Tuesday, June 14, 2022

海外では生々しい審理の中継も…法廷ネット公開、日本でも? - 読売新聞オンライン

 [New門]は、旬のニュースを記者が解き明かすコーナーです。今回のテーマは「裁判の公開」。

 「私が望むのは真実だけだ」。今、インターネットの動画サイトを開くと、米国の人気俳優のジョニー・デップさんが法廷でそう語る様子を目にすることができる。海外では生々しい審理が中継される国もあるが、日本でも法廷がお茶の間や端末に「公開」される日は来るのだろうか。

 元妻との確執、自身にかけられたDV疑惑、幼い頃に母親から受けた虐待の暗い過去。長い髪を後ろで束ねたデップさんが神妙な面持ちで告白を続ける。

 さながら映画のワンシーンのようだが、米バージニア州で開かれた本物の裁判の一幕だ。デップさんは4月、元妻を名誉 毀損きそん で訴えた民事裁判に出廷。証言台での赤裸々な発言はテレビやネットを通じて世界中に流れた。ユーチューブで配信された米NBCニュースの再生回数は300万回を超えている。

 米国の司法制度に詳しい和田恵弁護士(東京弁護士会)によると、多くの州では刑事裁判も撮影や放送が認められている。和田弁護士は「民主主義を重んじる米国は、透明性を確保して、司法制度に対する信頼を高めようという意識が強い」と話す。

 ドイツではかつて開廷中の撮影は全面禁止だったが、「過剰な制限だ」との声が上がり、2017年に法律を改正。社会的な関心が高いといった事件について、連邦最高裁などで判決の中継が認められるようになった。

 日本新聞協会の資料などによると、日本でも「裁判の公開」を定めた憲法が1947年に施行された後、しばらくは自由に撮影を行うことができた。

 ただ、カメラマンが法壇に駆け上がるといった混乱があり、49年に施行された刑事訴訟規則で撮影が許可制に。50年代以降、公安事件で審理が紛糾するなどした「荒れる法廷」の影響もあり、事実上「禁止」になっていった。テレビや新聞が報じる現在の法廷は、開廷を待つ裁判官らの映像や写真か、法廷画家が描くスケッチにとどまり、被告の姿が映されることはない。

 こうした制約の背景には、カメラが入ると被告や証人が心理的な圧迫を受け、法廷の秩序が乱れるおそれがあるという、裁判所側の強い懸念がある。

 とはいえ、傍聴が法廷内に限られれば、多くの希望者はその様子を見ることができない。

 1996年4月のオウム真理教教祖・麻原彰晃こと松本智津夫元死刑囚(2018年に死刑執行)の初公判は1万2292人が傍聴を希望。一般傍聴席は48席しかなく、競争率は256倍に達した。新型コロナウイルス禍では感染防止策のため、座れる席がさらに減らされた。

 こうした中、法曹界からは注目すべき意見が相次いでいる。

 最高裁の深山卓也裁判官(67)は昨年10月、報道各社のアンケートに「ネットは国民の情報獲得手段として活用されており、最高裁の審理の透明性をより徹底するため、動画配信を検討すべき時期が来ている」と回答。法務省の有識者検討会が今年3月にまとめた報告書には「オンライン傍聴を可能にすれば、『裁判の公開』の趣旨を促進し、国民の知る権利に資するとも考えられる」と記載されている。

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