Thursday, February 20, 2020

18は過剰数 - Miyanichi e-press - 宮崎日日新聞

 作家の小川洋子さんは何げなく素人向けの数学関係の本を読んでいる時、この世に「完全数」と呼ばれる数があることを知った。6のように約数の1と2と3を足すと、その数自身になるのが完全数である。

 6の次に大きい完全数は28と書かれた行を眺めていて小川さんはふと気付く。「江夏の背番号じゃないか」。そこから江夏豊を愛してやまない数学者を主人公にした小説「博士の愛した数式」の構想が生まれた(小川洋子/福住一義著「小川洋子の言葉の標本」)。

 18か、それとも20か。民法改正で2022年4月から18歳が成人年齢になることによって、ちょっとやっかいな問題が生じている。すでに決定済みのところもあるが県内市町村の多くが成人式の対象年齢を18歳に変更すべきかこれまで通り20歳のままとするか頭を悩ます。

 完全数以外の数は、約数の和がその数自身より大きい過剰数か小さい不足数に分けられる。小川さんの小説中の数学者が例に引いたのは18だった。「18の約数の和は21だから過剰数」。教わったシングルマザーの家政婦は、18がただの数字ではなく「過剰な重みに耐える」特別な数字に思えてくる。

 18歳にとって大人の責任は過剰な重みではないか。まだ高校生もいる年齢で背負わせるのは酷な気がする。仮の背番号18で2年間学んだり経験を積んだりしながら完全な大人になればいい。節目の式典は20歳のままに。個人的な見解だが、それが多分正解だ。

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