汗をかくことは体温を調節したり、皮膚に適度な湿度を与えたりするという大切な機能を果たしている。しかし、高い気温や運動などに関係なく過剰な汗が出ることを多汗症といい、特に手のひらの場合は日常生活や仕事などに支障を来すこともある。専門医は「手のひらの多汗症はこれまで治療の選択肢が少なかった。しかし、最近保険適用された日本初の治療薬は患者にとって利便性が高く、大いに期待できる」と強調する。
両手に大量の汗をかく手掌多汗症
◇原因不明の大量発汗
東京医科歯科大学皮膚科で「発汗異常外来」を担当した池袋西口ふくろう皮膚科クリニックの藤本智子院長は「水滴が肉眼で確認できるほどの多汗症は困ることが多い。しかし、原因は分からない。緊張や集中といった精神活動が発汗を促すことから、脳にその中枢があることは予測されているものの、詳細はまだ不明だ。『発汗中枢』というようなものがあると推定されている」と話す。
この原因不明の大量発汗を「原発性局所多汗症」と呼び、頭部や顔面、手のひら、脇の下、足底(足の裏)などの部位によって症状が異なる。原発性手掌(手のひら)多汗症は約493万人と推計され、珍しい病気ではない。
池袋西口ふくろう皮膚科クリニックを受診した患者の発汗部位
2020年の疫学的調査によると、原発性局所多汗症の有病率は10.0%で、部位別に見ると、手掌が2.9%だった。17年5月からの6年間に原発性局所多汗症で同クリニックを受診した患者延べ9527人(1人で複数箇所が多汗の場合を含む)の発汗部位を見ると、頭部12%、顔面13%、手足24%、腋窩(えきか)=脇の下=41%などとなっている。
◇患者は生後6カ月から83歳まで
同クリニックを受診する患者の年齢はさまざまだ。最年少は生後6カ月の女児。母親が椅子に座らせていたところ、手足からポタポタと床に落ちた汗が水たまりを作っていた。母親も多汗症だったため、心配になり受診した。最高齢は83歳の男性だ。それまで病気とは思っていなかったが、新聞記事で多汗症を知ったのが受診のきっかけだ。「これから介護を受ける立場になったときに、介護者に迷惑をかけたくない」と言う。
手汗について病気や服用中の薬など思い当たる原因がなく、6カ月以上続いた場合に、以下の6項目中2項目以上を満たすと、手掌多汗症と診断される。
① 発症が25歳以下。
② 左右の手のひらに汗をかく。
③ 睡眠中は発汗が止まっている。
④ 1週間に1回以上、多汗症状がある。
⑤ 家族歴がある。
⑥ 日常生活に支障がある。
◇患者の悩み
手掌多汗症で困ることは多い。幼児では折り紙や工作などで、小学生や中学生、高校生になると、ノートへの板書や試験の時に紙が破れたりするために集中できない。運動でも鉄棒は滑ってできない。成人してからも、医療従事者や美容師ら人に触れたり、精密機器を扱ったりする仕事や、コンビニなどで人に直接触れたり、やりとりしたりするようなことの妨げとなる。このため、ある職種に就くことを諦める選択をするケースもあるという。
(2023/11/15 05:00)
からの記事と詳細 ( 手に大量の汗~生活・仕事に支障―手掌多汗症~ - 時事メディカル )
https://ift.tt/C53jYSh
0 Comments:
Post a Comment