23日の米株式相場は下落。週間ベースでは3月以来の大幅安となった。インフレ抑制のために各国・地域中央銀行が追加利上げを余儀なくされるとの懸念が強まった。一方、過剰な引き締めが急激な景気下降を引き起こすとの見方から国債相場は上昇した。
欧州で発表された経済指標も市場の空気を重くした。
ユーロ圏経済活動、6月にほぼ勢い失速-総合PMIが予想下回る (1)
株式 | 終値 | 前営業日比 | 変化率 |
---|---|---|---|
S&P500種株価指数 | 4348.33 | -33.56 | -0.77% |
ダウ工業株30種平均 | 33727.43 | -219.28 | -0.65% |
ナスダック総合指数 | 13492.52 | -138.09 | -1.01% |
今年好調なテクノロジー株に利益確定の動きが見られ、S&P500種株価指数は週間ベースで1.4%下落。ナスダック100指数の週間下落率は1.3%となった。半導体メーカーのマーベル・テクノロジーや グローバルファウンドリーズなどが売られ、マイクロソフトやエヌビディアも指数全体を押し下げた。
4-6月(第2四半期)の株高は、成長が期待される人工知能(AI)関連株への強い需要がけん引してきた。しかし、追加利上げ観測のほか、これまでの積極的引き締めの経済への影響がまだ完全には表れていないとの懸念から、勢いが薄れつつある。
フェデレーテッド・エルメスのシニア株式ストラテジスト、リンダ・デュッセル氏はAIのストーリーがなければ、株式相場は「もっとずっと不安定」だったであろうとブルームバーグテレビジョンで指摘。「平均的な銘柄は年初来で数パーセント上昇しているに過ぎない」とし、「ポートフォリオマネジャーは今年、S&P500種を超える成績を上げるのに非常に苦労している」と述べた。
パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長は今週の議会証言で、年内にあと1、2回の利上げが必要となる可能性があると述べ、株式市場のムードを冷やした。
パウエル議長、年内1回か2回の追加利上げ必要も-上院証言 (2)
S&Pグローバルが23日発表した6月の米製造業購買担当者指数(PMI)速報値は46.3と、昨年12月以来の低水準。前月の48.4から低下し、縮小圏でさらに悪化した。
6月の米総合PMIは53に低下、製造業さらに悪化-S&Pグローバル
BMOキャピタル・マーケッツの米金利戦略責任者イアン・リンジェン氏は「少なくとも一つの観点で、世界経済は一貫している。製造業が依然、リセッション(景気後退)モードにあるということだ」とリポートで指摘。「今回のデータが7月の連邦公開市場委員会(FOMC)会合での判断に対して直接的な含意があるとは思わない。同会合に向けては、雇用統計の非農業部門雇用者数や消費者物価指数(CPI)を見極めることになるだろう。とはいえ、製造業PMIは失望を誘う内容だった」と記した。
米国債
米国債相場は、世界的な債券高の流れとともに上昇。ドイツやフランスのPMIが欧州の不況懸念をあおり、早い時間帯に逃避需要から債券に資金が流れ込んだ。
米国株の下落を受けて、米国債相場は上げ幅を拡大。米10年債利回りは一時10ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)低下した。
国債 | 直近値 | 前営業日比(bp) | 変化率 |
---|---|---|---|
米30年債利回り | 3.81% | -5.8 | -1.50% |
米10年債利回り | 3.73% | -6.2 | -1.63% |
米2年債利回り | 4.75% | -4.5 | -0.95% |
米東部時間 | 16時55分 |
2年債と10年債の逆イールドは一時100bp余りに拡大。こうした動きはリセッションのシグナルとされる。
ホライゾン・インベストメンツのスコット・ラドナー最高投資責任者(CIO)は債券相場の上昇について、「欧州で発表されたPMI速報値が市場予想より弱い数字だったため、経済成長への懸念」で押し上げられたと指摘した。
外為
外国為替市場では円がドルに対して一時、1ドル=143円87銭まで下落した。対ドルでの円下落はこの7営業日で6回目。日本政府・日本銀行が昨年、外国為替市場で円買い・ドル売りの介入に踏み切った水準に円相場が向かう状況にあって、為替トレーダーは当局者の発言を注視している。
為替 | 直近値 | 前営業日比 | 変化率 |
---|---|---|---|
ブルームバーグ・ドル指数 | 1231.48 | 4.98 | 0.41% |
ドル/円 | ¥143.72 | ¥0.61 | 0.43% |
ユーロ/ドル | $1.0896 | -$0.0060 | -0.55% |
米東部時間 | 16時56分 |
BMOキャピタル・マーケッツのグローバル為替ストラテジスト、スティーブン・ギャロ氏は「現状から判断すると、円を下支えするため実際の介入が行われる可能性はますます高まってきているとみられる」とリポートに記した。
円安進行、一時143円80銭台-為替トレーダーは口先介入を警戒 (1)
ユーロや資源国通貨も売られた。ドイツとフランスのPMIが市場予想を下回り、ユーロ圏の景気後退懸念が再燃した。ユーロは対ドルで一時1%下げた。
原油
ニューヨーク原油先物相場は続落。米金融当局者による追加利上げ示唆に加え、景気減速リスクを示す欧州の指標が嫌気された。
パウエルFRB議長は今週の議会証言で下期に追加利上げを実施する公算が大きいと示唆。23日公表されたデータでは、ドイツ経済が6月に予想以上に失速し、フランスは第2四半期(4-6月)にマイナス成長に陥った可能性が高いことを示した。パウエル氏の発言を受けてドルが買われ、ドル建てで取引されるコモディティー(商品)の割高感が強まったことも響いた。
みずほセキュリティーズUSAのエネルギー先物部門ディレクター、ロバート・ヨーガー氏は「利上げとそれに伴う景気減速への懸念が原油相場の重しになっている」と指摘。金利上昇により、原油の貯蔵から輸送まであらゆる関連コストも増大すると述べた。
ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のWTI先物8月限は前日比0.35ドル(0.5%)安の1バレル=69.16バレルで終了。週間では約4%下落し、5月5日終了週以来の大幅な下げとなった。ロンドンICEの北海ブレント8月限は前日比0.29ドル(0.4%)安の73.85ドルで引けた。
金
ニューヨーク金相場は反発。欧州の経済活動が弱含んだことで、利上げによる景気後退懸念が強まり、金への逃避買いが優勢になった。
金相場は最高値近辺にあった5月下旬から約6%値下がりするなど、米地銀危機を巡る懸念後退で安全資産としての妙味が薄れていたが、この日は低調なユーロ圏HCOB総合購買担当者指数(PMI)統計を受けて再びマネーが流入した。
金スポット価格はニューヨーク時間午後2時39分現在、前日比0.3%高の1オンス=1919.65ドル。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物8月限は5.9ドル(0.3%)上げて1929.60ドルで引けた。
原題: US Stocks Slide on Specter of Recession in Europe: Markets Wrap(抜粋)
Treasury Rally Fades After Early Bid in a Choppy Session(抜粋)
Euro Drops With Commodity FX Amid Recession Worries: Inside G-10(抜粋)
Oil Posts Biggest Weekly Decline Since May Amid Recession Fears(抜粋)
Gold Rallies as Growing Recession Risks Reinforce Haven Appeal(抜粋)
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