清水建設（株）＜社長 井上和幸＞はこのほど、高エネルギー放射線医療施設の遮蔽設計時に必要な放射線の遮蔽性能評価を、一般の設計者でも簡易に行えるアプリ「SC-HoRS」を開発しました。
本アプリでは、独自の簡易式自動計算機能により、放射線遮蔽室と放射線治療装置の仕様を入力するだけで、放射線の遮蔽性能評価が可能になります。同評価には、複雑で高度な計算が必要であるため、これまでは専門家による相当の検討期間を要していましたが、本アプリでは、一般の設計者でも短時間で行うことができます。
高齢化の進展や食生活の変化により、がんや脳疾患の罹患者数が増大する中、身体への負担が少ない放射線治療が普及しています。病院の新設や改修の際には放射線治療装置の導入が標準化しつつあり、放射線遮蔽室へのニーズが高まっています。放射線遮蔽室は、管理区域外への放射線漏洩を基準値以下に抑えるため、コンクリートと鉄板を併用した厚さ1mを超える遮蔽壁で覆う必要があります。このため、遮蔽設計は、部屋の形状や装置の性能などに対応した、複雑な計算による設計が必要でした。簡易式の計算手法もありますが、過剰な安全裕度を見込んで遮蔽壁の壁厚や鉄板量を設定する必要が生じ、建設コストが膨らむ要因となっていました。
そこで当社は、遮蔽室の形状や装置の性能を入力するだけで放射線遮蔽性能を自動計算し、最適設計が可能になるアプリ「SC-HoRS」を開発しました。これまでの病院施設設計の知見や既存の手法を分析し、合理的な設計が可能になる独自の簡易式自動計算手法を確立。これを様々な端末での使用が可能になるアプリとしてソフトを構築しました。
本アプリを活用することで、専門家による最終的な総合評価が必要ではあるものの、これまで専門家での計算によって数週間かかっていた評価が、一般の設計者でも数時間で可能になります。また、安全性を確保した上で、遮蔽壁の鉄板量や壁厚のスリム化を図ることができるため、従来手法と比べて、建設コストを10～20％程度低減できます。これまでは困難だった複雑な形状の施設設計やレイアウト変更時における治療装置の配置検討等にも柔軟に対応することが可能になります。
米国では、がん患者の約70％が放射線治療を受療しています。一方、日本では依然として30％程度となっています。当社はSC-HoRSを武器に、今後も需要が見込まれる放射線医療施設の建設受注拡大を目指す考えです。
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