新型コロナウイルス対策の強化を目的に、新たな罰則を導入した感染症法と特別措置法の改正法が施行された。都道府県知事が患者や事業者に命令を出し、従わない場合は行政罰を科すことができる。
本紙はこれまで繰り返し主張してきたように、コロナ対策には罰則でなく、国民の理解と協力を促す政策が必要と考える。施行に併せて政府が改定した基本的対処方針は、罰則の適用について「人権に十分配慮し、慎重に行う」とするが、要件は曖昧なままだ。最終的には法の再改正を求めたいが、最低限、恣意[しい]的な運用を防ぐ仕組みが必要だ。
改正法は、わずか4日間の国会審議でスピード成立。議論の余地を残し、周知も不十分なまま、10日後に施行された。
改正感染症法は、正当な理由なく入院を拒否した感染者に過料を科すことができる。正当な理由の具体例は、厚生労働省が施行直前に公表。「他の病気治療をしている」「患者本人やその家族に必要な介護や保育などの福祉サービスを確保できない」などを挙げた。
感染者の個別事情に柔軟に対応する運用を求めたいが、そもそも入院を望む人も自宅療養を強いられているような現状で、罰則付きで入院を強制する法内容自体が矛盾している。国民にそのような義務を課すのなら、感染症法が、国と地方公共団体に課している患者への良質な医療の提供措置を、現行の努力義務から明確に義務とすべきだろう。
改正特措法は、緊急事態宣言の前段階で対策を強化する「まん延防止等重点措置」を新設。知事の命令を拒んだ事業者への罰則が導入されたものの、命令の詳細は法律で定めず、行政が決める政令に丸投げされた。これでは立法府の役割を果たしたとは言えまい。
加えて緊急事態宣言は国会への報告が義務付けられているのに対し、重点措置は付帯決議に「速やかに報告する」と盛り込まれただけだ。適用基準を詳細に定めるとともに、宣言と同様の事前報告に改めるべきではないか。
今回の罰則導入は、全国知事会の要望を受け実現した。蒲島郁夫知事は、改正法成立後の定例記者会見で「一貫して慎重に運用すべきだとの姿勢をとってきた」と説明。「多くの知事も罰則は最後の最後と考えている」と強調した。
一方で「感染拡大初期の混乱の中で都市部から強制力を求める声が上がり、大きな流れができた」とも説明した。緊急時には強権的な手法に流れかねないことを自覚した上で、第三者による監視の仕組みも必要ではないか。
国は運用に当たって専門家の意見も踏まえるよう求めているが、熊本県の場合、ハンセン病問題の課題解決策などを検討してきた「県ハンセン病問題啓発推進委員会」を活用する方法もあろう。深刻な人権侵害と偏見差別をもたらしたハンセン病問題の教訓を深く知る自治体として、適正な運用モデルを全国に示してもらいたい。
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