抗議デモを「いくらかの群衆の過剰な防疫措置などの問題に対する反応」と表現して「高い関心を呼んだ」と認めた上で、「14億以上の人口がある中国では、人によって要求が異なり一つの事案に対しての見方も異なるため、幅広い共通認識と科学的な政策決定が防疫政策調整のカギとなる」と弁明している。

 ただ、米政府系メディア「ラジオ・フリー・アジア」などは、当局が抗議デモの参加者を拘束したほか、支援の弁護士にも圧力をかけていると伝えており、こうした動きが今後も続く可能性は低そうだ。

◆次期首相と目される人物が習近平氏を説得か

 一方、政策転換の主導者について、米在住の元中国紙記者、鄧聿文とういつぶん氏は、海外メディアに寄稿した文章で次期首相とみられている李強りきょう氏が、ゼロコロナ政策継続による経済へのダメージを懸念し、習氏を説得して政策転換させたとの見方を示す。李氏は上海市トップだった昨春、感染拡大を防ぐためにロックダウンを強行して経済・社会活動に大きなダメージを与えたと批判されており、その反省があるのかもしれない。

 いずれにしてもこの2カ月ほどの経緯は、中国を読み解くことの難しさをあらためて痛感させられた。(新貝憲弘)

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