
オムニバス映画『MIRRORLIAR FILMS Seson1』が9月17日より公開中だ。山下敦弘(45才)、安藤政信(46才)ら注目のクリエイターが監督を務めた9つの短編から成る映画制作プロジェクトである本作。この内の1つ『さくら、』で、俳優でありフォトグラファーとしても活動する安藤政信が映画監督デビューを果たした。作品に込めた思いについて、安藤が語った。 【写真】監督デビューの安藤政信がインタビュー中に見せたキリっとした眼差し
安藤の初監督映画『さくら、』は、金沢を舞台に3人の男女の愛のもつれを描いた物語。映像美で見せるポエティックな仕上がりが印象的な作品だ。なぜ安藤は、最初の作品のテーマに「愛」を選んだのか。 「愛が高まって倫理を超えてしまう瞬間に、俺は興味があるんです。しかし、今の社会では、愛欲という人間に必要な快楽がどこか忌避されている印象があって……。人間はときに愛に振り回されて、“過ち”を犯す生き物だけど、俺はその止まることのない愛欲を芸術で肯定したいんです。 例えば、今の日本では、芸能人が過ちを犯してしまうと、仕事を干されて、ホームページから名前も消されて、すべてが無かったことにされる。確かにパートナーは傷つくから、当事者間では責められても仕方ない。でも、過剰な社会的制裁を加えられてしまう現状には、どうしても違和感が残る。だからせめて、映画という芸術作品においては、愛欲の美しさや醜さといった両面を撮りたかったんです」(安藤・以下同) 「ひとりで街を徘徊するのが趣味」という安藤。コロナ禍の東京のさまざまな街を歩きながら、すれ違った市井の人びとの一瞬のやりとりにも、幾つものドラマを見てきた。 「街歩いてても、明らかにワケアリなカップルをよく見かけるんですよ(笑い)。でも、そのふたりのお互いを名残惜しむ雰囲気はすごく抒情的で美しくて、俺は好きなんです。映画でも写真でも、ああいう愛の瞬間をポエティックに撮っていきたいですね」
映画のロケ地に選んだのは石川県金沢市。国の有形文化財にも登録されている「石川県立美術館 広坂別館」や、風光明媚な能登金剛の巌門といったロケーションも本作の魅力のひとつだ。そして、ラストシーンに映るのは日本海。ロケーション・ハンティングでこの海を見た時、安藤は初めて「境界線」を意識したという。 「金沢の海を前に“生と死の境界線”を感じて、すぐにラストシーンが頭に浮かんだんです。俺は、生きてることと死んでること、その区別を曖昧にしたかった。『この男は死にました。これで話は終わりです』じゃなくて、自分が生きてるのか、死んでるのかさえ分からなくなるくらい、感情的でドラマチックで夢のような映画にしようと思ったんです。まさにこのプロジェクト『MIRRORLIAR FILMS Season1』のテーマである『境界線を疑え』にも繋がります」 『MIRRORLIAR FILMS』は、「誰もが自由に映像作品を創ることができる」時代に、「自由で新しい映画製作の実現を目指す」企画だ。誰もが映像を撮り、簡単にネットにアップできる環境がある中で、“ただの映像”と“作品”の分水嶺は何なのか。安藤はフォトグラファーとしての経験を交えながら、丁寧に答えてくれた。 「今の時代はスマートフォンでみんな写真を撮っている。でも、誰でも撮影できるからこそ、アート作品やビジネスとして成立させるためには、信念やコンセプト、撮りたい対象への愛が不可欠だと思うんです。俺は、自分のフォトグラファーとしての美的センスや伝えたいコンセプトが、誰にも似てないオリジナルだという自負があります。それは映画にしても同じで、俺にしか撮れないものを撮っていれば、それが作品になるはずと信じています」 安藤は、目まぐるしく変わり続ける時代の片隅で懸命に煌めく一瞬のドラマを、『さくら、』に昇華した。“安藤政信”のエッセンスが濃縮されたデビュー作に酔いしれたい。 【プロフィール】 安藤政信 (あんどう・まさのぶ)/1975年、神奈川県出身。1996年、北野武監督の『キッズ・リターン』で主演として俳優デビュー。主な映画出演作に『バトル・ロワイアル』(2000年)、『69 sixty nine』(2004年)、『46億年の恋』(2006年)など。海外での俳優としての評価も高く、『花の生涯~梅蘭芳~』(2009年)や『セデック・バレ』(2011年)、『無無眠』(2015年)などのアジア映画にも多数出演。ポートレイトやファッションカタログなどを手掛け、フォトグラファーとしても活躍する。 ◆取材・文/安里和哲、写真/木川将史
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