Thursday, March 23, 2023

世界初の持続性GIP/GLP-1受容体作動薬 - 日経メディカル

 2023年3月15日、糖尿病治療薬チルゼパチド(商品名マンジャロ皮下注2.5mgアテオス、同皮下注5mgアテオス、同皮下注7.5mgアテオス、同皮下注10mgアテオス、同皮下注12.5mgアテオス、同皮下注15mgアテオス)が薬価収載された。同薬は、22年9月に製造販売が承認されており、2.5mgおよび5mg製剤は23年4月18日、その他の規格は6月12日に発売が予定されている。適応は「2型糖尿病」、用法用量は「維持用量として週1回5mgを皮下注。ただし、週1回2.5mgから開始し、4週間投与した後、週1回5mgに増量。なお、患者の状態により適宜増減するが、週1回5mgで効果不十分な場合は、4週間以上の間隔で2.5mgずつ増量し、最大用量は週1回15mgまで」となっている。

 糖尿病は、インスリン作用不足による慢性の高血糖状態を主徴とする代謝疾患群であり、1型糖尿病と2型糖尿病に大別される。患者の90%を占める2型糖尿病は、インスリン分泌低下やインスリン抵抗性を来す素因を含む複数の遺伝因子に、過食(特に高脂肪食)、運動不足、肥満、ストレスなどの環境因子および加齢が加わり発症する。そして生活習慣や社会環境の変化に伴い、患者数は年々増加傾向にある。進行性の代謝疾患である2型糖尿病では、ライフスタイルの改善(運動療法や食事療法を含む)と薬物療法の組み合わせによる段階的な治療アプローチが必要とされている。

 近年、薬物療法においては、スルホニル尿素(SU)薬などの他、ナトリウム・グルコース共輸送体(SGLT)2阻害薬や、インクレチン関連薬のGLP-1受容体作動薬、ジペプチジルペプチダーゼ(DPP)4阻害薬といった新たな作用機序を有した薬剤の開発、承認が進み治療効果も飛躍的に向上してきた。

 中でも、インクレチン関連薬に関しては、インスリン以外にも食事の摂取などにより消化管内分泌細胞から分泌され、インスリン分泌を促進する「インクレチン」と呼ばれる消化管ホルモンが血糖降下作用に大きく関与していることが明らかになったことで開発された薬剤である。このインクレチンにはGLP(グルカゴン様ペプチド)-1やGIP(グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド)が確認されており、いずれも血糖値が高い場合にインスリン分泌を増強するが、血糖値が正常あるいは低い場合にはインスリンを増強しないという血糖コントロール作用を有し、さらに、GLP-1はグルカゴン分泌抑制や胃内容物排出遅延を介して食後血糖を低下させる作用も確認されている。

 チルゼパチドは、GIPとGLP-1の2つの受容体に単一分子として作用する世界初の持続性GIP/GLP-1受容体作動薬である。具体的にはGIP受容体およびGLP-1受容体に結合して活性化することで、グルコース濃度依存的にインスリン分泌を促進させ、空腹時および食後グルコース濃度を低下させることにより、血糖コントロールを改善する。また同薬は、39個のアミノ酸を含む合成ペプチドで、構造はGIPのアミノ酸配列から設計されており、C20脂肪酸側鎖を付加することで内因性アルブミンへの結合性を高めて消失半減期を延長した週1回投与製剤となっている。さらに、製剤学的特性として注入器(オートインジェクター)の内部に1回分(0.5mL)の薬液が充填されたプレフィルドシリンジをあらかじめ装填したコンビネーション製品(キット製品)であり、投与時の薬剤調製が不要となっている。

 2型糖尿病患者を対象とした国内第III相試験(GPGO試験[単独療法長期投与試験]およびGPGP試験[併用療法長期投与試験])ならびに日本を含む国際共同第III相試験(GPGK試験[単独療法試験]およびGPGI試験[インスリン併用療法試験])において、同薬の有効性および安全性が確認された。海外では23年2月時点、欧米やアラブ首長国連邦で承認されている。

 副作用として、主なものは悪心、嘔吐、下痢、便秘、腹痛、消化不良、食欲減退(各5%以上)などであり、重大なものは急性膵炎、胆管炎(各0.1%未満)が報告されており、低血糖、胆嚢炎、胆汁うっ滞性黄疸の可能性があるので十分注意する必要がある。

 薬剤使用に際しては、下記の事項についても留意しておかなければならない。

●週1回投与の薬剤であり、同一曜日に投与すること

●投与を忘れた場合は、次回投与までの期間が3日間(72時間)以上であれば、気づいた時点で投与し、その後はあらかじめ定められた曜日に投与すること。次回投与までの期間が3日間(72時間)未満であれば投与せず、次回投与の定められた曜日に投与すること。なお、週1回投与の曜日を変更する必要がある場合は、前回投与から少なくとも3日間(72時間)以上間隔を空けること

●胃腸障害等の発現により忍容性が得られない患者では減量または漸増の延期を考慮すること

●医薬品リスク管理計画書(RMP)では、重要な潜在的リスクとして「急性膵炎」「甲状腺C細胞腫瘍」「膵癌」「体重減少に関連する安全性」「心血管系リスクへの影響」「糖尿病網膜症」「急性胆道系疾患」「インスリン中止に伴う糖尿病性ケトアシドーシスを含む高血糖」「腸閉塞」が挙げられている

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