■ゴネてゴネてゴネる、デタラメな行政
2027年に東京・品川―名古屋間の開通を目指すリニア中央新幹線の工事を巡って、JR東海と静岡県がもめている。問題となっているのはJR東海が着工できていない“静岡工区”。同工区は山梨、静岡、長野の3県にまたがる南アルプストンネル(全長25キロメートル)の静岡県内における8.9キロメートルだ。
南アルプストンネルは土被りが最大で1400メートルという前例のない超難工事。トンネルの両端である山梨工区と長野工区ではすでに工事が始まっている。27年の開業に向け、本来であれば真ん中の静岡工区も着工していておかしくない。
発端は17年10月、静岡県の川勝平太知事がJR東海にトンネル工事によって発生した大井川の湧き水を「全量戻すと明言すべきだ」と主張したことに遡る。JR東海によると、大井川の減水問題については、トンネル工事によって発生した河川の減水分はポンプアップなどによって大井川にすべて戻すことを県と約束していた。しかし、川勝知事は河川の減水分ではなく、トンネル工事によって発生した湧き水をすべて川に戻すように求めた。
■地下には地表からはわからない水脈などが通っている
一般的に、地下には地表からはわからない水脈などが通っているため、トンネルを掘ることにより発生する湧水量は、地表の河川流量の減水分より多くなる。そのため知事の要求を素直に聞けば、工事前よりも大井川の水は多くなる。
それでもJR東海は翌年、川勝知事の要求を受けると表明。だが今度は、工事中の一部期間にやむをえず静岡県側から山梨県側に流れてしまう湧き水も静岡県内に戻すよう、川勝知事はJR東海に求めた。大井川上流に位置する東京電力HDの田代ダムも毎秒約5トンの水を静岡県から山梨県へ流し続けているというが、このダムについて、川勝知事はとくに問題視していないようだ。JR東海の金子慎社長は「工事の各段階で何が起きるのかつまびらかにし、対処できることは精一杯したい」としたうえで、山梨県へ一時的に流出する水量まで戻すのは困難だという見解を示している。
川勝知事はほかにも、全量を大井川に戻す方針や技術的な裏付けの説明を求めるなど、なかなか着工を認めない。これについて河川工学が専門の名古屋大学大学院・戸田祐嗣教授は読売新聞の紙面で「(静岡県が)徐々に交渉のハードルを上げているように映る」と述べている。
また、川勝知事は、駿河湾でサクラエビが不漁だったことに対し、リニア工事の影響も不漁の理由として視野に入れていることを19年3月の定例会見で明らかにした。ちなみに専門家は、過去のサクラエビの獲りすぎが主因であったと指摘している。
とはいえ、リニア工事は環境影響評価法に基づく環境アセスメントを終え、国の認可を得ている。静岡県も手続きに参加していた。着工間際に、なぜ川勝知事は盛大に騒ぎ出したのか。何がそんなに面白くないのか。
川勝知事は19年6月の定例会見でリニアの駅が県内に建設されないことを指摘し「(JR東海は)代償を積まないといけない」と発言。リニア駅の建設費用は平均すると一駅あたり約800億円だという。約800億円の代償とは一体何のことなのか。
鉄道関係者などの間で指摘されているのが、静岡空港に直結する東海道新幹線の新駅の設置だ。静岡空港は利用者に伸び悩んでおり、県としては新駅で空港へのアクセスを改善し、利用を促したい考えだ。14~18年度に計4900万円の関連予算を投じている。
川勝知事は、09年に当選した当初「ハコモノの必要をゼロベースで見直す」としていたが、就任から10年で富士山世界遺産センター、静岡空港ターミナルビル、茶の都ミュージアムなどを次々と整備。18年11月にオープンした展望施設「日本平夢テラス」については「思い入れは格別で開館式典で『この施設を創ることが大きな夢だった』と涙ぐんだ」(静岡新聞)。
JR東海は「新駅構想はない」としている。デタラメ行政の終着駅はどこか。
写真=時事通信フォト
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2019-10-21 08:15:00Z
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20191021-00030276-president-bus_all
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