Wednesday, January 13, 2021

子供が発熱、親は「検査は困る」…新型コロナ 周囲の過剰な反応が招く“検査拒否” - 読売新聞

家族が検査…即、連絡網

子供が発熱でも親は「検査は困る」…新型コロナ 周囲の過剰な反応が招く“検査拒否”

 30歳代後半のTさんが、小学校低学年のお子さんを連れて来院された。お子さんは2日前に38度の発熱があり、喉の痛みと鼻汁があるという。来院時はすでに36.8度で解熱していたが、喉は赤く鼻汁もつらそうだった。そのせいで少しせきもある。元気に話はできるし、食事も食べられるとのことでお薬を処方することになった。

 Tさんと家族の体調を伺うと、他に風邪の症状、体調を崩している人はいないという。それでも現在のコロナ感染拡大を考えると、コロナ検査は必要だと考えた。そのことをTさんに告げると、コロナ検査を受けるのは困るのでやらないでほしいと言われた。

 Tさんの会社では、従業員本人はもちろんであるが、家族がコロナ検査を受けた場合も、24時間対応で電話とメールによる連絡網を回さなければいけないのだという。仕事上も周囲に甚大な迷惑をかけるため検査は拒否するとのことだった。Tさんのお子さんは、元気があるので、いずれにしても自宅で様子を見ましょうということになった。

歴史は繰り返す

 最近、医療現場で困っている問題の一つが、このようなコロナ検査拒否だ。検査を拒否するには、たいがい社会的理由がある。周囲の過剰な反応ゆえだ。

 会社などの組織としては、できる限り厳重な態勢をとらねばと考えるのは理解できるが、こうした対応に感染拡大を抑える効果がどれほどあるだろうか。弊害の方が大きかったり、Tさんのケースのように、感染症対策としてはむしろ逆効果になる場合もあるのではないか。

 この事態は2009年の新型インフルエンザ(A/H1N1型)の流行期の反応を思い起こす。A/H1N1型インフルエンザは今や通常のインフル予防接種にも組み込まれ、治療薬もある弱毒型インフルエンザだ。しかし当時は今と同じように、過剰な反応や感染者を 誹謗(ひぼう) 中傷するような行為が横行した。

今は必要な検査を円滑に

 コロナは世界で感染力の強い変異型が報告されている。ワクチンは軽症化させる期待が持てるが、最終的には薬が開発され、インフルエンザのような日常的な感染症となるまでに数年はかかるだろう。

 誰でも感染しうる今は、適宜検査を受け、拡大を避けていくことが大切だ。まずは、感染した可能性があることを隠さずに済むようにする必要があるだろう。社会に大きな影響を及ぼす会社組織においては、産業医と十分相談しながら過剰な対応は避け、マスクの着用やテレワーク活用・スタンバイ配置など、実効性の高い対策を日常化することで、コロナ検査・診療を円滑にできるようご協力願いたい。(常喜眞理 医師)

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