国内クルーズ船の県内港への受け入れが6月末にも再開する。実現すれば約2年5カ月ぶりとなる。新型コロナウイルスの感染状況にもよるが、いったん受け入れが戻れば、県内各港への広がりも期待される。一方、感染防止対策は十分だろうか。いま一度、検証する必要がある。
クルーズ船でのクラスター(感染者集団)が新型コロナに関する国内初の大規模な対処事例となったことは記憶に新しい。2020年2月、クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」での感染拡大である。
乗客、乗員約3700人を乗せ、東南アジアを回った船旅の横浜への帰路で那覇に寄港。船客を乗せたタクシー運転手らが感染した。
乗客らが船内で隔離される事態となった。さまざまな国籍の客を乗せ、各地を巡るクルーズ船での感染拡大という不測の事態であり、従来の保健衛生や防疫の枠組みでの対応が困難だった。政府の対応の遅さも露呈した。
県内ではダイヤモンド・プリンセス号の入港した20年2月以降、クルーズ船の受け入れは停止したままだ。
一方、県外では昨年9月末、緊急事態宣言解除のタイミングで、国内クルーズ船の代表的存在である「飛鳥Ⅱ」「にっぽん丸」が運航を始めるなど、1泊以上する国内クルーズ船の受け入れが再開されている。
一度に大勢が来県するクルーズ船の再開には、深刻に落ち込んだ観光産業を中心に期待は高い。だからこそ、前のめりになることなく、十分な備えをすることが必要だ。
今夏は空路の国際線も再開の見通しだ。水際でどう食い止めるかを国はしっかりと示してもらいたい。受け入れに関しては県民の不安を拭い去ることも必要だからだ。
運航会社は定員数の抑制、乗客へのPCR検査実施などそれぞれが対策を取る。受け入れには県や寄港地の自治体も主体的に対応してもらいたい。船内での対策が取られていても、運航会社任せでは検証までは不十分となってしまう可能性がある。
福岡博多港は19年、那覇港に次いで全国2位の寄港実績があったが、20年初旬から寄港はゼロだ。管理する福岡市は独自の条例や要領によって、船など港湾利用者に伝染病の恐れのある場合、港の利用を許可しないからだ。寄港の自粛要請だけでなく、利用予約があっても寄港を拒否する対応を取っている。
寄港拒否を明文化したのは、クルーズ船での感染拡大が地域の医療崩壊につながる恐れがあり、これに対する市民の不安を払拭するためだという。
博多港は今秋にも受け入れを再開する見込みだが、こうした独自措置を備えていることは心強い。離島を抱え、ひとたび感染が拡大すれば、医療体制の逼迫(ひっぱく)につながる沖縄でも検討に値する。
からの記事と詳細 ( <社説>クルーズ船寄港再開へ いま一度、十分な検証を - 琉球新報デジタル )
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