Wednesday, May 20, 2020

COVID-19治療薬、拙速な承認を行うべきでない - 日経メディカル

写真1 日本医師会COVID-19有識者会議が発表した緊急提言

 日本医師会のCOVID-19有識者会議(座長・自治医科大学学長の永井良三氏)は5月17日付で「新型コロナウィルス感染パンデミック時における治療薬開発についての緊急提言」を発表。アビガンなどのCOVID-19治療の候補薬を念頭に、「エビデンスが十分でない候補薬、特に既存薬については拙速な特例的承認を行うべきではない」と訴えた。

 冒頭、声明は「今回のCOVID-19パンデミックは医療崩壊も危惧される緊急事態であり、新薬承認を早めるための事務手続き的な特例処置は誰しも理解する」との認識を示した。しかし、「有事といえども科学的根拠の不十分な候補薬を、治療薬として承認すべきでないことは明らかである」とし、以下の提言を展開した。

 まず、COVID-19治療薬開発のためには「適切に設計され、かつ適切なコントロール群(即ち抗ウイルス薬または免疫調整剤を含まない群)を含むランダム化比較試験(RCTs)を実施することが必須であり、十分な検出力確保のための症例数設計が重要である」と主張。その上で「特にCOVID-19のように、重症化例の一方で自然軽快もある未知の疾患を対象とする場合には、症例数の規模がある程度大きな臨床試験が必要となる」と訴えた。加えて「観察研究だけでは有意義な結果を得ることは難しいことを指摘したい」と続けている。

 また、具体的な薬剤名は明記しなかったものの、以下のような表現でアビガンなどのCOVID-19治療の候補薬を念頭に置いていることを示唆している。

 最近、COVID-19に感染した有名人がある既存薬を服用して改善したという報道や、一般マスコミも「有効」ではないかと報道されている既存薬を何故患者が希望しても使えないのか、と煽動するような風潮がある。またパンデミック下のランダム化比較臨床試験不要論を主張する医師も存在する。しかし我が国が経験したサリドマイドなど数々の薬害事件を忘れてはならない。品質、有効性、および安全性の検証をないがしろにした結果の不幸な歴史を乗り越えるべく、今日の薬事規制が存在している。ある既存薬のランダム化比較試験は進行中であり、近く結果の発表が見込まれる。

 その上でこう結んでいる。

 「エビデンスが十分でない候補薬、特に既存薬については拙速に特例的承認を行うことなく、臨床試験によって十分な科学的エビデンスに基づいて承認すべきであることを提言する」。

 将来に禍根を残すことのないよう必要な手続きをしっかり踏んだ上で、日本発のCOVID-19治療薬を世に送り出すべきなのは言うまでもない。

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