Wednesday, June 29, 2022

1級河川の堤防「なし」「不十分」3割…7年前とほぼ変わらず、対策急務 - 読売新聞オンライン

 国が管理する全国の1級河川で堤防が必要な計約1万3000キロのうち、3割の区間で未設置や、高さや幅が足りずに機能不足となっていることが、国土交通省のまとめでわかった。記録の残る7年前と比較して整備率はほぼ変わらず、堤防整備には長い年月が必要なことから、堤防以外の対策が急務となっている。

 国交省によると、河川整備基本方針に基づき、堤防が必要と定められた区間は、昨年3月時点で1万3369キロに上る。このうち、1級河川を全国109の水系別でみると、堤防のない区間は77水系計729キロで、高さや幅が不十分な区間と合わせると、全水系で計4073キロあった。整備率は69%で、2014年(65%)からほとんど進んでいない。

 熊本県を中心に81人の死者・行方不明者を出した20年の九州豪雨で堤防が決壊するなどした球磨川水系では整備が必要な103キロのうち、堤防が未設置と不十分な区間は24キロで、人的被害が出た場所もあった。福岡、大分県で河川の氾濫や土砂災害が起きて42人の死者・行方不明者が出た17年の九州北部豪雨で流域が大きな被害を受けた筑後川水系では、必要な291キロのうち、11キロの区間で堤防がなく、不十分な堤防は112キロに及ぶ。

 国は「100~200年に1度の水害」を想定し、河川ごとの計画で優先度を決め、20~30年以内をめどに堤防を整備するとしているが、橋や線路がすでにあり、大規模改修が難しい場所や地権者との交渉が難航している場所も多い。国は「予算化された区間の整備を急ぎたい」としている。

 山田正・中央大教授(河川工学)は「国は治水対策の予算を削っていた時期があり、堤防整備には橋や線路など解決すべき課題も多い。堤防やダムなど河川の内側だけでなく、流域治水による外側の対策も必要だ」としている。

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