現行の市場実勢価格加重平均調整幅方式(調整幅方式)は、バルクライン方式(1951~91年)、加重平均値一定幅方式(R幅方式、1992~99年)を経て2000年に導入された。R幅方式では、個々の取引や銘柄で大きな薬価差が生じる可能性があるとの指摘を踏まえ、現行の「調整幅2%」が導入された。一方で、R幅方式に含まれているとされていた「薬剤管理コスト」は中医協で、「既存の診療報酬と整合性を図りつつ、薬価改定ルールの見直しと並行して、その必要性、具体的方法についてさらに検討する」とされたが、その後結論は出ていない状況にある。
◎薬価差額全体の6割超が薬局で発生 ボランタリーチェーンでのベンチマーク交渉も常態化
薬価制度の変遷に伴って流通実態も変化してきた。現行では「値引補償制度」から仕切価制に移行。ただ、仕切価が納入価よりも高い「一次売差マイナス」が発生。卸の利益はリベートやアローアンスで補填されている状況にあると厚労省は説明した。薬価差についての状況も、これに伴って変化してきた。医薬分業の進展に伴い、医薬品卸の販売先が病院・診療所から薬局に移行。乖離率も薬局で高い傾向にあり、薬価差額全体の6割超が薬局で発生しているとのデータを提示。医療機関のなかでも、「200床以上の病院」薬局のなかでも、「20店舗以上の調剤チェーン」は相対的に薬価差が大きく、施設による差がある状況も示された。共同購入組織や価格交渉代行(ボランタリーチェーン)を通した値引き交渉が行われており、ベンチマークを用いた交渉が顕著になっているとした。
厚労省は薬価差について、①取引条件の違いから必然的に発生するもの(取引量の多寡、配送コストの地域差)、②薬価差を得ることを目的とした値下げ交渉や販路拡大のための値下げ販売により発生するもの-と整理。「薬価差の発生は避けられない」としたうえで、「許容される合理的な薬価差を超えて過度な薬価差が発生している場合には、適切な市場流通の確保という観点から一定の是正を求めていくことは考えられる」と指摘した。
◎香取構成員 薬局に「医薬品の管理コスト以外は薬価差を容認する理由はない」
香取構成員は、医薬品の納入額の割合が病院・診療所で減少していることや、薬価差の6割超が薬局で発生しているとのデータに触れながら、「かつて処方権のある医療機関に薬価差があることが処方誘引になって、クスリ漬け医療が起こるとか問題もあったわけだが、いまや薬局に薬価差がでている」と指摘。チェーン薬局の台頭やボランタリーチェーンにより、薬局のバイイングパワーが強まっているとして、「そういう形の取引が本当にこの分野で行われることを医療保険政策上、あるいは薬事行政上、是とするのかが問われることになるのではないか。根本的なところから色々議論した方がいいのではないか」と主張した。
そのうえで、薬局について、「基本的に処方権がなく、調剤報酬が別についていることから考えれば本来、実費コストとして医薬品の管理コストなどを除けば、実は薬価差を求めて、そこから収益が出ることを容認する理由はないはずだ」との見解を表明した。薬価は一律の価格であることが望ましいとしたうえで、「価格そのものを変えることは恐らく難しいので、別の形で償還させるようなルールを作る。「調剤報酬を削るというよりは、薬価差マージンそのものをどう考えるか。別の形でそのルールを外に入れるとか、何かそういうサブシステムを入れ込んでいくことで、全体を透明化するということがたぶん必要だ」と述べた。
◎坂巻構成員 後発品選択の裁量権は薬局に 「特許切れ品の薬局での保険償還は別建ても」
坂巻弘之構成員(神奈川県立保健福祉大大学院教授)は、薬局について「処方箋は確かにないが、調剤の裁量権はある。特許切れ医薬品に関しては処方箋に変更不可のチェックなければ、どのジェネリックを使うかについては薬局で決めることができる」と説明。「場合によっては最も薬価差益の大きいジェネリックを採用して調剤することで、言い方が悪いがその薬価差益分を稼いでいる。これは経営原資なのかというと、やっぱり現実的には薬局においては経営原資だと思う」との見解を示した。医療機関においては薬価差益が縮小してきているとしたうえで、「薬局に関してはまだ問題が続いているのではないかというのは、現実認識として、そんなに間違っていないのではないかと思っている」と続け、「薬局における特許切れ医薬品の薬局における薬価償還の仕方というのは別に考えてもいいだろう」との見解を示した。
◎成川構成員 単品単価促進へ未妥結減算視野参考に「政策誘導の必要性も」
成川衛構成員(北里大薬学部教授)は、適正な市場競争であれば、競争は“是”とする立場と表明したうえで、「やはりベースの競争がちゃんと成されるかが重要で、やはり単価取引だと思っている」との見解を示した。そのうえで、20店舗以上のチェーン薬局・200床以上の病院では総価取引の割合が高いとのデータに触れ、「単品単価取引が物理的に無理なのではないかと思った時期もあったが、関係者が理解して努力すればできるというものであれば、そこを促すようなインセンティブなり、逆に総価取引のディスインセンティブなりというものを考える術があるのかなと思っている」と述べた。未妥結・仮納入を是正する目的で導入された未妥結減算制度を引き合いに、「少し政策誘導するということを考えてもいいのでは」と述べた。
◎リベート・アローアンス残る流通は「前近代的」 坂巻構成員「近代化と薬価差是正は切り離せない」
一方で、薬価制度が変化するなかで、流通が実態として変化していないことに対する課題認識も示された。坂巻構成員は、「昔の値引補償制度の理念が全く変わらず、リベート・アローアンスみたいなものが導入されている」と指摘。「価格(薬価)が下がっても、卸の経営が成り立つ。はっきり言えば、前近代的な価格形成、流通の仕組みが理念として残っている。他にも販社の存在などある。こういった長い間、厚労省として医薬品流通を近代化すべきということのメッセージに弱いところがったのではないか」と指摘。「最初に今の医薬品流通のあり方の前近代性についてもう1回考え直さなければいけないと思っている」、「流通の近代化ということと、行き過ぎた薬価差の是正ということは、おそらく切り離せないのではないか」と強調した。
◎香取構成員 値引補償の時代に「戻っている」 流通近代化に「薬価差制度」の変革求める
香取構成員も、「値引補償であった建値制を仕切価制に切り替えることになったが、リベートやアローアンスで動いているというのは、言ってみれば元に戻っているわけだ」と指摘。「流通の形を近代化していく、綺麗にしていくことを議論するときには、前提となっている取引の形を規定しているいまの薬価制度を変えない限りは本質的な物事は変わらないということになるのではないか」と述べた。
◎調整幅 菅原構成員「地域差指数や薬効、剤形」などの実態に合わせて整理を
調整幅についても議論の俎上にのぼった。調整幅については、「市場原理下で発生する配送効率の地域差による価格のバラツキを吸収している」とされている。厚労省は、オーファンドラッグや再生医療等製品などでは患者や使用される医療機関などが限定され、価格のバラツキが出にくくなると考えられると説明。一方で、後発品では品目数の増加や使用浸透でバラツキが増えているほか、調剤チェーンやボランタリーチェーンなどが台頭し、取引条件も多様化してきていると説明。こうした変化を踏まえて、一律2%とされている意義を論点にあげた。
菅原琢磨構成員(法政大経済学部教授)は、都道府県別の医薬品卸の販管費の比率についてのデータを踏まえ、「現実には、各都道府県別、地域別の配送コストの差は明確に把握できている。これを一律で全部やるということが妥当なのか。コストの把握がある程度できるのであれば、実態に合わせた形での調整幅の付け方というのを考えるべきではないか」と述べた。そのうえで、「地域差指数や薬効、剤形別、あるいは不採算の地域についてもう少し把握したうえで、それに実態を合わせた形での調整幅の考え方を整理されてはどうか」と述べた。
◎三村構成員 過疎地などに「特別な補填」で調整幅の意義が活きるのでは
三村優美子構成員(青山学院大名誉教授)も、「最近では、特に過疎地であるとか物流効率が悪いところに対してどうするかという議論が出てきている。そのあたりをきちんと整理しながら、それに対しては特別な補填するためのものが置かれているということを整理していけば、調整幅という意義がもっと活きるのではないか。元々、供給安定のためのというこの言葉をもう少し具体的に、実践的につなげていくような方向性で整理されればよろしいのではないか」と述べた。
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