Sunday, July 26, 2020

デジタル課税 公平な制度作りへ対立避けよ - 読売新聞

 巨大IT企業に適切な税負担を求めるデジタル課税の議論が難航している。時代の変化に即した公平なルール作りへ、各国が協調するべきだ。

 グーグルやアマゾンなど「GAFA」と呼ばれる米巨大IT企業は、国境を越えてインターネット通販や検索サービス、動画配信などのビジネスを展開している。

 現在の税制では原則、企業が工場や事業所などの拠点を持たなければ、国は法人税を課税できない。ネット経由で日本の消費者にモノやサービスが提供されても、日本では十分な税の徴収が難しい。

 GAFAに対しては、法人税率が低い国に知的財産権を移すなどして、納税を回避しているとの批判が世界で高まっている。

 ネット通販や検索は、今や生活の重要インフラだ。巨額の利益を得るIT企業には、実態に見合う納税を求める必要がある。

 懸念されるのは、国際的なルール作りを巡り、各国の対立が深まっていることだ。

 主要20か国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議は今月、デジタル課税について協議したが、進展はなかった。目標とする年内の最終合意が危ぶまれている。

 G20とともに論議のまとめ役となる経済協力開発機構(OECD)は1月、拠点がなくても売上高に応じて各国が企業に税を課せる仕組みを導入することで、関係国が大枠合意したと発表していた。

 ところが、自国企業を守りたい米トランプ政権は、新制度に従うかどうか企業が選択できるようにする案を主張したという。

 6月には、論議の中断を提案した。新型コロナウイルス対策を優先すべきだとの理由だが、独自課税を検討する英仏などの欧州諸国に圧力をかける狙いがあるのだろう。ルール作りを軽視するトランプ政権の姿勢は容認できない。

 税逃れには米国内でも不満の声が強い。公平な課税制度は米国にも利益をもたらすはずだ。

 企業に選択させるという米国案に、欧州などが「課税が骨抜きになる」と反発したのは当然である。欧州に加え、ブラジルなどの新興国も独自の課税に動いた。

 米国は制裁関税の発動をちらつかせており、経済摩擦に発展すれば、コロナ禍に苦しむ世界経済に一段の打撃を与える。欧州や新興国も、自国優先の課税より国際協調に注力してもらいたい。

 協議が決裂した場合、日本も得られるはずの税収を失うことになろう。政府は、議論の進展に力を尽くさねばならない。

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