日本語学校が教員の確保に苦心している。新型コロナウイルスの水際対策で一時入国がストップしていた外国人留学生が今春から一気に来日しているうえ、コロナ禍で離職した教員が多く、不足に拍車がかかっている。日本語の基礎を身につけて進学や就職をする留学生も多く、学校関係者は「日本のために活躍したいと思う留学生に十分な教育を提供できない」と危惧している。(鶴田明子)
求人ずらり 5月下旬、福岡市博多区の「大谷書店」には、日本語教員の求人票がずらりと並んでいた。日本語教材を専門に扱う同店には、約20年前から九州各地の求人票が集まる。コロナが拡大した2年間はゼロの時期が続いたが、この日は県内外の39校が募集を出していた。
「応募期限が過ぎても集まらないことがある。どの学校も苦戦している」と店長の大谷茂さん(64)は言う。
日本語教育振興協会によると、日本語学校は全国に約820校あり、留学生は1~2年間学ぶ。出入国在留管理庁によると今年1、2月に「留学」の在留資格で新規入国した外国人は計104人だったが、3月に入国制限が緩和されたため、3、4月は計6万1699人に急増した。
一方、日本語教員になるには日本国際教育支援協会の検定に合格したり、420時間の講座を受けたりする必要がある。教員数は日本語教育振興協会に所属する約220校でも、コロナ下の21年7月で4970人と19年より1割減少した。
入学者3倍 2学年の定員が280人の福岡日本語学校(福岡市南区)では教員19人の6割以上が非常勤。留学生がほとんどいなかった2年間でベテラン4人が辞め、今は8人足りない状況だ。
留学生を年4回受け入れているが、2年間の空白を受けて4月は例年同月の3倍となる約220人が入学。常勤の教員が1人で複数クラスを担任するなどしてしのぐ。コロナ前に不採用とした人らにも声をかけ、人材確保に努めている。
2年間待って4月に来日したインド出身の男性(29)は「やっと日本で学ぶことができる。将来は母国の日本企業で働きたい」と話す。永田大樹校長は「水際対策がいつどのような形で緩和、制限されるかぎりぎりまで分からず、学生の募集も教員確保も見通しが立てにくい」と嘆く。
例年の5倍の留学生を受け入れる福岡県内の別の日本語学校では、教員の質の低下に目をつぶる。学校関係者によると、準備をせずに授業に臨んだり、学生の名前を覚える努力をしなかったりと「熱意の足りない教員でもやむを得ず雇用している」という。管理職自ら教壇に立って補う状態で、「数をそろえるためには人を選べない」と明かす。
支援を 同協会の高山泰専務理事は「小中学校などの教員に比べて日本語教員は認知度が低い。国家資格などに格上げしてもらうことで地位を上げ、全体の待遇が改善されることが人材確保にとっても大切だ」と話す。
留学生政策に詳しい東京工業大の佐藤由利子准教授は「日本の生産年齢人口が減少する中、留学生の力が必要になるのは明らか。日本語や文化を習得した優秀な人材の確保が難しくなれば、日本経済の国際競争力にも影響する」と指摘。「コロナ禍で大打撃を受けた日本語学校に待遇改善への努力を委ねるのは難しく、国の支援が必要だ」とする。
からの記事と詳細 ( 「十分な教育できない」日本語学校 教員不足…コロナ禍で離職、留学生入国再開 - 読売新聞オンライン )
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