Tuesday, February 15, 2022

犯罪加害者・被害者双方に救いを 中立的な意見可視化 - 河北新報オンライン

昨秋発足の支援団体・阿部恭子共同代表に聞く

阿部恭子理事長

 犯罪加害者と被害者が立場を超えて結集する任意団体「inter7(インターセブン)」が設立された。設立には加害者家族を支援する仙台市のNPO法人「ワールド・オープン・ハート」の阿部恭子理事長も関わる。加害者、被害者という二項対立的な見方を排し、「犯罪に巻き込まれた全ての人を支援したい」と語る阿部理事長に設立の思いを聞いた。
(聞き手は報道部・神田一道)

第2のステージに

 -どのような組織か。

 「加害者家族を助ける私を含め、全国の被害者支援や受刑者支援の団体代表者ら7人が共同代表を務め、昨年11月に設立した。加害者、被害者という垣根を超えてさまざまなテーマを話し合い、シンポジウムも行う。団体名のinterは英語で『中間』という意味で、加害者と被害者の両方という意味を込めた」

 -加害者家族を支援する理事長が被害者救済にも関わる理由は。

 「『ワールド-』が活動を始めた2008年は加害者家族が誰からも支援を受けられず、社会的に悲惨な状況に追い込まれていた。穴を埋める活動を続け、一定の進展はあった。第2ステージとの思いで、被害者も含めた犯罪に巻き込まれた全ての人を支援しようと考えた」

 「加害者家族支援を通して感じるのは、1人の人間に加害と被害があるということ。例えば、性犯罪加害者家族として相談に訪れる女性の3、4割は、過去に誰かから性犯罪被害を受けている。殺人事件の半分は家族間だ。加害者、被害者というふうに一律にくくれないのに、偏った人物像で語られることに違和感があった。真ん中の存在、中立的な意見を可視化したいと思った」

 -ステレオタイプな見方がなぜ問題になるのか。

 「当事者へのバッシングがなくならないからだ。世間からたたかれやすい加害者や家族だけでなく、被害者もステレオタイプな見方をされてバッシングを受けている。『賠償金をもらったんだろう』とか、ずっと被害者として生きることを求められ、自由に生きようとすると『裏切られた』などと陰口を言われる。大事なのは偏った見方ではなく、それぞれの多様性を知ることだ。どんな人間も加害者にも被害者にもなるという感覚を誰もが持てば、過剰なバッシングもなくなるのではないか」

 -日本では加害者と被害者のどちらかを支援するのが一般的で、両方を巻き込むのは異例だ。

 「加害者、被害者と線を引くのではなく、犯罪に巻き込まれた全ての人を救うような法律や条例を作りたい。例えば、殺人事件の凄惨(せいさん)な現場を目撃したり、無差別殺傷事件に遭遇したりして心に深い傷を負った人のケアも大事。もちろん、加害者家族も支援対象に含まれる。支援の網の目からこぼれた人を地域全体でケアする制度ができればいい」

[あべ・きょうこ]77年仙台市生まれ。東北大大学院法学研究科博士課程前期修了。08年に任意団体「ワールド・オープン・ハート」を設立し、11年に法人格取得。日本初の犯罪加害者家族を対象とした支援活動を行う。

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