過去20年にわたり、ロンドンやニューヨークの若くて自信過剰な投資家がひたすら壊滅的な損失を被ってきたトレードがある。戦争などで夫を亡くした女性が増えるという状況になぞらえられて、東京の金融界では「ウィドウ・メーカー」として知られるが、彼らは再びそれに挑戦しようとしている。
この賭けはシンプルだ。円が24年ぶりの安値を更新する中で、為替相場の安定を求める圧力の増大を受け日本銀行が指標10年国債利回りの0.25%の上限設定を断念せざるを得なくなり、金利急上昇を容認するというものだ。米国やカナダ、欧州、途上国の多くでは既にこうした金利の大幅上昇が生じている。
ただその賭け金は高い。世界中の債券に投資する多数の貯蓄者を抱える日本で金利が急上昇すれば、金融市場全体に急速に反響する。アナリストによると、ほぼ全ての地域で利回りがさらに上昇し、企業や消費者、政府の借り入れコストが押し上げられ、エネルギー価格高騰とサプライチェーン混乱の影響ですでに失速し始めている世界経済に大きなストレスをかけることになるという。
さらに、より広いレベルでみると、日銀の利回り上限の緩和は世界の超低金利時代の終わりというはるかに大きな事象を告げることになる。日本は他国に何年も先立つ形で1990年代に超低金利時代に入った。日銀の黒田東彦総裁は数十年にわたり低迷する経済のてこ入れに必要な政策だと主張しており、現在では日本はそうした政策を堅持する唯一の国だ。
JPモルガン・アセット・マネジメントの香港在勤ポートフォリオマネジャー、アルジュン・ビジ氏は、日本が「国際的環境からますます懸け離れているようだ」と指摘。大幅な円安や輸入コストの上昇が企業や消費者を圧迫していることから、「日銀はいつかの時点で現在の政策枠組みの調整を余儀なくされるだろう」と付け加えた。
ビジ氏は日本国債の価格下落に賭けていると話しており、シュローダーやヘッジファンドのブルーベイ・アセット・マネジメント、グラティキュール・アセット・マネジメント・アジアも同じだ。
シュローダーの債券マネーマネジャー、ケリー・ウッド氏は「日本は、われわれにショートを促している一つの市場だ」とコメント。ブルーベイのマーク・ダウディング最高投資責任者(CIO)は最近、日銀のイールドカーブコントロール(YCC)は「維持不可能」だと述べた。グラティキュールは5月の投資家向け書簡で、日本は世界の金利のショートで最も有望な市場の1つだとの見方を示した。同社広報担当はさらなるコメントを控えた。
原題:
The Big Japan Short Is Back for Hedge Funds Betting Against BOJ(抜粋)
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