IoB（行動のインターネット）とは？
IoBとは、Internet of Behavior の略で、日本語では「行動のインターネット」と呼ばれる。人間の行動に関する情報をインターネットに接続する技術のことを指す。
例えば、ウェアラブルデバイスを活用する際には、GPSから個人の位置情報や移動速度などの活用可能性が考えられ、施設内での監視カメラを用いた人流・動線データの収集も考えられる。
また、webサイトの閲覧・購入履歴など個人の行動データを収集し、そのデータを生活に活かしていくことも考えられる。近年の新型コロナウイルスのパンデミック下における、カメラを用いた体温の計測や、感染経路を把握し次の感染を防ぐための位置情報の追跡もIoBの一例である。
Internet of Bodiesとの違いは？
IoBには、「Ineternet of Bodies」という意味もある。「Internet of Bodies」は「身体のインターネット」と呼ばれ、人間の身体とインターネットを繋ぐ技術のこと。具体的には、脈拍や心拍、睡眠サイクルなどの生理的なバイオメトリクス情報の活用・取得が主に言われていることである。
同じIoBでも、身体状況のデータの取得・活用が主な目的となる「Ineternet of Bodies」と、人間の行動に関するデータを取得・活用していく「Internet of Behavior」では用いられる技術や目的が異なるため、使い方には注意が必要である。
しかし、人の振る舞いには身体の状況や健康状態も大きく影響するため「Bodies（身体）」のデータは「Behaviors（行動や振る舞い）」を左右する要素であり、強い関連性があると考えられる。
さまざまな分野でのIoB活用事例
ビジネス・ソーシャルメディア
オンライン広告は、様々な企業が顧客にアプローチするためにますます利用されるようになってきており、IoBを活用することで、自社の製品やサービスから利益を得ることができる特定の人物やグループを発見し、ターゲットとすることができる。
例えば、GoogleとFacebookは、行動データを利用して、サイト上のユーザーに広告を提供している。これにより、企業はターゲットとなる消費者と対話し、“クリック率”を通じて広告に対する消費者の行動を測定することができる。
同様に、Youtubeは行動分析学を使って、視聴者が興味のある動画やテーマだけを推奨したり、ハイライトしたりすることで、視聴者の体験を高めている。
ヘルスケア
現在、世界人口の多くが慢性疾患に苦しんでいる。
医療従事者は、患者の行動をリアルタイムでモニターすることができる。特定の薬に対する反応を理解することから、レジメン（※1）を管理することまで、医師はIoBの助けを借りて、すべてを行うことができるようになった。さらに、これらの機器は、医療従事者が容易に診断を下せるように、ユーザーの行動に基づいて洞察を与えるように訓練することができる。
※1 レジメン：がん薬物療法における抗がん薬、輸液、支持療法薬等を組み合わせた時系列的な治療計画をいう。
政府・政策立案
政府は、IoBデバイスが生成するデータを利用して、関心のある人物の行動を追跡し、災難が起こるのを回避することができる。また、国民が集団で何に関心を持っているかを把握するための調査や、大規模な集団の行動パターンを追跡して法秩序を維持することも可能である。
もちろん、過剰な規制の要素もあるが、市民のプライバシーを守るために、こうした活動を監視する委員会を設置することも可能である。
保険
自動車保険のような分野では、保険会社がIoBを使ってドライバーの行動を監視し、事故での役割を測定することで、保険会社は事故が誰の責任であるかを正しく特定することができる。 また、飲酒運転の防止や医療事故の特定などにも活用できる可能性がある。
IoBの課題とリスク
IoBの第一の課題は、事実の収集と保存の方法である。IoBは、サイバー犯罪者が利用できる巨大なデータベースである。また、非倫理的なユーザーの手にかかると、顧客に関する独占的な事実が危険にさらされる可能性がある。多くの機関や企業がこの問題に取り組み始めている。
また、プライバシーに関する懸念もある。企業が顧客の気分、行動、好き嫌いについて大量の情報を収集する場合、企業は顧客のプライバシー権を侵害する可能性がある。
このようにまだ課題の残る分野ではあるが、データ収集は正しく使えば事故を減らしたり、適切な医療を受けられる人を増やしたりできる可能性もある。IoBの今後の展開に期待したい。
【参照サイト】Introduction to Internet of Behaviour（IoB）
【参照サイト】The Internet of Behaviours-A Paradigm Shift-
【参照サイト】Benefits and Risks of Internet of Behavior
【参照サイト】大津赤十字病院 がん化学療法のレジメン
用語の一覧
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