Monday, January 30, 2023

元自衛官の五ノ井里奈さん、性暴力の加害者や国を提訴 「できれば ... - 東京新聞

 陸上自衛隊内で性被害を受けた元自衛官の五ノ井里奈さん(23)が30日、国と加害者の元隊員5人を相手取り、計750万円の損害賠償を求める訴訟を横浜地裁に起こした。性被害を訴えた際に適切な調査をしなかった国の責任などを問う。提訴後に記者会見した五ノ井さんは「再発防止につなげ、自衛隊が正義感を持った組織になってほしい」と求めた。
陸自内での性被害について民事訴訟を起こし、記者会見する元自衛官の五ノ井里奈さん=東京都千代田区の日本記者クラブで

陸自内での性被害について民事訴訟を起こし、記者会見する元自衛官の五ノ井里奈さん=東京都千代田区の日本記者クラブで


 代理人弁護士によると、国が性被害の訴えを放置したことは安全配慮義務違反にあたるとして200万円の国家賠償を請求し、元隊員の男性5人からは性的暴行などにより精神的苦痛を受けたとして計550万円を支払うよう求めた。

 五ノ井さんは退職後の昨年6月、性的発言や胸を触られるなどのセクハラ被害を実名で告発。陸自は事実を認めて謝罪し、5人を懲戒免職としたほか、訴えを受けたのに十分な調査をしなかったなどとして上司にあたる中隊長ら4人を停職などの処分とした。

 加害者のうち強制わいせつ容疑で書類送検された3人は否認して不起訴となったが、昨年9月、検察審査会が不起訴不当を議決、再捜査の対象となった。問題を受けて防衛省が全自衛隊を対象に実施した特別防衛監察では、パワハラやセクハラなど約1400件の被害申告があった。

◆宮城で被災 好きだった自衛隊、でも辞めざるを得なかった

 「自衛隊員は素晴らしい職業。女性が安心して勤務できる環境をつくってほしい」。五ノ井さんは日本記者クラブで開いた記者会見で、性被害の再発防止が提訴の目的だと説明した。

 昨年10月に加害者側から謝罪を受けた。「できることなら裁判はしたくなかった」と言うが、その後の示談交渉では12月以降、加害者側からの回答がなくなった。「本当には反省していないのでは。このままではハラスメントを根絶できない」と感じて提訴を決めたという。

 性被害を訴えた際、上司にあたる中隊長は調査を行おうとはしなかった。「上に立つ立場の人は隠蔽いんぺいなどせず、正義感を持った対応をしてほしい。一人一人が大切にされる組織になってほしい」

 東日本大震災の際、宮城県で被災した。自衛隊員に助けられた経験に触れ「自衛隊が今でも好き。自衛隊を辞めざるを得なかった責任をとってほしい」と強調した。(森田真奈子)

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