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今、最もホットなイングランド代表MF
ウェスト・ハムの試合が放送される時には、ポッドキャストやラジオ番組では決まって同じ言葉が繰り返される。
自然と話題になるのは、イングランド代表MFデクラン・ライス。決まって皆こう言うのだ。「良い選手なのは知っていたけど、ここまで良いとは気が付かなかった」
皆がライスのプレーを何試合か見れば、こういった決り文句も聞かなくなるかもしれない。毎週毎週新たな評論家がこの新たな才能に衝撃を受けていることを考えれば、こうした評判に後押しされてライスは世界有数のビッグクラブに移籍し、才能が広く知られることになるのだろう。
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そしてライス自身も、間違いなくこうした大型移籍の準備を整えている。『GOAL』の取材では、マンチェスター・ユナイテッドが長きにわたって高く評価してきたことがわかっている。エリック・テン・ハーグの監督就任以降の動向はわからないが、この評価の高さには十分な理由があるのだ。
ライスが現代最高峰のアンカーである理由
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ライスは現代的な守備的MFに求められる全てのクオリティを持ち合わせている。最先端を行く技術があり、現代プレミアリーグの戦術の中心となれるだけの力があるアンカーだ。
最も評価されているのは、ディフェンス面での卓越した技術。もちろんタックルやインターセプトに関わるスタッツは申し分ないが、特筆すべきは守備エリアの広さだ。デイヴィッド・モイーズのチームの心臓部として、ピッチ中央からサイドの深いエリア、ボックス内までありとあらゆる場面に顔出せる。こうした質の高い守備力を見逃してはならない。
ポジションに関する認知力や予測力をライスほど持ち合わせている選手はほとんどいない。この能力があるからこそイーブンの状況を嗅ぎ分け、密集したエリアでボールを奪うことができるのだ。タックルとインターセプト数の合計で、プレミアリーグ全体の4位(154回)につけている(MFの中では2位)が、守備に関わる動きの多くは統計で捉えることはできていない。ルーズボールを拾ったり、パスが通らないように進路を塞ぐ様子はこうした記録には残らないものだ。
だが彼は、単なるディフェンスリーダー以上の存在としてピッチに君臨する。中盤の底から前への推進力を生み出すことができる、稀有な能力を持ち合わせているのだ。
ファビーニョ(リヴァプール)とロドリ(マンチェスター・シティ)がこの領域でトップクラスの選手だ。可能な限りボールを前に運ぶことに長けた、6番としての新たな選手像だ。
こうしたプレーをするためには、ラインを割るようなパスを縦に供給するだけでなく、特にボールを奪った直後に相手からの強いプレッシャーにさらされながらもボールを受け、供給する力が必要になる。
ファビーニョやロドリ、そしてライスのプレーが他の選手と明確に違うのは、相手のカウンターアタックを防ぎつつ、状況を読んだヘディングやクリーンなスライディングタックルなどで、他の選手と同じ動きをしているように見えることがあっても結果としてボールを押し戻すことにつながっている点だ。
ただの「良い守備的MF」と真のエリート選手との差はここにある。特に2022年においては、この点がこれまで以上に重要になっている。
プレミアリーグでは現在、守備面でも攻撃面でもトランジションが極めて重要になっている。どのチームも高いレベルで組織化され、タイトに編成されたブロックを作る時代になった今、十分なスペースがあるのは主にボールを奪い返して選手が前に突進している時なのだ。
つまり、ボールをインターセプト→カウンタープレスを抑えることができ、数回のタッチだけでフォワードへのパスをカットできるライスのような選手がチームにいることは、極めて重要なことになる。そしてそれは、テン・ハーグがマンチェスターに導入しようとしている運動量の多いアタッキングフットボールにおいても同じことが言えるだろう。
そういった選手がどれだけ稀有で特別な存在であるか、ライスがどれほど稀有で特別な存在になったのか、これを過小評価してはならない。
実際、ライスの合計パス距離はプレミアリーグのMFの中で3位につけている(3万4187m)。これはロドリとピエール=エミール・ホイビュアに続く数値だ。
そして彼はドリブラーとしても優れた能力を持っている。ボールを保持しながらぐんぐん前に出ていき、自分でラインを破ってしまうことができる。改めて記すが、これは現代の6番に求められる重要なスキルであり、特に守備ブロックをユナイテッドが破っていくにあたってテン・ハーグが必要とする能力だろう。
今シーズンのボール保持回数はプレミアリーグで9位(1575回)につけており、ボールを保持したまま前に進んだ距離を意味する『前進距離』は4位(6315m)を誇っている。ちなみに上位の3人は皆センターバックだ。
これらの情報全てを合わせれば、ライスは守備面はもちろんのこと、パスやドリブルの能力について世界レベルのクオリティを兼ね備えたアンカーということになる。
ヨーロッパリーグで世界的名手へ
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他のクラブが興味を示していないだけでなく、マンチェスター・ユナイテッドがまだ彼を本格的にオールド・トラッフォードに招き入れようとしていないことは驚きであるとしか言いようがない。あえて記すが、ライスは成長は日に日に速度を増している。そのため、世界が彼の能力を認知するのに少し遅れが生じているのではないだろうか。
持ち運び、タッチ、ドリブルの数は年々上昇しており、今シーズンはリーグ戦6試合を残してシーズンハイを更新した。
ウェスト・ハムは5日、ヨーロッパリーグ(EL)準決勝でアイントラハト・フランクフルトとのセカンドレグを戦う。ELでさらに高みに上り詰めることになれば、ライスはさらに注目を集めることになるだろう。
彼はチームの躍進において決定的な役割を果たしてきた。モイーズの深いディフェンスラインを守り続けており、カウンターアタックにおいても多くの場合その引き金を引くのは彼だ。こういった活躍は、準々決勝で勝利したリヨン戦で顕著に見ることができた(2戦合計4-1)。
ライスは2戦を戦って8度のインターセプトを記録。特に敵地フランスで行われた試合においては2得点を決め、3-0での勝利に大きく貢献している。
このパフォーマンスによって、彼の知名度はさらに大きなものになっただろう。欧州エリートクラブのスカウトはようやく、とてつもなくエレガントで一貫性があり頭脳派のフットボーラーが、東ロンドンで育っていることを発見したのだから。
文=アレックス・ケーベル
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