Friday, November 27, 2020

過剰な白肌信仰にNO! 美白からの解放を求める世界の声。 - VOGUE JAPAN

スキンブリーチング(肌の漂白)、ホワイトニング(美白)、ライトニング(明るくする)──こうした表現はすべて、クリームや洗顔料などのアイテムを用いて肌の色を明るくする美容術を示すものだ。一口に明るくすると言っても、多少のトーンアップから見た目の印象ががらりと変わるほどの漂白まで、その程度はさまざまだ。

スキンライトニングの問題点は多岐にわたる。特にある人種や民族集団の中で、浅黒い肌よりも色白の肌の方が価値があるとされる偏見、いわゆる「カラーリズム」の一環として、肌の漂白は人種差別を固定化する原因のひとつとなっている。また、性差別的な美の概念を助長しているという点で、この偏見によって苦しめられる対象は圧倒的に女性が多い。さらに、もはや時代遅れになった「階級」という概念を蒸し返すという悪影響もある。肌の白さは権力や社会的地位の象徴であり、肌を真っ白にすることで、社会的地位の向上が望めるという考えはいまだ根強い。インドをはじめとする一部の国々では、肌が浅黒いというだけの理由で就職がかなわなかったり、見合い結婚が破談になったりする恐れすらあるのだ。

アフリカ、アジア、カリブ海沿岸の一部地域で広く行われている美白習慣は、ヨーロッパや北米のディアスポラ(故郷を離れて暮らす人々)コミュニティにも浸食している。世界保健機関(WHO)の推計では、肌の漂白に対する反対運動が支持を集める中にあっても、スキンホワイトニング市場は2024年までにおよそ312億ドル(約3兆3000億円)規模にまで成長するとみられている。

ホワイトニング製品の中止だけでは解決しない。

一方、Black Lives Matterに象徴される人種間の不公正に対する抗議運動が世界中で盛り上がりを見せる中、消費者向けの大手ブランド各社が、次々に製品ラインナップを変更する方針を明らかにしている。今年6月にはジョンソン・エンド・ジョンソンが、アジアと中東で販売していた2つのスキンライトニング製品シリーズを製造中止にすると発表した。これに続きユニリーバも、インドで展開中の、商品名が問題視されていた美容クリーム「フェア&ラブリー」を「グロウ&ラブリー」に改名し、「色白」に価値があるとする表現を取り下げた。ロレアルも、マーケティングで使用する言葉について、同様の改訂を行うと表明している。

だが、こうした大手メーカーの対応に、すべての人が満足しているわけではない。そのひとりが、2009年にインドで始まったカラーリズム反対運動「ダーク・イズ・ビューティフル」の提唱者カヴィサ・エマヌエルだ。ホワイトニング市場についてエマヌエルは、「各ブランドが広告などの文言を通して人々の不安感をあおり続ける限り、この市場は成長し続けます」と一刀両断する。ユニリーバが「色白」という単語が入った製品名を見直した件についても、この対応では「不十分だ」とエマヌエルは批判する。同社が、ファンデーションについては女性の権利拡大を後押しするようなメッセージを発信しながら、一方でスキンライトニング製品を販売しているのは偽善的だというのがエマヌエルの主張だ。

「女性の権利拡大とカラーリズムのような偏見の助長が、両立するはずはありません」

ちなみにユニリーバは、ファンデに関してはいまだに「フェア&ラブリー」というブランド名を使用していることについて、年内に見直す予定だと述べている。

知っておくべき「カラーリズム」の歴史。

Photo: Getty Images

スキンライトニングの習慣は、古代から何らかの形で存在していたと考えられるが、古い時代の記録はほとんど残っていない。しかし16世紀になって、白人女性がより白い肌を求めて化粧品を使い始めてからの記録は多数残っている。

当時の女性は、社会的地位の高さを象徴する白い肌を手に入れることで、屋外で汗を流す労働者より格上の存在であることをアピールしようとした。イギリス女王のエリザベス1世も、ヴェネツィアン・セルース(鉛の成分を含む高級なおしろい)を愛用していたと伝えられるが、その影響で年齢を重ねるにつれて容貌が醜く衰えていったと言われている。

その後、ヴィクトリア朝時代まで使われ続けた人気のアイテムが、食べることで色白の肌になれるとされた猛毒のヒ素を含むウエハースだ。こうした商品は1920年代まで販売されていた。だがこの頃には、逆に日焼けした肌が富と社会的地位の新たなシンボルとなり、スキンライトニング系の製品は主に白人以外の人々をターゲットに広がりを見せる。そんな中で、人種差別とカラーリズムが西欧諸国の植民地支配によって拡散する。白い肌を価値あるものとする偏見は収まらず、肌の色のごくわずかな違いが、社会的・政治的に大きな意味を持つと考えられるようになったのだ。

そして今、ホワイトニング習慣の普及度は国によって異なるものの、WHOによると、世界でも最も急速に成長しているビューティ市場のひとつだという。2011年のレポートによると、肌を白くする女性の割合はアフリカで40%にも達し、なかでも最も高いナイジェリアでは77%にものぼっている。さらにトーゴ(59%)、南アフリカ(35%)、セネガル(27%)、マリ(25%)といった国々が続く。だが、世界最大のスキンホワイトニング市場を擁するのはアジア太平洋地域だ。2018年の時点で全世界の売上の54.3%を占めているというから驚きだ。特にインドでは、スキンライトニング系の製品は国内のスキンケア市場の50%を占め、その規模は年間で約4億5000万~5億3500万ドル(約478億~568億円)にも達する。

肌の漂白が与えるダメージ。

Photo: Vera Livchak/ Getty Images

スキンライトニング製品の健康被害への懸念は、そこに有害な化学物質が含まれていることに起因する。多くの国で化粧品への水銀の使用は禁じられているが、WHOの基準では、1キロあたり1ミリグラム以内であればスキンライトニング製品への水銀の使用が認められている。とはいえ、ネットショップや専門店では高濃度の水銀を含む製品が簡単に手に入るうえに、業界には統一された規制がないため、原材料欄に水銀の表記がないケースも多い。

こうした製品を使うことによる健康被害の症状としては、発疹やケロイド、腎障害、末梢神経の障害、不安感、うつ状態、精神病などが挙げられる。また、水銀にはメラニンの生成を妨げる作用があり、これにより皮膚の紫外線防御力が弱まるため、皮膚がんになるリスクも上昇する。加えて、水銀が生活排水に溶け込んで流出し、水銀が自然環境や食物連鎖に取り込まれると、人体にさらなる被害が及ぶ。特に妊婦が水銀にさらされた場合には、胎児の神経の発育に問題が生じる恐れがある。

だが、懸念すべき有毒物質は水銀だけではない。広く使われている肌の漂白成分には、ハイドロキノン、コルチコステロイド、グルタチオンなどがある。これらの薬剤は世界の大部分では使用が制限ないし禁止されているものの、こうした成分を使っている製品はいまだに存在する。ハイドロキノンの有害性は水銀にも匹敵するほどだと判明しており、ステロイド系の薬剤は、適切な量を超えて使うと肌の防護機能を損ない、ステロイドへの耐性が生まれる。さらにグルタチオンは肌の漂白成分として認可を受けておらず、その効果も科学的に証明されていないため、多くの健康上のリスクをはらんでいる。

仕事、結婚、成功という巨大な壁。

肌の漂白にはこれだけの危険性があるとされているにもかかわらず、この習慣から抜け出せない人は多い。その背景には、さらに大きな社会的問題が存在する。多くの人にとって、肌の漂白は浅黒い肌を差別する社会に適応するための懸命な努力だ。できるだけ多くのチャンスを得たいと願う人たちにとって、社会的地位向上への欲求は、肌の漂白による健康リスクへの心配を上回るというわけだ。

イギリス生まれのナイジェリア人女優、ビヴァリー・ナヤは、自らが製作し、2019年にNetflixで配信されたドキュメンタリー『Skin(原題)』でこの問題について考察している。結婚にあまりに大きな価値が置かれている社会からの圧力により、多くの女性が肌の漂白を選ぶと彼女は分析する。

「浅黒い肌の女性は、このままではいい結婚相手は見つからず、仕事での成功も望めないと思い込まされています。成功しなければ、男性受けの良い女性にならなければ、というプレッシャーから漂白に手を出すのです」

白肌信仰から解放されるには? 

Photo: Getty Images

しかし今、スキンライトニングの是非を問う議論は一気に盛り上がりを見せつつある。この勢いは、社会に大きな変化をもたらすドライブとなる。ナヤによれば、『Skin』の公開をきっかけとして、ナイジェリアでは肌の漂白に関する議論が始まったという。カラーリズムという言葉もほとんど知られておらず、反対の声を上げるべき問題であることにすら気づかれていない状況から、徐々に変化が見られているという。

スキンライトニングの習慣や化学物質の使用に反対するミネソタ州のNPO「ザ・ビューティウェル・プロジェクト」の事務局長でアクティビストのアミラ・アダウェは、肌を漂白する一人ひとりの女性だけでなく、社会全体の意識変革が必要で、さらには政府が国民を守る責任を負うべきだと訴える。

また、法制度を含む政策の変更も、各ブランドに変革を迫っている。この10年間で、多くの政府がスキンライトニング系の製品の販売禁止や規制強化を打ち出した。コートジボワールは2015年、ガーナは2016年、ルワンダは2019年に規制を導入している。こうした改革は、周囲の国々だけでなく世界レベルで波及効果をもたらしている。

美の基準は一人ひとり異なるはずだ。

さらに、肌に対する社会通念を変える必要もある。そのためには、メディアでの一般的な「美」の基準も見直されるべきだろう。インドでは2014年に、肌の色に基づいた差別的な内容の広告が禁じられた。それでも、白い肌こそ美しいとする偏見は、広告に用いられる肌の色に多様性が見られないというような目立たないかたちで、社会に根を張っている。多様性がさまざまな媒体で表現されることは、特に次の世代にとって重要だ。ナヤは、子どもたちがまだ幼いうちに黒い肌は美しいと教え、大人になるまでに自信をつけてもらうことが大切だと提言する。

社会に変化を起こすためには、白い肌への信仰によって人々が負った心の傷を癒やすことも不可欠だと、アクティビストたちは口をそろえる。アダウェは言う。

「この問題に関してコミュニティごとに教育を行うならば、明確な意図を持って歴史を紐解きながら、人々に力を与えるものにすべきです。植民地支配の影響を伝えるなかで、そのころの価値観に縛られている自分を解放する必要性に気づいてもらいたい」

エマヌエルも、各ブランドには偏見がもたらしたマイナスの影響をプラスに変える責任があると指摘する。

「『美』という言葉の意味も見直しが必要です。人の外見にあまりに大きな価値が置かれていること自体が問題なのです。美とは一人ひとりが持つ、かけがえのない価値を称えるものであるべきで、姿形やサイズ、肌の色には関係はないのですから」

Text: Marta Sundac

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