故ジャニー喜多川氏による性暴力疑惑で、ジャニーズ事務所が設置した外部の専門家による特別チームが記者会見し、調査を始めたことを明らかにした。被害を訴えている人や事務所の役職員らに話を聞き、これまでの対応にどんな問題があったのかを検証するという。
事務所は当初、第三者による調査を行わない意向を示していた。独立した立場から検証が行われるならば、一歩前進と言えるだろう。
特別チームは性暴力についての事実認定も独自に行うが、所属タレントらに対する網羅的な調査はしないと明言した。二次加害を防ぐため、聞き取りに慎重さが求められるのは当然だろう。被害者の意に反して行われることがあってはならない。
しかし一方、今回のケースでは、被害者の数が相当数にのぼる可能性が指摘されている。全体像の解明をはじめから放棄していては、検証自体が成り立たないだろう。それでは救われない被害者もいるはずだ。特別チームはていねいなコミュニケーションを行うなどして、できる限り被害の全容に迫るべく努力をしなければならない。
実のある調査は、ジャニーズ事務所が全面的に協力して初めて可能になることにも留意が必要だ。しかしこの点、現状では懸念が多いといわざるをえないだろう。
経営陣はいまだに、記者会見を開いて説明することを回避している。ホームページで一方的に見解を述べただけだ。事務所が原告となった過去の裁判でも真実と認められた例があるのに、性暴力について知る者がいなかったとの言い分はとうてい信じることができない。
経営陣が沈黙する一方、矢面に立っているのが所属するタレントたちだ。キャスターを務める民放の報道番組で謝罪したり、臆測によって傷つく人がいることへの危惧を表明したりしている。一義的には責任のないタレントを盾に、肝心の経営陣が逃げ回るかのような姿は異様に映る。この状況で果たして、特別チームは意義のある調査ができるのだろうか。
開かれた場で疑問や批判に直接答え、外部の専門家に検証を委ねることにした意図やその態勢について、社長らが自ら表に出て説明する。ふつうの企業なら社会的責任を果たすため当たり前にやっていることだ。
こうした手順を踏まないまま特別チームに検証を丸投げしただけでは、納得がえられるはずはない。性犯罪対策をどう強化するか、政府も検討を始める事態になっている。ジャニーズ事務所に、記者会見を開くことをあらためて求める。
からの記事と詳細 ( (社説)ジャニーズ 十分な調査 可能なのか:朝日新聞デジタル - 朝日新聞デジタル )
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