Tuesday, May 26, 2020

社説 アビガンの審査 政治の先走りが危ない - 信濃毎日新聞

 新型コロナウイルス感染症の治療薬候補の一つ「アビガン」について、政府が5月中の承認を断念した。

 安倍晋三首相が記者会見で月内の承認を目指すとしていた。開発企業側は有効性を示す十分な臨床データを得ていない。承認申請できる状況になく、事実上不可能となった。

 医療専門家らからは、日程ありきで先走る政権の姿勢に懸念の声が上がっていた。審査にも影響を及ぼしかねない首相の発言は、科学的な知見を軽視している。

 アビガンは、使用で胎児に奇形が生じる危険性も動物実験で確認されている。慎重な審査が欠かせない。審査が拙速になれば、国の薬事行政への信頼を損なう。

 アビガンは抗インフルエンザ薬として富士フイルム富山化学が開発した。中国で軽症のコロナ患者に一定の効果が報告されている。国内では企業の他に藤田医大(愛知県)などで臨床研究が続く。

 政府は感染拡大に伴う緊急経済対策に200万人分の備蓄を盛り込んだ。数十カ国から提供の要請を受け、無償供与も始まった。

 治療薬として期待は高まるものの、新型コロナに有効性を示すデータが十分に得られていない。厚生労働省内では当初、承認は7月以降との目標が浮上していた。

 安倍首相は早くからアビガンに期待感を示してきた。今月4日の会見で「有効性が確認されれば」と条件付きながら「今月中の承認を目指す」と表明。時期の根拠は明らかにしていない。

 効果や安全性が十分確認できていない段階で承認時期を示したことに、専門家からは「審査がないがしろにされる恐れがある」との批判が出ていた。

 日本医師会の有識者会議は「科学を軽視した判断は国民の健康にとって害悪」との声明を公表。拙速な承認にくぎを刺した。

 政府は今月、米国で開発されたレムデシビルを治療薬として特例承認した。国際的な臨床試験(治験)では効果に未知数な部分が多く、副作用も指摘される。

 科学的な裏付けより実用化を優先する政権の姿勢が透ける。

 加藤勝信厚生労働相はアビガンの臨床試験は継続し、有効性が確認されれば迅速に薬事承認するとの姿勢だ。国民に対し、効果と副作用の危険性に関わる情報の公開を徹底していくべきだ。

 国内で開発が進むワクチンの実用化は早くても来年春以降の見通しだ。次の感染拡大に備え、治療薬は欠かせない。確実な治験の積み上げと承認が求められる。

(5月27日)

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