Friday, November 20, 2020

ポンペオ氏、イスラエル入植地を訪問 米国務長官で初 - BBCニュース

バーバラ・プレット・アッシャー、BBC米国務省担当特派員

Mike Pompeo wearing a face mask with a US flag on it, standing in the occupied Golan Heights

米大統領選で野党・民主党のジョー・バイデン氏の当選が確実となったことで、現職のドナルド・トランプ大統領の任期が終わりに近づいている。こうした中、トランプ氏に最も忠実な側近の1人が歴史的訪問を果たした。

イスラエル訪問中のアメリカのマイク・ポンペオ国務長官は19日、イスラエルが占拠するゴラン高原と、パレスチナ自治区ヨルダン川西岸のユダヤ人入植地を訪問した。米国務長官が同地を訪問するのは初めて。

トランプ政権はヨルダン川西岸のイスラエルの主権を認めており、今回の訪問はその立場を示したかたち。

イスラエルは1967年の第3次中東戦争でヨルダン川西岸とゴラン高原を占拠した。以来数十年にわたり、同地の運命はパレスチナ人やシリアとの和平交渉の失敗に振り回されてきた。

ポンペオ氏の訪問は、トランプ氏の政策転換は成功だったと強調することを狙ったものだったようだ。

しかし、2024年の米大統領選への出馬を目指していると噂されるポンペオ氏が、福音派キリスト教徒の共和党支持を得るための訪問だったとも、広く受け止められることとなった。

そして、入植地で生産された製品に「ヨルダン川西岸製」(Made in the West Bank)の代わりに「イスラエル製」(Made in Israel)と表示するよう定めた新たなガイドラインの発表にもつながった。

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この動きは、アメリカがヨルダン川西岸の大部分の「イスラエルによる事実上の併合」を認めることと等しいと、イスラエルを代表するジャーナリスト、バラク・ラヴィド氏は指摘した。また、バイデン次期大統領がトランプ氏の入植地をめぐる政策を撤回するのを阻むことにもなった。

バイデン氏は実際に、ヨルダン川西岸とゴラン高原をイスラエルの占領地として扱うという、長年のアメリカの立場に戻ることを示唆している。しかし、トランプ氏とポンペオ氏の遺産にどれほど直接的に立ち向かうかは不透明だ。バイデン氏の側近たちは、パレスチナ人との和平交渉という野心的な計画はアジェンダ(政策目標)に含まれていないと示唆している。

バイデン氏はおそらく、トランプ政権下で崩壊したパレスチナ人との外交関係を修復し、トランプ氏が打ち切ったパレスチナ人への人道支援金を復活させることに最も積極的な人物だろう。

しかしバイデン氏は元来、親イスラエル派の民主党員で、新境地を開拓しようとはしないだろう。左派の民主党員が主張するように、アメリカのイスラエルへの支援に条件がつくべきだとは考えていないし、エルサレムをイスラエルの首都と認めるという、物議を醸したトランプ氏の決定を覆すつもりもない。

対イラン政策

中東政策でより大きな争点となっているのが、イランだ。

バイデン氏は2018年にトランプ氏が離脱を決定したイラン核合意について、イランが再び順守するのであれば復帰したいとしている。そうなれば、破壊的な制裁を科してイラン政府を圧迫するというトランプ氏の「最大限の圧力」政策を覆すことになる。

来年1月20日の次期大統領の就任式まで残り数カ月となる中、トランプ政権は新たな制裁の検討を始めており、バイデン新政権が誕生した際の核合意復帰がより困難になる可能性がある。

制裁対象は核活動よりも人権侵害や弾道ミサイル開発、過激派グループへの支援などが焦点となっている。

「原則として、バイデン氏が大統領としてほぼすべての制裁を解除あるいは停止することは可能だ」と、米ワシントンにあるブルッキングス研究所のイラン専門家、スザンヌ・マロニー氏は言う。「実際、ここでの目標は政治的に受け入れられないものにすることだ」。

米紙ニューヨーク・タイムズは16日、トランプ氏が側近とイランの核関連施設への攻撃の可能性について協議したと報じた。マイク・ペンス副大統領やポンペオ国務長官らが思いとどまるよう説得したという。

この報道を受け、中東の専門家たちや民主党関係者らは、サイバー攻撃や軍事攻撃などが起きるかもしれないと警戒している。

マロニー氏は「最終的には米政府とイラン政府との再合意はあると思う」としつつ、「イラン問題に関してバイデン陣営が直面している課題はかなり厳しい」と指摘する。

Joe Biden speaks to reporters in Delaware, 19 November

フーシ派

トランプ政権は、イエメンの反政府勢力でイランの後押しを受ける「フーシ派」をテロ組織に指定することも検討している。

アメリカの法律では指定する理由があるかもしれないが、もしそうなれば、バイデン氏のイエメンに対する新たなアプローチ計画を妨げることになるだろう。バイデン氏はフーシ派に対抗するサウジアラビアとアラブ首長国連邦(UAE)への軍事支援を停止したい考えだ。

5つの主要支援団体と民主党議員55人はポンペオ国務長官に書簡を送り、テロ組織への指定は国連主導のぜい弱な和平プロセスを混乱させ、世界で最悪の人道危機への過剰な対応を妨害することになると警告した。

シンクタンク「国際危機グループ」(ICG)は、こうした動きは「トランプ政権のイラン政府に対する『最大限の圧力』キャンペーンの拡大を理由に仕組まれたものだ」とした。「テロ組織への指定は、サウジアラビアやアラブ首長国連邦から直接の要求を受けたものだとする声も上がっている」。

ポンペオ氏はサウジアラビアとUAEも訪問する予定で、イスラエルの権利を補強しつつ、イランへの圧力を強めるための最後の政治活動となるだろう。

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