栃木県に住む大学3年の女子学生(20)は小学生の頃から成績が良かった。中3の時は、生徒会の副会長も務める「優等生」。ただ、クラスをまとめ切れず、思い詰めてもいた。悩みを明かせる人がいなくて、すがったのが、自分のツイッターを見てくれるフォロワーたちだった。
「嫌なことを忘れられるよ」。ツイッターにのめり込むうちに、見知らぬ人の投稿に目がとまった。市販薬の過剰摂取をつづった体験談だ。クリックすると、過剰摂取を勧めるかのように、同じような投稿がずらりと表示された。
高1だった2018年の冬、市販薬の過剰摂取に初めて手を出した。県内有数の進学校に入ったが、成績優秀な同級生たちと比べて劣等感を抱き、なじめない。「もうなにもかも忘れたい」と嫌になって、ドラッグストアで購入した市販薬を大量に摂取。ツイッターで報告すると、賛同を示す「いいね」のハートマークが付いた。「自分の存在価値が認められた」
年が明けると、そんな承認欲求はどんどん膨らんだ。ツイッター上では、自分よりたくさんの市販薬を飲んでいる仲間がいて、「いいね」の数も多い。「もっと私のことを心配してほしい」。過剰摂取のペースが上がり、高2になる19年春頃には毎日のように摂取。同年夏、ついに学校で倒れた。
立ち直りのきっかけをつかめたのは20年2月だ。居場所作りに取り組む県内の団体を訪ね、同じように学校に息苦しさを感じる若者らに出会った。食事に誘ってくれるなど気遣いをしてくれて、ネットの「いいね」より気持ちが安らいだ。
大学入学を機に、ツイッターの利用をやめた女子学生。「ネット空間で、あの頃の私は自分を見失っていた」。今、そう思っている。
精神的な苦痛から逃れようと、市販薬を過剰摂取する行為は「オーバードーズ」と呼ばれ、若者を中心に深刻化している。急性中毒や意識障害に陥ることもある危険な行為だ。
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