Saturday, May 9, 2020

小型軽量なDJIのドローン「Mavic Mini」は、多くの人にとってベストな選択肢になる:製品レヴュー|WIRED.jp - WIRED.jp

折りたたんで持ち運べる小型軽量なDJIドローン「Mavic Mini」。多くの人にとって十分な2.7K画質の動画を撮影できるうえ、規制対象外で気軽に飛ばせるのが特徴だ。小さくて見失いかねない“弱点”こそあるが、ほとんどの人にとってベストなドローンと言っていい──。『WIRED』US版によるレヴュー。

WIRED(US)

DJI Mavic Mini

PHOTOGRAPH BY DJI

製品を小さくして機能を減らし、そのぶん価格を安くしようとすれば、さまざまな妥協が必要になることが多い。だが、ときには実に素晴らしい製品が生まれることもある。その一例が「Nintendo Switch Lite」だろう。

DJIも新しい「Mavic Mini」で、これをやってのけた。大きく高価なほかのドローンに備わっている優れた機能のほぼすべてを、手のひらサイズのボディに詰め込んだのだ。

折りたたみ式ドローンのMavic Miniは、ほぼあらゆる点でかつての小型ドローン「Spark」を上回っている。一方のSparkは、ボディを小さくするために多くの妥協が行われていた(にもかかわらず、Mavic Miniより50g重いうえ高価だ)。

Mavic Miniで重量と価格を抑えるために犠牲となった唯一の主要機能は、4K動画の撮影である。ただし、2.7K動画を撮ることはできる。ほとんどの人にとってはこれで十分だろう。わずか250g足らずの重さ(携帯電話よりやや重い程度)でこの画質なら、言うことはない。

小型軽量で規制対象外なのが利点

Mavic Miniは小さくて軽く、持ち運びがとても簡単だ。旅行にはもちろん、ハイキングやバックパックを背負っての長旅にも最適なドローンといえる。

離陸時の重量は249g[編註:日本仕様は199g]だが、この数値はドローンの世界で重要な意味をもつ。米連邦航空局(FAA)の規定により、米国では重量が0.55ポンド(250g)以上の無人航空機は登録が必要になるからだ。手続きはごく簡単なものだが、Mavic Miniならそれすら不要になる。

[編註:日本仕様は重量が199gに抑えられたことで、多くの場所では日本の航空法の規制対象外となる。軽量化によって飛行時間が短くなり、米国仕様の30分に対して18分になっている]

DJI Mavic Mini

PHOTOGRAPH BY DJI

Mavic Miniをバックパックに詰め込んで長時間歩くことを考えているなら、ドローンとほぼ同じサイズで249gのコントローラーがあることも忘れないでほしい。本体と合わせて500g近くになる上、ケースを使うならそのケースも必要になる。

そして極めて小さいサイズながら、今回のテストでは約26分間を飛行できたほどのバッテリー容量を備えている。もっとも、飛行時間は風と気温に影響されやすい。冬にテストしたときは気温が約1.6℃〜15.6℃だったことから、DJIが主張する30分の飛行時間[編註:日本仕様は18分]よりやや短くなった可能性がある。リチウム電池は寒さに弱いのだ。

それでもMavic Miniは、これまでで最高のフライト体験をもたらしてくれたドローンのひとつだ。動作は機敏で反応も早い。新しいアプリ「DJI Fly」はDJIのほかのドローンほどの機能はないが、十分に使える。

唯一の不満は、ポジションモード、スポーツモード、名前が新しくなった「Cinesmooth(シネスムーズ)」モードという3つのフライトモードの切り替えが、「Mavic」シリーズのほかのモデルのようにコントローラーではできないことだ。代わりにアプリを使う必要がある。

小さくて見失う危険性には注意

ご想像の通り、Mavic Miniはその軽さゆえに、風が強い日の利用はおすすめできない。ただし、そよ風が吹く日にテストしたときには、驚くほどの安定性を見せた。突風が吹いてもほとんど横揺れしなかったのだ。どちらかといえば縦方向に揺れがちだったので、突風が吹けば浮き上がるだろう。

Mavic Miniを飛ばす際に懸念していたもうひとつの点は、そのサイズだった。米国仕様のMiniは1,600フィート(約487m)の高さまで上昇し、2.5マイル(約4km)先まで飛ぶことができる[編註:日本では周波数帯が異なるため2,000mに制限される]。

DJIのほかのドローンと比べれば見劣りするが、サイズが小さいので機体を見失ってしまう危険性がある。目で追える範囲で飛ばすのが最も安全だろう。

ドローンから送られてくる一人称視点の映像を頼りにしていると、見失う可能性が非常に高い。あまりに小さいので、映像を確認しようとスマートフォンに目をやってから再び空を見上げたときには、どこに行ったかわからなくなっているかもしれない。

ただし技術的には、スマートフォンを使わなくてもMavic Miniを飛ばせることは指摘しておくべきだろう。目で確認しながら、コントローラーだけを使って飛ばすことができる。実際に数回ほど試してみたが、機体を見失うまいと気が気でなかった。

小さなフレームの下には、絞り値2.8で焦点距離が24mmのレンズがある。CMOSイメージセンサーは12メガピクセルの静止画撮影が可能だ(残念ながらJPEGのみに対応する)。動画は2.7K画質なら30p、フルHDなら60pまで対応している。サイズの小ささを考えれば、これは素晴らしい。もちろん、4K動画やRAW画像の撮影はできないが、小さいマシンには妥協が必要なのだ。

多くの人には2.7K画質の動画で十分

Mavic Miniは小さくて軽く、価格も安いが、そのぶん機能について若干のトレードオフがある。これはDJIの「Mavic」とは異なる製品なのだ。もちろん「Mavic Pro」とも違うし、同じく小型の「Mavic Air」と比べても違いは大きい。

例えば、充電に使用するポートは汎用性の高い最新のUSB-Cポートではなく、一般的なUSBポート(USB Type-A)だ。それでも映画の空撮シーンのような映像を撮影できるし、飛行性能も優れている。

大きな欠点は、4K動画を撮影できないことだ。このためヴィデオグラファーの多くはMavic Miniに手を出さないだろう。Mavic Miniの2.7K動画の画質が悪いわけではないが、その映像をほかの4K映像と組み合わせてもうまくいかない。したがって、制作中の作品に4K映像が含まれているなら、ドローンの映像も4Kにしたいところだ。それならMavic 2やMavic Pro、Mavic Airといった製品を使えばいい。

だが、それ以外の人にとって、Mavic Miniの2.7K動画は十分に素晴らしい。それに3軸スタビライザーのおかげで、2軸のSparkよりはるかにスムーズな映像を撮影できる。「最高のカメラはポケットに入るカメラだ」という言葉が昔からあるが、ポケットに入れるものがカメラではなくドローンであっても、この言葉は適切だろう。

DJI Mavic Mini

PHOTOGRAPH BY DJI

衝突回避センサーは未搭載

Mavic Miniで失われたもうひとつの重要な機能は、前方および後方からの衝突を回避するためのセンサーだ。もっとも、わずか数年前までは、誰もが衝突回避センサーのない「DJI Phantom」を飛ばしていた。Phantomは図体が大きいうえにうるさく、動作もひどく緩慢だった。まるで庭に入ってきた子どもをシーッと言いながら追い払おうとする老人のようだった。

信じられないかもしれないが、Mavic Miniは衝突回避センサーがなくても操縦できる。ただし、これには練習を重ねて腕のいいドローンパイロットになるという昔ながらの条件がある。練習する場合は、近くに障害物がなく、人がいない場所で始めることを強くお勧めする。上達すれば、より難しい場所にチャレンジできるようになるだろう。

一方で、個人的には残念なことがひとつある。それは、選択した目標物を追跡できる「ActiveTrack」機能がないことだ。クイックショットモード(目標物の周囲を回転しながら撮影する「Circle」など)は備わるので、その被写体にフォーカスした映像は撮影できる。それなのに、さらに高度な追跡が可能なActiveTrackが見当たらないのはがっかりだ。

ほとんどの人にとってベストな製品

とはいえ、価格とサイズを考えれば、Mavic Miniはほとんどの人にとってベストな製品だろう。ドローンを頻繁に使う気になれない理由のひとつは、サイズが大きく、ほかの人にじゃまな存在だと思われる可能性があることなのだ。

個人的にドローンが好きで仕事や趣味で何年も飛ばしてきたが、ドローンを片付けたり持ち運んだりする際にはいつも苦労する。それに音が大きいので、たいてい誰かから怒られることになる。

Mavic Miniなら、このような問題は一切起こらない。小さなバッグに放り込んで、いつでも持ち歩くことができる。音は期待していたよりは大きいが、いままで使ってきたドローンのなかでは最もじゃまに感じない部類だ。高度を50フィート(約15.2m)ほどに保っておけば、ほとんど気になることはないだろう。

◎「WIRED」な点

小さくて軽く、ポケットに入れて持ち運べる。3軸スタビライザーが素晴らしい。当局の認可を得る必要がなく、気軽に飛行を楽しめる。

△「TIRED」な点

USB-Aポートでしか充電できない。「ActiveTrack」機能がないのは、わざと不便にするためだろうか。RAW画像のキャプチャーもできない。ボディがあまりに小さいので、飛行中に見失う可能性がある。

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