Monday, February 22, 2021

マツダ初の量産EV 日常生活での利用に十分な走行距離|NIKKEI STYLE - 日本経済新聞

マツダは初の量産電気自動車(EV)「マツダ MX-30 EV MODEL」を発表した。写真は「EV ハイエスト セット」でメーカー希望小売価格は495万円(税込み、以下同)
日経クロストレンド

マツダは2021年1月28日、初の量産電気自動車(EV)「マツダ MX-30 EV MODEL(エムエックス サーティ イーブイ モデル)」を発表し、同日に販売を開始した。「35年までに、新車販売で電動車100%を実現」するという菅義偉首相の発言もあり、電動化が急がれる中、同車はどのような戦略を持つのか。

EVありきで開発された量産SUV

マツダ初の量産電気自動車(EV)「マツダ MX-30 EV MODEL」は、菅義偉首相が21年1月18日の施政方針演説で「35年までに、新車販売で電動車100%を実現」することを明言し、自動車メーカーや関連業界の対応が急がれる中で、注目度の高いモデルだ。

50年までに温暖化ガス排出量を実質ゼロとする「2050年カーボンニュートラル」実現へのチャレンジとして、同社の「マルチソリューション戦略」に基づき企画。20年10月に発売したコンパクトスペシャルティーSUV「MX-30」のEV仕様車なのだが、同車はそもそも「東京モーターショー2019」で「マツダ初の量産EV」として世界初公開されており、EVありきで開発されたことが分かる。

メーカー小売り希望価格は451万~495万円。3グレードあり装備が異なる。デザインや機能はMX-30と同等で、エンジンルーム内に電気モーターを搭載し、前輪を駆動する。駆動バッテリーはキャビン(乗員室)下に収めてあり、車室内はMX-30と同等の広さがある。

動力性能は最高出力107kW(145ps)、最大トルク270Nm。駆動用リチウムイオンバッテリーは容量35.5kWhで、航続距離は256km(WLTCモード)だ。

駆動用バッテリーはリチウムイオン電池で総電圧418V、容量35.5kWh

エンジン車との価格差サービスで補う

航続距離はEV選択のカギを握るが、MX-30 EV MODELは256kmと短い。例えば同じく量産国産EVである日産リーフ標準車の航続距離は、322km(WLTCモード)である。

なぜ短くなったのかといえば、マツダがライフサイクルアセスメント(LCA)でのCO2排出量の削減と、実用性の両立を優先したからだ。CO2排出量は欧州で実用車として選ばれているディーゼル車以下に抑え、走行距離は欧州の一般的なユーザーの1日をカバーできればいいという設計だ。家庭や職場などで日常的に使える充電環境があれば、容量不足を感じさせないという。充電機能は200V普通充電とCHAdeMO規格の急速充電に対応。それぞれの充電時間は、6kWの200V充電器使用で満充電まで約6時間。急速充電器使用なら40分で80%まで充電可能だ。

メイン市場は電動化が急速に進む欧州だが、日本のユーザーの1日の平均走行距離はより少ないと考えると、国内も性能的にカバーできるということだろう。

価格はMX-30のエントリーグレード(マイルドハイブリッド仕様)が242万円に対して、MX-30 EV MODELは451万円からと最低209万円高い。マツダとしても急速な拡販は見込んでおらず、初年は500台限定販売となる。

ただし、電動化推進のため、エンジン車同等の残価を保証した、残価設定型クレジットプランを用意し、3年間のプランで残価率55%を保証する。またEVライフを疑似体験できる「1DAYモニター試乗」や、初めてEVを検討する顧客の購入から保有までの電話サポートを行う「EV専用ダイヤル」を開設して販売を促進する。

また購入後のサポートの一環として、コネクテッドサービスを活用し、バッテリー状態をモニタリング。顧客に対し、バッテリーに優しい使い方のアドバイスを行う「バッテリーケアアドバイス」も今秋より提供予定だという。

メイン市場は欧州。航続距離は短めながら日常生活での走行には対応可能と想定

日本でもEVの市場自体は活性化

狙いにたがわず、既に欧州では1万台を超える受注を記録。着実なスタートが切れたといえる。その背景には欧州での厳しい排ガス規制がある。各自動車メーカーは積極的にEVなどのエコカーを売らなくてはならず、価格設定も戦略的だ。

また国によっては政府による補助金や減税もあり、それも受注を後押ししている。例えばドイツでは、20年7月にEV購入の補助金を3000ユーロから6000ユーロへ2倍に引き上げると発表(出典/日本貿易振興機構)。しかもエンジン車への支援は見送られているので、消費者の目はEVに向きやすい。

電動化シフトは、欧州が圧倒的に早い。対する日本はハイブリッドカー大国であるものの、EVの先駆的存在である初代日産「リーフ」が発売された10年当時より、エコカー補助金の額が減額されており、ユーザーとしてのうまみが少ないのが現状だ。

ただしEVの市場自体は活性化している。ホンダは新たにコンパクトEV「Honda e(ホンダ イー)」を20年10月に発売。これももともとは欧州市場向けといわれており、日本国内での販売目標台数は年間1000台と少ないが、ファーストオーダー分は完売するなど売れ行きは上々だ。また日産は今年、ミッドサイズSUV「アリア」の投入を予告している。

補助金や充電インフラにパンチがない

問題は、補助金や充電インフラにパンチがないことだ。経済産業省による「モビリティの構造変化と2030年以降に向けた自動車政策の方向性に関する検討会」では「カーボンニュートラルの実現には、都市・交通システムのイノベーションをどう展開・達成するかが重要」「蓄電池・自動車だけでなく、スコープを広げてビジョンを設定することも重要」などとしているが、現実問題として、EVなのか、燃料電池自動車(FCV)なのかといった議論もまだある。

加えて、消費者の意識も変えていく必要がある。環境意識の高い人や新しいもの好きをメインとせざるを得ない状況が続く限り、ホンダやマツダのように、EVに個性を与えて売っていくほうが成功に近いだろう。

電力のみでの走行が可能なEVを実現するパワーユニット「e-SKYACTIV」を新開発した「MX-30 EV MODEL」。今後のEV仕様車展開も注目したい

(ライター 大音安弘、写真提供 マツダ)

[日経クロストレンド 2021年02月04日の記事を再構成]

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