家族の介護や世話を日常的に担う子供「ヤングケアラー」の支援が急務となっている。各自治体でもサポート体制の構築を進めているが、ヤングケアラーについての周知や理解が不十分な面があり、当事者の家族に支援が行き届いていない現状がある。(丸山菜々子)
県北地域の高校3年生の男子生徒(18)は1年以上前から、体が不自由で認知症の祖母(86)の面倒を見ている。
母子家庭のため、母親(56)はサービス業の正社員として連日フルタイムで働き、男子生徒が祖母の夕飯の支度や掃除、家族の洗濯をしている。母親が懸命に働く姿を見ているからか、「大丈夫。できることは手伝うよ」と言ってくれるが、大学受験も控えている。
民間団体の食料や学習支援は利用しているが、行政からの支援は受けていないといい、母親は「最近になって息子がヤングケアラーだと自覚した。もっと支援が受けられるのなら、あまりお金をかけずに家事や配食サービスなどを受けたい」と語る。
外国人の家庭では、子供が家族の通訳を担うケースもあり、国によると、こうしたケースもヤングケアラーに当てはまるという。福島市に家族4人で住む高校2年のラトゥリ・ビシャルさんは、中学1年生の時にインドから日本に移り住んだ。
同市内の日本語学校で学んで高校に進学したが、両親は日本語に不慣れなため、学校を時々休んで市役所での手続きや病院に付き添う。親の仕事に関連する書類の対応も必要で、ビシャルさんは「家族のためと思って頑張っているが、自分もまだ日本語が上手なわけではない。通訳の支援がほしいし、学校でもっと勉強したい」と話す。
一人親家庭の支援に取り組むNPO法人「しんぐるぺあれんとF・福島」(郡山市)が昨年実施したアンケートの結果、県内の会員186世帯のうち、ヤングケアラーがいる世帯が4割近くに上った。病気の母親の介護や家事を担ったり、幼いきょうだいの面倒を見ていたり、状況は様々だ。
遠野馨理事長(53)は、自治体や学校、社会福祉協議会、医療関係者、民間団体などが連携して支援に当たるべきだとして、「支援を必要としている家庭はまだまだある。子供たちが疲弊する前に対応を急ぐ必要がある」と話す。
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自治体では近年、ヤングケアラーの支援に力を入れている。いわき市では、保育士や介護福祉士などの専門資格を持つコーディネーターを配置。各地区の保健福祉センターに対し、対象家庭に必要な支援や福祉制度などについてアドバイスしている。
ただ、実際に支援につながったケースは7件にとどまる。ヤングケアラーを発見しやすい立場にある教職員らの認識不足や支援への理解がまだ低い面もあり、市こども家庭課は「学校では家庭内の問題に踏み込むことへの難しさがあり、対象者の発見につながっていない。教職員の理解を深めることに力を入れたい」とする。
郡山市も4月にLINEによる専用相談窓口を設置したが、相談件数はまだ少ないという。同市の担当者は「当事者の子供が自身の特殊な家庭環境に気づいていないケースも多い」と指摘している。
からの記事と詳細 ( ヤングケアラー対応急務 周知不十分 当事者に支援届かず - 読売新聞オンライン )
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