Monday, October 3, 2022

プライバシー 規制で揺れ動く広告業界、キーワードは「信頼」:「私たちは人々の信頼を勝ち取らなければならない」 - DIGIDAY[日本版]

2022年9月の第4週、個人の公開データの扱いについて世界の政府機関から批判を浴びる広告業界の雄たちが、世界最大級のデジタルマーケティングカンファレンスであるDMEXCO(ドメキシコ)に集結した。そこで高らかに唱えられていたのは、透明性だ。

だが、会場に集まった顔ぶれが十分な信頼を獲得しているとはいえない。自己規制努力に不満を持つ議員たちが広告セクターにさらなる規制をかけてくる可能性がある一方で、業界最大手各社は対照的な優先事項のあいだでバランスを図ろうと揺れ動く。

数字で見る広告業界の現状

  • 10人に4人は「プライバシー対応がよければ」別のブランドに乗り換える
  • 71%の人が「どのようなデータをどのような理由で収集しているのかについて隠し立てしない」ブランドのほうを好む
  • データ規制を巡る不透明感がサードパーティCookie廃止より懸念される

プライバシーがブランド選びの大きな要素に

2年ぶりのリアル開催となったDMEXCOの初日を飾ったのはGoogleだ。一般の人々にとってユーザーデータの扱いが最重要事項であると示唆する、欧州2万人を対象としたイプソス(Ipsos)の調査結果を公開し、同社の「ポジティブ・プライバシー」のメッセージを展開した。

調査結果からは、10人に4人が「プライバシー対応がよければ」別のブランドに乗り換えると回答するなど、プライバシーがブランド選びの大きな要素となっている様子がうかがえる。

GoogleのEMEA地域プレジデントを務めるマット・ブリティン氏は「いったん印象が損なわれると」それを覆すのは難しいと強調し、回答者の71%が「どのようなデータをどのような理由で収集しているのかについて隠し立てしない」ブランドのほうを好むことを指摘した。

ブリティン氏はDMEXCO参加者に向かって次のように述べた。「世界中の規制当局が、インターネットのプライバシー強化を求めている。一部には、ターゲティング広告の全面禁止を呼び掛ける論評すらある。ウェブの将来は、ここに集う私たち全員が何をする気があるのかにかかっている。私たちは人々の信頼を勝ち取らなければならない」。

高まり続ける透明性への懸念

9月第3週に発表されたIABのレポート「State of Data」(データに関する現状)も、ブリティン氏の言葉を裏付ける。IABは同レポートで、米国と欧州のデータ規制を巡る不透明感がGoogleの2024年サードパーティCookie廃止より差し迫った問題である、とメンバーに警告している(米国のデータ規制は州レベルだが、待望の連邦レベルの規制も予想されている)。

例を挙げると、ベルギーのデータ保護当局が「透明性と同意のフレームワーク」(Transparency and Consent Framework:TCF)に疑いを投げかける判断を示したことを受けて控訴した欧州IABに、ベルギー市場裁判所は追加ガイダンスを求める暫定判決を9月に下している。

これは、OpenRTBのフレームワークのような極めて重要な業界の土台に法律上の疑念が広がり続けていることを意味する。と同時に、世界中の数多くのプライバシー保護法に準拠するプライバシー強化技術、いわゆるPETsの開発を目指す場合には、いっそう慎重にならなければならないことをも意味している。

いうまでもなく、この点において最も注目される取り組みは、GoogleのChromeチームが主導する、2022年第4四半期終了予定のプライバシーサンドボックスである。ただし、ほかのさまざまな要因に加え、一般データ保護規則(GDPR)下で同プロジェクトの要素が許されるのかという懸念から、今では終了は2024年、もしくはそれ以降になると見られている。

結局はGoogleの覇権に屈するしかない?

と、ここで話はDMEXCO 2022のGoogleのキャッチワード、「信頼」と「透明性」へと戻ってくる。つまるところ、ビッグテックに誠実な仲介者が務まるのか、関係する多くの企業は今も警戒心を緩めていない。

こうした懸念は、Topics APIを巡る試験への参加者の下に届き始めたフィードバックデータの量について前向きな声が上がり、さらにはIABテックラボ(IAB Tech Lab)のセラー・ディファインド・オーディエンス(Seller Defined Audiences:SDA)などの取り組みがGoogleの後ろ盾を得ても、なお残る。

デリケートな話題ゆえに匿名を希望する現地市場関係者は次のように語った。「大手プラットフォームがやってきて、誰よりも先に自分たちに有利なルールを作るのはわかっている」。

だが、同じく匿名を条件に、欧州IABでの話し合いに詳しい別の関係筋が米DIGIDAYに語ったところによると、ビッグテックの真意に対する懸念感は広がっているが、非公式の場ではメンバーの大部分がGoogleらの覇権に屈するしかないともらすそうだ。

[原文:Amid wholesale changes, the ad industry aims to make ‘trust’ its new catchword

Ronan Shields(翻訳:SI Japan、編集:分島翔平)

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