Friday, May 26, 2023

人気ドラマ『メディア王』が教えてくれる交渉の落とし穴 リーダー ... - DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー

人気ドラマ『メディア王』が教えてくれる交渉の落とし穴

Claudette Barius/HBO

サマリー:米国の人気ドラマ『メディア王~華麗なる一族~』(原題:Succession)は、架空の巨大国際メディア企業の富豪一族を描いた物語であり、現実のビジネスリーダーが犯しがちで典型的な間違いを浮き彫りにしている。本稿... もっと見るでは、最新のシリーズ4で描かれている企業買収における「交渉」での過ちを取り上げ、そこから得られる教訓を5つ紹介する。 閉じる

ドラマ『メディア王』が浮き彫りにする
リーダーが犯しがちな間違い

 米国テレビ局HBOのヒットシリーズ『メディア王~華麗なる一族~』(原題はSuccession。『キング・オブ・メディア』『サクセッション』の邦題でも配信された)の続編に、多くのテレビファンが沸いている。

 ドラマとはいえ、企業でよく見られる複雑な人間関係、権力闘争、業界用語などを取り上げている。2023年3月26日に放送されたシーズン4の第1話では、企業経営者が利害関係の大きい交渉の場で陥りがちな落とし穴について、内省する場面が描かれた。交渉は、現実の世界でもことごとくうまくいかないものである。

 このドラマは、架空の巨大国際メディアエンタテインメント企業、ウェイスター・ロイコを支える富豪の一族、ロイ家の物語である。家長であるローガン・ロイは、冷酷な実業家として恐れられているが、健康面に問題を抱えている。4人の子どもたち、コナー、ケンダル、ローマン、シヴォーン(シヴ)は、会社の将来に関して、それぞれに野心と目論見を持っている。また、ウェイスター・ロイコと金銭的な利害関係もある。シリーズが進むにつれ、社内外の危機がメディア帝国の安定と未来を脅かすようになる。

 シーズン4の第1話では、権力に執着するローガンが、デジタルメディア企業のゴージョーに自社を買収してもらうよう交渉している。その一方で、彼はウェイスターの経営権を下の3人の子どもたちから取り上げ、シーズン2から目をつけていた左派系メディアコングロマリット、ピアース・グローバル・メディア(PGM)の買収に狙いを定めている。会社の評価額は大幅に下がっていたが、PGMオーナーのナン・ピアースは売却を熱望している。

 ローガンにとって最大の障害は価格ではなく、家族である。ケンダル、ローマン、シヴの3人は手を組み、ウェイスターのゴージョーへの売却で現金化される持ち株を元手に、父に対抗してPGM買収の入札を行う。その決断によって、カネと意地の激しい戦いの火ぶたが切られる。

 PGMをめぐって父ローガンと戦うと決めた兄妹は、すぐにピアースの関係者と面会し、同社はロイ家の内紛に乗じて売却価格をつり上げる。数回の金額提示を受けたのち、ナンはローガンに反論の機会を与えることなく、100億ドルで兄妹に売却することに同意する。自分の子どもたちに入札で負けるのは、ローガンにとって受け入れがたいことだった。

 ちなみに、PGMとの取引は兄妹が保有するウェイスターの株式を現金化することを条件にしているため、まだ成立したわけではない。それでもこの勝負は、現実のビジネスリーダーが大きなリスクを伴う状況で犯しがちな典型的な間違いを浮き彫りにしている。釈迦に説法だが、以下に簡単に教訓をまとめてみた。

理由を説明できないオファーはしない

 ローガン・ロイは、競合相手となる入札者(自分の子どもたち)の存在を知った時、アドバイザーたちから「あなたで確定のはず」と告げられ、自分の提示額に自信を持った。そのため、ナン・ピアースから確たる数字を求める電話がかかってくると、それまで落とし所と考えていた70億ドルを60億ドルに下げて提示する。

 ここでは、ローガンの慢心がじゃまをしている。人は自信過剰になると、交渉相手を過小評価し、非現実的な要求や不当に低い金額を提示するようになる。その結果、相手が機嫌を損ねれば、交渉は行き詰まる。また、自信過剰な人は、潜在的なリスクや自分の立場の弱点を見落とすなど、準備不足のまま交渉に臨みがちである。その結果、過度に攻撃的になったり、相手の懸念を軽んじたりして、関係を悪化させ、相互に利益のある合意に至ることをいっそう難しくしてしまうのである。

 ローガンが行った60億ドルの提示には、もう一つ問題がある。それは、強気ともいえる低い金額であり、ナンにその理由や妥当性を説明しようともしなかった。交渉で提案の理由を説明する人は、説明しない人よりも合意に達する可能性が高いことが研究で示されている。筋の通った説得力のある説明には、その提案が考え抜かれた正当なものであることを相手に示す効果がある。

提案をフレーミングする

 ケンダル、ローマン、シヴの3人がナン・ピアースに会いにいき、オファーを出す気があることを伝えると、ナンはすぐに、すでに好条件のオファーを受けているから、せっかく来てくれたが無駄足だったと告げる。ナンは、交渉におけるフレーミングの力、つまりオファーの提示の仕方によって、そのオファーの価値、ひいては交渉の結果が左右されることをよく理解しているようだ。ナンは、もし本当に自分の気を引きたいのなら、ローガンのオファーに勝たなければならない、という明確なシグナルを兄妹に送っていたのである。

 交渉では、自分の提案の利点を強調し、欠点を最小化するような方法で提案をフレーミングすると、提案が受け入れられる可能性が高くなる。ケンダル、ローマン、シヴの3人も、フレーミングを利用して、自分たちの提案のプラス面を強調し、マイナス面を目立たなくできたはずである。一般的に、買い手も売り手も、自分の主張を慎重にフレーミングすることで、交渉の力学に強力な影響を与えることができる。

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