*15:17JST TKP Research Memo(7):十分な運転資金を確保し、ビジネスモデルの原点回帰で、貸オフィス事業に集中
■新型コロナウイルス感染拡大による影響とその対策
1. ティーケーピー3479の足元の状況
政府によるイベント自粛要請等の影響により大型宴会場を中心に利用・新規予約が減少し、その結果、入試試験会場需要など本来は最大の繁忙月であるはずの2月の貸会議室の月次売上高は約25億円(計画は30億円超)と大幅に計画未達となった。特に、貸会議室のKPIである坪当たりの売上高についても、1月までは順調に増加傾向にあったものの、2月単月では前年同月比13.0%減の38,363円と大きく落ち込んだ。とりわけ大型宴会場の低迷が顕著であり、この傾向は新型コロナウイルス感染拡大の影響が終息するまで継続することが予想されるが、影響が大きいとされるホテル宴会場・大型宴会場の売上高が連結売上高に占める割合は6%程度と限定的のようだ。
一方、リージャスブランドによる月貸しオフィスについては、契約期間(平均1年~1年半)が貸会議室と比べて長いことから、新型コロナウイルス感染拡大による影響は現時点でほとんど生じていない。KPIである稼働率についても、国内拠点の大部分を占める2018年2月以前に出店した施設では80%を超える高い稼働率を維持しているほか、直近にオープンした施設でも稼働率は着実に上昇している。
2. 当面の経営方針
いまだ終息時期の見えない新型コロナウイルス感染拡大を受けて、中期経営計画(最終年度2022年2月期)を取り下げるとともに、以下の3つの方針に基づいて当面の事業を行っていく考えである。
(1) 十分な運転資金の確保と固定費の圧縮
手許の現預金(3月末時点で約94億円)に加えて、各銀行からの調達枠の確保、不動産の売却や不動産担保ローンの実行、アパホールディングス(株)への優先株発行などにより、既に1年間の必要運転資金を大きく上回る現預金及び調達枠(合計370億円超)を確保済であるが、さらに役員報酬の自主返納や家賃交渉などにより固定費の圧縮(キャッシュ流出の抑制)を実施していく方針である。
(2) ビジネスモデルの一時原点回帰
新型コロナウイルス感染拡大が終息するまでの間は、需要が継続的に見込める時間貸オフィスを改めて事業の中心に据え、周辺ビジネスについては市況に応じて柔軟に変化させていく方針である。すなわち、貸オフィス(TKPによる時間貸オフィスとリージャスによる月貸しオフィス)を軸としたコア事業にリソースを集中する一方、ノンコア事業については特性を整理したうえで事業の選択と集中を進めていく。新型コロナウイルスの感染拡大および緊急事態宣言の発令を受けてデメリットとなる一部のノンコア事業(イベントプロデュース、弁当製造、ホテルの一部等)では一時休止を早期に決定するなど、速やかな対応を行っている。その一方で、新型コロナウイルス感染拡大への対応に関する新たな需要が生まれている事業もあるという(人材派遣:海外からの帰国者受け入れホテルへの派遣需要が増加、コールセンター:活況な飲食デリバリーにおいて他社のコールセンターとしての需要が増加等)。
(3) 需要の変化への対応
上記(1)及び(2)により、収益体質の強化を図るとともに、新たに発生した需要の変化に対応することでビジネスチャンスをしっかりとつかんでいく方針である。すでに着手しており2021年2月期中にオープン予定の施設も一部あるものの、新規出店の契約は当面行わず、既存施設を最大限に活かした形でコロナ禍での事業を推進していく。TKP本体の既存貸会議室については、「ソーシャルディスタンスの確保」「加湿空気清浄機の設置」「定期的な消毒・換気の実施」など十分な安全性を確保したうえで、コロナ禍で需要が見込まれる「コロナ対策会議室」※1や「一時的な分散型オフィス」※2等へシフトすることにより、顧客基盤の拡充及び収益の最大化を目指す戦略を描いている。企業の研修施設やリモートオフィス施設として、デイリーオフィス、ウィークリーオフィス、マンスリーオフィスといったあらゆる需要に対応していくとしている。
※1 新型コロナウイルス感染リスクに配慮した貸会議室のこと。貸会議室にテレビ・Web会議を組み合わせた「小規模・分散型」の貸会議室対応を進めている。
※2 リスクヘッジを目的とした一時的なオフィス分散の需要が急増していることを受け、2020年3月11日に貸会議室をオフィススペースとして提供する「BCP(事業継続計画)支援オフィス」のサービスを開始した。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
《YM》
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