Research Press Release
Nature Genetics
2023年6月6日
Genetics: Immune responses may influence Down syndrome
ダウン症候群の一部の形質に、21番染色体上のインターフェロン受容体(IFNR)遺伝子クラスターのコピーが3つ存在することが関連している可能性があるという知見が、マウスの研究によって得られた。このことを報告する論文が、Nature Geneticsに掲載される。この関連性の機構や、それをヒトのダウン症候群に適用できるかを理解するには、さらなる研究が必要とされる。
ダウン症候群は遺伝性疾患の1つで、患者の全ての細胞に、21番染色体のコピーが2つではなく3つ存在している。21番染色体には、免疫関連遺伝子群の一種であるIFNR遺伝子クラスターが含まれている。21番染色体のコピーが1つ多いことがダウン症候群を引き起こす過程は分かっていない。ヒトの21番染色体に相当する複数のゲノム領域のコピーが1つ多いマウスが、ヒトのダウン症候群の特徴の多くを示すため、これまでのダウン症候群の研究では、こうしたマウスモデルが使われてきた。
今回、Joaquin Espinosaらは、ダウン症候群患者304人(男性163人、女性141人)と対照被験者96人(男性44人、女性52人)の血液のトランスクリプトーム解析を行い、ダウン症候群患者においてIFNR遺伝子の過剰発現がインターフェロンの慢性的な過剰活性化と炎症に関連していることを見いだした。この点をさらに詳しく調べるため、Espinosaらは、ゲノム工学の手法を用い、マウスモデルのIFNR遺伝子クラスターのコピーを1つ除去した。その結果、IFNR遺伝子クラスターのコピーが3つ存在するマウスで観察されていた過剰な免疫応答が抑制された。また、今回の研究では、分子検査、構造検査、認知機能検査が実施され、IFNR遺伝子クラスターのコピーを1つ除去することで、ダウン症候群マウスの特徴の多く(例えば、認知機能障害や心疾患)が改善されることが示唆された。
Espinosaらは、以上の結果がマウスの研究で得られたものであり、この結果を基にしてヒトのダウン症候群を論じる際には注意を要すると述べた上で、異常な免疫応答の背後にある機構を理解するには、さらなる研究が必要なことを指摘している。
doi:10.1038/s41588-023-01399-7
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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