某月某日、吾輩は犬である。人間の気持ちがわかる。
パパさんは決して悪い人間ではないが、多少、自意識過剰なところがある。かなり、ある。彼は犬を育てたこともないくせに、自分は犬の気持ちがわかる、と思い込んでいる節がある。けれども、犬のぼくからすると、パパさんの育て方は素人も甚だしい。やり過ぎ、思い込みも激し過ぎて、時々、忠告したくなる場面もあるのだけれど、でも、人間というのはそもそも自意識だけじゃなく、プライドもやたら高い生き物だから、そこをへし折るのは気の毒だ。ぼくは「パパさんに守られて幸せだよ」という顔をしてパパさんを応援している。パパさんへは恩義だけでなく、忠義も敬意も有り余るほどあるのは事実なので、パパさんを傷つけたくないからね。でも、犬の習性というか、犬にも犬の生き方があるので、パパさんの思い込みについていくのがちょっと大変な時もあるんだ。
パパさんは、散歩は「25分」と決め込んでいるけれど、その意味がわからない。ぼくの年齢のミニチュアダックスフンドの平均的な散歩時間だとぶつぶつ言っていたけど、ぼくはもうちょっと散歩がしたい。
パパさん優しい時はとっても優しいんだけど、ちょっと機嫌が悪い時は、「なにしてんのー、ちょっと待ちなさいよ。このバカったれがァ」と感情的になるのやめてくれない?
パパさんは一日中べったりぼくに張り付いて監視しているのだけど、「それダメ、あ、それもダメ、三四郎、全然、ダメだから」あの、たまには一人の時間がほしい・・・。
パパさんは床に這いつくばって、変な匂いのする布で床をごしごし磨いているのだけど、もうちょっと汚くてもぼくは平気だし、それにその薬の匂いがめっちゃ嫌なんだけど。
パパさん、ぼくとの2ショット撮りすぎじゃない?
パパさん、ロボット掃除機けしかけるのやめて!!!
パパさん、ぼくが吠えていると「うるさいな!」と怒るけど、ぼくが吠えてる意味がちゃんとあるからね。うんちしたよ、とか、おなかすいたよ、とか、遊んでほしいよ、とか・・・。だから、吠えてる意味も考えてみてね。
パパさんはそもそも犬をペットだと思い込んでいるけど、ぼくは獣なんで、その辺の心理もちょっとだけ理解してもらえたらなァ、と思うんですけど。
パパさんはぼくが床にうんちをしちゃうと「0点だ、君は0点だ」とか言って怒るし、ぼくがシートにちゃんと出来た時は「100点、すごーい、サンシー」と喜んでいるので、可愛いんだけど、ぼくは点数で評価されたくはありません・・・。
それから、パパさん、ぼくはまだ赤ちゃんなので、出来なくて当然なんだけど・・・・。粗相もぼくの仕事だよ。
ぼくを大切に思って一生懸命、育ててくれているのはわかるのだけど、人間だっていろんな人間がいるのと同じように、犬にもいろんな犬がいて、ぼくにはぼくなりの生き方があるから、教科書通りにはいかないし、そんなに肩ひじ張って、ぼくの面倒をみようとすると絶対疲れるから、もっとリラックスして生きてくれたらなァ、と思う犬の心理、その辺のところ、もうちょっと信頼してもらえたら嬉しいかも・・・。
そういえば、「オイデ」という日本語は呼ばれているというのがわかったから、走っていってあげるとパパさん喜んでくれるので、「オイデ」の意味は分かった気がする。
ごはんの前に「マテ」と言われることで待つことも覚えたし、「オスワリ」はお尻を下ろして、しゃがむことだとわかったし、それが出来ると、「ブラボー」と拍手喝采、父ちゃんダンスが見れるので、ぼくがパパさんを喜ばせたのがわかって、賢くなった気もする。犬は確かに人間に褒められたいところはあるから、その方法はいいと思う。
で、最近は、「オテ」というのがスタートして、パパさんが手を出すので、ぼくがその手に自分の手を置いたら、もう、パパさん、飛び上がって喜んでいたので、「オテ」というのが出来るようになった。
でも、ぼくはパパさんの表情からその言葉を推察しているので、パパさんがオーバーにアクションしてくれるのはわかりやすくて有難い。パパさんの気持ちもよくわかるようになってきた。ぼくはぼくなりにパパさんという人間がどういう人か、どんな人か知っているんだよ。そうやって、ぼくらは人間を知っていく・・・。
今日は機嫌が悪いな、とか、今日はお疲れだな、とか、今日は元気いっぱいだね、とか、ぼくはぼくなりにパパさんの心のコンディションを見ているからね。だから、もうちょっと根を詰めないで、リラックスしてぼくを育ててくれたらいいのに。
それから、パパさんは気づいていないかもしれないけれど、犬は人間の乱れた心の波長を穏やかに整える力があるから、ちょっとイライラする時はぼくをおなかの上に載せて、休んだらいいんだよ。自然とエネルギーをぼくらは交換しあっていくんだから・・・。
ま、でも、素人のパパさんはパパさんだから、そのままでも、いいよ。ぼくはまだ赤ちゃんだから、一年ちょっとは大変かもしれないけれど、ものすごい勢いで成長をしているからね、そのうち、手もかからなくなり、ぼくはパパさんの生活の一部になるよ。
ぼくの存在はパパさんの日常と同化して、生活の一部になるから、あと少し、ぼくも頑張るから、パパさん、無理しない程度に頑張ってください。
つづく。
からの記事と詳細 ( 三四郎日記「パパさんが分かっていない犬の気持ちについて。第7話」 - Design Stories )
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