Saturday, June 24, 2023

アングルロヒンギャ難民の支援減額飢えや犯罪増に危機感 - ロイター (Reuters Japan)

[20日 トムソン・ロイター財団] - バングラデシュにあるイスラム系少数民族ロヒンギャの難民キャンプ。ミャンマーを逃れてここで暮らす5歳のジャンナットちゃんは毎日、空き缶や空き瓶を探して歩き回る。十分な数を集めることができれば、おやつを買って空腹の苦しみを和らげることができる。

 6月20日、バングラデシュにあるイスラム系少数民族ロヒンギャの難民キャンプ。ミャンマーを逃れてここで暮らす5歳のジャンナットちゃんは毎日、空き缶や空き瓶を探して歩き回る。写真はロヒンギャ難民の子供たち。2018年11月、コックスバザールの難民キャンプで撮影(2023年 ロイター/Mohammad Ponir Hossain)

100万人近くが生活を送るロヒンギャ難民キャンプへの支援を巡り、国連は今月、一回の食事援助をたった9セント(約13円)に減額した。以来、ジャンナットちゃんのように廃棄物を拾う子供が増えている。

国連は大規模な資金不足によって支援金の削減を余儀なくされており、この世界最大の難民キャンプで深刻な栄養失調や子供の死亡件数の増加を危惧する声が高まっている。

「ロヒンギャ難民は、生活をやりくりするために過酷な選択を強いられている。重大な影響が生じるだろう」と、国連世界食糧計画(WFP)バングラデシュ支部のシモーネ・パーチメント副部長は指摘する。同支部は、ミャンマーから逃れた難民の支援を担当している。

複数の支援機関は、支援金の減額により犯罪や組織的な暴力行為が増え、難民キャンプの治安が悪化する可能性があると予想。海外脱出を試みる人が増えて人身売買などが増加し、より広範な地域に問題が波及しかねないとの見通しを示した。

また、飢えが深刻化することで緊張状態が悪化し、児童婚や児童労働、家庭内暴力を助長する可能性も懸念されている。

ジャンナットちゃんの父カリムさんは、娘の体重が既に減っていると話す。カリムさんの家族は朝食を抜くことも多く、現在は米や豆に頼った生活を送っているという。

「子供たちにリンゴ1個をねだられる時もあるが、お金がない。罪悪感と無力感にさいなまれる」

コミュニティリーダーを務めているカリムさんは、自身や家族には仮名を使うことを条件に取材に応じた。

多くがミャンマー西部ラカイン州出身のイスラム系少数民族であるロヒンギャは、バングラデシュ南東部コックスバザールの難民キャンプで、竹と防水シートで建てた簡易小屋で暮らしている。

ミャンマー国軍が2017年に弾圧を開始して以降、それまでも続いていた避難の動きに拍車がかかり、およそ73万人がバングラデシュへと流入した。国連はこの軍事作戦が「意図的なジェノサイド(大量虐殺)」であると非難している。

トムソン・ロイター財団が運営するニュースサイト「コンテクスト」は、6月20日の「世界難民の日」を前に、数名の難民にテレビ電話形式での取材を実施。飢えに苦しむ難民家庭の中には、口減らしのために13、14歳の娘を結婚させた家庭が複数あることを彼らは明かした。

取材に応じた難民らは、犯罪が増加しており、特に急増する子供の誘拐に危機感を募らせているという。

「数週間前、誘拐犯があるティーンエージャーの手を切り落とす事件が起きた。家族が身代金を払えなかったためだ」

カリムさんはこう話し、犯罪者らは身代金が送られてくる可能性を見越して国外に家族がいる家庭を狙っている、と付け加えた。

<深刻化する栄養失調>

WFPは今年3月、毎月12ドル相当の食料引換券を10ドルに初めて減額した。だがドナーによる支払いが実行されなかったことを受けて今月、8ドルへとさらなる減額を余儀なくされた。十分な配給を再開するには4800万ドルが不足しているという。

ノルウェー難民委員会(NRC)の支援機関でバングラデシュで責任者を務めるウェンディ・マッケンス氏は、今年中にさらに援助が減額される見通しのため、事態はさらに悪化するかもしれないと警鐘を鳴らす。

カリムさんの家族は少し前まで、週5回は鶏肉や魚のカレーを食べ、数個の野菜やフルーツも購入できるほどの余裕があった。

だが先月、カリムさんの買い物リストは、米、油、塩の3つに絞らざるを得なかった。家族の単調な食事に味付けする少量のターメリックさえも、買うことが出来なかった。

WFPによれば、6月の支援減額が「深刻な栄養失調の急増」につながり、子供の死亡や病気、発育不全が増える可能性もあるという。

1度目の支援削減以前で既に、子供の8人に1人が深刻な栄養不足、5人に2人が発育障害を抱え、子供たちの認知的・身体的な発達や将来の進路にも影響を及ぼしている。

危機が長期化する中、支援者の間で共通して「寄付疲れ」も起きている。ウクライナ戦争やトルコ・シリア地震、東アフリカでの干ばつなど、競合する支援先も多い。

WFPは、アフガニスタンやバングラデシュ、パレスチナ、南米エクアドル、アフリカのブルンジ、チャド、マリ、タンザニア、ウガンダでも同様に援助を減らしている。

ただ、国連の専門家グループはロヒンギャでの支援削減について、「破滅的」であり「国際社会の道義心に汚点を残すことだ」と指摘。多くの政府がロヒンギャ難民への強固な支援を口先では表明しながら、バングラデシュの人道的安定には一銭も貢献していないと述べた。

ロヒンギャ難民に対する幅広い人道支援には8億7600万ドルが必要とされているものの、集まっているのは4分の1ほどだ。

<下りない労働許可>

他の難民と異なり、ロヒンギャ難民はバングラデシュ当局から就労を禁止されており、キャンプから出ることができないため、生活の全てを援助に頼っている人がほとんどだ。

子供たちが通える正規の学校はなく、自分たちで食べ物を育てる土地へのアクセスもない。

ロヒンギャ難民の中には、キャンプの倉庫警備や排水設備の敷設工事など、人道支援団体や国連機関の仕事を手伝って小銭を稼ぐ人もいる。

キャンプの周囲にはバングラデシュ側によってフェンスが張り巡らされているが、夜中に釣りに出かけたり、コックスバザールで違法に就労したりする人もいるという。違法に働く難民の多くは平均賃金を下回る給料で日雇い仕事を行うため、同国で最も貧しい地域の一つであるコックスバザールでは地元住民との緊張が高まっている。

バングラデシュは難民のミャンマーへの帰還を進めたい考えだが、ロヒンギャ側は、国籍が認められて安全性が保障されない限り、ミャンマーに戻ることはないとしている。

国連機関や人道支援団体はバングラデシュに対し、難民らが自立できるよう、制限の緩和を求めている。

「難民は限界を迎えている」と前出のマッケンス氏は言う。

「彼らは支援への依存から脱却できるよう、生計を立てる手段や土地、安全な場所を必要としている」

配給の削減は、キャンプ内の治安が悪化する中での出来事だった。難民キャンプではギャングがはびこり、ミャンマーでの戦闘に携わったグループなどの武装勢力が活発化している。

マッケンス氏は、食料配給の減少でギャングの暴力行為が増加するかもしれないと指摘。また、勢力拡大を目指す武装グループが人々の絶望に付け込み、新兵として加入させる可能性もあると話す。

犯罪組織は売春や武器の密輸、ドラッグの密輸などに関わっている。取引している薬物の大半はアンフェタミンで、ミャンマーで生産され、インドに密輸されている。組織の一部は武装集団ともつながっているという。

暴力行為が悪化し食料が減っている状況で、リスクの高い外国への渡航を考える難民の数は増えている。

これまでに数千人のロヒンギャ難民が既にマレーシアとインドネシアに避難した。中には密航業者に数千ドルを支払った人もいるという。

避難の道のりがいかに危険か、難民たちは理解している。ボートは大抵ぼろぼろで、これまでに数百人が海で溺れ、命を落としている。それでも、他に選択肢はないと考えている。

「今後の人生ずっと、他人に頼り続けたくはない。自分の足で立つことが必要だ」とカリムさん。

「希望はある、と言ってくれる人がいれば、それが誰であっても付いて行くだろう」

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