新型コロナウイルスの感染拡大を受け、菅義偉首相が緊急事態宣言の検討に入ると年頭記者会見で表明した。宣言は新型コロナ特別措置法に基づき、東京都と埼玉、千葉、神奈川の3県が対象となる見通しだ。
1都3県では感染状況が悪化し、医療体制も逼迫(ひっぱく)。4知事は2日、発令を政府に要請していた。これを受けた対応とはいえ、政府の対策が後手後手に回った揚げ句の遅過ぎる判断だ。
宣言について菅首相は、近く発令するとみられる。だが会見では発令日や期間を言明しなかった。宣言検討の理由としては1都3県の深刻な感染状況を挙げ、「より強いメッセージが必要と考えた」と述べた。
しかし、肝心の年頭記者会見で言葉を尽くしたとは思えない菅首相の説明では、危機感が国民に十分に伝わったかどうか疑わしい。「強いメッセージ」とは言い難いのではないか。
緊急事態宣言にはこれまで慎重だっただけに、急激な方向転換だ。菅首相は感染状況などをもっと詳細かつ具体的に国民に示し、多くの理解が得られるよう説明すべきだったのではないか。
1都3県の現状は極めて厳しい。東京都では4日、重症者数が過去最多を記録。3日の都の新規感染者は経路不明が6割を占め、1都3県の新規感染者の合計は全国の約半数にも達した。
万一、感染爆発に至れば医療体制が崩壊、人々の命を守ることが難しくなるのは明らかだ。取るべき対策が遅れれば新規感染者や重症者、死者がさらに増える恐れもある。菅首相はこれまでの対応の遅れを率直に認め、感染の拡大阻止と収束に全力を挙げなければならない。
宣言に伴う措置としては、飲食業を中心に限定的に実施する考えを示した。「経路不明の感染原因の多くは飲食によるもの」だからだという。だが飲食業に絞った対策だけで十分な効果を上げられるのか疑問だ。
経済への打撃を避けるために対策を小出しにするのでは、感染抑制は難しいだろう。対象業種を飲食業に限定するのが適切なのかどうかを含めて、政府のコロナ分科会など専門家の意見を早急に聞くべきだ。
営業時間短縮に伴う協力金などの経済支援の内容についても、会見では言明しなかった。明確な情報が十分伝わらないため、事業者が様子見して、その間に感染が拡大するようなことは避けねばならない。
菅首相は経済重視のあまり、感染防止対策を軽視しがちなのではないかとの懸念もある。観光支援事業「Go To トラベル」の全国一斉停止も、分科会の再三の提言などを受けた判断だった。
これまでのコロナ対策を見れば、経済再生と感染防止の両立は確かに難しい。今は、経済よりも「命」を守ることに全力を尽くすべきだ。
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