Friday, July 24, 2020

社説 ワクチンの争奪 独占と実用優先の危うさ - 信濃毎日新聞

 朗報と受け取るにはまだ課題が多い。世界で急速に開発が進む新型コロナウイルス感染症のワクチンである。

 欧米の複数の研究で臨床試験(治験)が最終段階まで進み、早ければ年内の実用化が見えてきた。

 一方で先進各国によるワクチン獲得の動きが激しい。開発企業に巨額の資金を提供。その見返りとして自国民用に十分な接種回数分をあらかじめ確保しておく。

 世界保健機関(WHO)によると現在、世界で約20の候補ワクチンの治験が進む。このうち英国の大学と製薬大手グループは今秋の供給開始を表明した。米国のバイテク企業は約3万人を対象に最終治験を7月中に始めるとする。

 これら開発側にいち早く資金の提供を決めたのが米国だ。対抗して欧州各国も資金拠出を打ち出し、供給量の確保を急ぐ。

 日本も英国の製薬大手と供給に向けて交渉を続けている。8月にも将来の日本国内での供給を前提とした治験に入るという。

 先進国による獲得競争を、公衆衛生の専門家は「ワクチン・ナショナリズム」と批判する。有望企業を囲い込んで独占すれば、価格の高騰も招き、途上国に行き渡らなくなる恐れがある。

 安価なワクチンが入手できるようにならなければ、世界中の感染を抑えることはできない。

 日本政府は欧州連合(EU)などと資金を出し合い、ワクチンを買い付ける枠組みづくりを検討。特許権を国際的に共有する仕組みも提案しているが、開発企業の同意を得られるかは不透明だ。

 異例の速さで開発が進むワクチンに対し、効能と安全性にも注視していく必要がある。

 専門家には「先行している技術は、実用化された例のないものが多い」との指摘がある。

 有効性が低い場合、接種後に体内でウイルスの増殖が進み、重症化を招く危険があるとされる。

 抗体ができても免疫機能が数カ月以内に減退する可能性がある。英国内の研究で報告された。効果が薄ければ、数カ月ごとに接種を繰り返す必要も出てくる。

 副作用による健康被害で訴訟が起きた場合、損害賠償を国が肩代わりできるよう、政府は必要な法改正の検討に入った。海外企業からの求めを受けた。

 実用化を急ぐあまり、企業の責任を免じれば、安全性が軽んじられることにならないか。

 国には安定供給に向けた国際社会への働き掛けとともに、使用への十分な見極めを求める。

(7月25日)

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