Monday, November 6, 2023

<社説>ガザ危機と日本 停戦実現へ存在感示せ:東京新聞 TOKYO ... - 東京新聞

 パレスチナのイスラム組織ハマスによるイスラエルへの越境襲撃から1カ月。イスラエルの報復攻撃でパレスチナ自治区ガザは深刻な人道危機に陥っている。中東和平に尽力してきた日本は停戦に尽力し、存在感を示すべきだ。

 今回の戦闘によるイスラエル側の犠牲者約1400人に対し、ガザの死者は9千人を超えた。ロシアのウクライナ侵攻による民間人の犠牲者数にほぼ等しい。

 イスラエル軍はガザへの地上侵攻を始め、空爆も強化した。自衛権の行使を掲げるが、病院や学校に加えて救急車や難民キャンプまでも爆撃の標的とし、国連職員や報道関係者の犠牲も相次ぐ。

 明らかに自衛権を超える過剰な攻撃だ。国連人権理事会のサイトで「ジェノサイド(大量虐殺)」という文言が使われる危機的な状況で、停戦の実現が急がれる。

 中東の植民地支配の歴史とは無縁の日本はパレスチナ建国を前提とする2国家解決案を支持し、過去には独自外交を追求した。

 1973年の第4次中東戦争直後にはイスラエルが占領地から撤退しなければ、関係を再検討すると官房長官談話を発表。2000年に当時の河野洋平外相が外務省に「イスラム研究会」を発足させたが、その後は米国追随の傾向を強め、独自性は薄まっていく。

 今回の戦闘では主要7カ国(G7)で唯一、イスラエル支持の共同声明に不参加の一方、人道的休戦を求める国連総会決議は棄権した。米国とエネルギーで依存するアラブ諸国とのバランスに腐心したのだろうが、存在感は薄い。

 イスラエルを支えてきた米国のバイデン政権も苦悩する。米国政治に強い影響力を持つ親イスラエルのロビー団体や、イスラエル右派と親密で米国民の4分の1を占めるキリスト教福音派の意向を無視できないとはいえ、前例のないイスラエル批判も噴出する。

 内政事情で身動きが取れない米国に代わり、日本が戦闘中止に向けて主導的役割を果たすことが、あるべき日米関係ではないか。

 上川陽子外相は先週、イスラエルやパレスチナ自治政府などを訪れ、きょうから東京で始まるG7外相会合では議長を務める。

 国際世論は即時停戦に大きく傾いている。日本政府は独自外交の歴史を思い起こし、人道的な破局を回避するため、G7の議論をリードすべきである。

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