日本銀行は追加金融緩和の有無が注目された31日の金融政策決定会合で、政策金利のフォワードガイダンス(指針)修正にとどめて実弾を温存した。米中貿易摩擦の緩和や米利上げ打ち止め観測による円高リスクの後退などに支えられた面が大きく、海外経済減速の長期化が避けられない中、引き続き外部環境に左右される政策運営が続きそうだ。
黒田東彦総裁は会合後の会見で、追加緩和を見送った理由について、物価上昇のモメンタム(勢い)が損なわれる恐れが「一段と高まる状況ではないとの判断に至った」と説明。その上で、「注意が必要な情勢にあることは事実」とし、政策指針の修正によって「緩和方向を意識した政策運営を明確にした」と語った。
今後も外部環境の改善が続けば、日銀は警戒姿勢をアピールしながらも、追加策の温存を図る公算が大きい。もっとも、米中貿易摩擦が再び激化して金融市場が動揺したり、世界経済の減速が続く中で、設備投資を中心に堅調な国内需要に陰りが出たりする可能性は残っている。
黒田総裁が「金融政策はデータディペンデント」と語ったように、日銀が実際に追加緩和に踏み切るかは、今後の経済・物価情勢次第だ。低金利環境の長期化に伴う金融機関収益の減少や年金・保険の運用難などを踏まえれば、ここからの追加緩和のハードルは相当に高くなる見通しだ。
第一生命経済研究所の熊野英生首席エコノミストは31日付のリポートで、今後も「 日銀は逃げ切れるという自信はない」と指摘。現在のイールドカーブコントロール政策が抱える矛盾から脱出するには海外経済が良くなり、米欧長期金利が上がることが必要だとし、「躊躇(ちゅうちょ)なく追加緩和のモードを切り替えるのは、FRB(米連邦準備制度理事会)の政策スタンスの変化を待つことになるのだろう」との見方を示している。
2019-10-31 10:51:00Z
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-10-31/Q06IFLDWRGG301
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