[東京 6日 ロイター] - 新型コロナウイルスの感染拡大は続いてるものの、金融市場では早くも影響は一時的との楽観論が広がり始めた。新型ワクチンの早期開発や、今後の気温上昇で流行が抑制されるとの期待感が浮上したためだが、中国人民銀行(中央銀行)が大規模な資金供給で市場を崩さぬ「決意」を見せたことも、リスク回避の円高を抑制した一因だ。
<世界経済への影響は一時的との見方>
5日の米国株式市場では、S&P総合500種.SPXが続伸して2週間ぶりに最高値を更新。新型肺炎発生後の下げ幅をすべて埋めた。つれて外為市場でも円安が進み、ドルJPY=は一時109.91円と1月22日以来の高値を奪回した。
直接の材料となったのは、新型ウイルスのワクチン開発が進展との報道だ。世界保健機関(WHO)は「効果があるか不明」と慎重な見解を維持しているが、治療薬開発に向けて11─12日、臨床研究やウイルス学の専門家ら100人超が出席する会合を開くことを決めた。
まだ定かではないワクチンの開発期待に市場が強く反応したのは、新型肺炎が世界経済に与える影響は「激しいが一時的」(BNPパリバ証券のチーフエコノミスト、河野龍太郎氏)との評価が固まりつつあるためだ。
感染者数の増加は止まらず、一部企業は中国国内での生産を停止するなど、影響は日々様々な形で広がっている。しかし、感染者数の増加ペースは少しずつ落ち着きはじめ「楽観は戒めなければならないが、年半ばにかけて気温が上昇すれば、少しずつ(問題は)解消していくのではないか」(河野氏)との見通しが持てるようになってきた。
<中国が矢継ぎ早の対応>
新型肺炎が景気に与える下押し圧力は小さくない。エコノミストらの試算によると、中国は旧正月の延長など幅広く経済活動が停滞していることから、今年1─3月期の国内総生産(GDP)成長率は、5%台を割り込む可能性がある。29年ぶりの低水準だった昨年でも6.1%だっただけに、世界経済をけん引する大国の成長率が4%台へ急減速する衝撃は大きい。
それでも、予防的利下げが奏功している米景気の好調ぶりを考慮すれば、流行の落ち着きとともに、第2・四半期以降に中国景気が持ち直しへ転じる可能性は小さくない。もし米景気が失速しても、連邦準備理事会(FRB)の短期資産購入という「隠れQE(量的緩和)」(トレーダー)や「パウエルプット」と呼ばれる追加利下げへの期待など、下振れ時には歯止め役が存在している、との読みもある。
市場が一見楽観的ともいえる反応を見せたもうひとつの理由は、人民銀が春節明け前に発表した声明にある。3日に1兆2000億元を金融市場に供給すると表明したのに続き、レポ金利の引き下げ、翌4日も5000億元の供給を実施するなど、矢継ぎ早の対応を見せた。
人民銀は4日、巨額の資金供給について「金融市場の期待を安定させ市場の信認を回復することを目指す人民銀の決意の表れ」と表明。市場では「多少の陰りはあるかもしれないが、共産党の統制体制と危機管理能力は、まだそれほど衰えていないようだ」(外銀幹部)と評価する声が上がった。
<ドル/円は狭いレンジのまま>
中東情勢の緊迫化、新型肺炎と予測困難なリスクが相次いで発生したことで、今年も4年連続で「1月は円高」のアノマリーが発生した。日々上下動した値幅を足し上げていくと、年初来の変動幅は延べ13円超と、昨年11月、12月の9円を上回ってきている。
しかし、情勢が少しでも落ち着くと、リスク回避に動いていたマネーは急速に元に戻る動きをみせる。年初来のドル/円は日々、関連ニュースに激しく上下しているものの、1月の値幅は107.65─110.30円の上下2.65円。98年以降の平均4.9円の半分にとどまる。
通貨オプション市場でも、今後1カ月間の予想変動率(インプライド・ボラティリティー)は6日現在で4.8%台。昨年末につけた過去最低の3.7%から多少は上昇したが、歴史的な低水準で底ばいが続く。
ボラティリティーが上昇しないのは、日々激しく上下しても、結局数日以内に元の水準へ戻る展開が続いているためだ。
「今のところ世界経済の大きな流れを変えるには至っていない」(国内銀行エコノミスト)──。こうした見方が変わらない限り、ドル/円の「居所」は大きく移動しない可能性が大きい。
編集:内田慎一
2020-02-06 04:11:00Z
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