[New門]は、旬のニュースを記者が解き明かすコーナーです。今回のテーマは「裁判の公開」。
「私が望むのは真実だけだ」。今、インターネットの動画サイトを開くと、米国の人気俳優のジョニー・デップさんが法廷でそう語る様子を目にすることができる。海外では生々しい審理が中継される国もあるが、日本でも法廷がお茶の間や端末に「公開」される日は来るのだろうか。
元妻との確執、自身にかけられたDV疑惑、幼い頃に母親から受けた虐待の暗い過去。長い髪を後ろで束ねたデップさんが神妙な面持ちで告白を続ける。
さながら映画のワンシーンのようだが、米バージニア州で開かれた本物の裁判の一幕だ。デップさんは4月、元妻を名誉
米国の司法制度に詳しい和田恵弁護士(東京弁護士会)によると、多くの州では刑事裁判も撮影や放送が認められている。和田弁護士は「民主主義を重んじる米国は、透明性を確保して、司法制度に対する信頼を高めようという意識が強い」と話す。
ドイツではかつて開廷中の撮影は全面禁止だったが、「過剰な制限だ」との声が上がり、2017年に法律を改正。社会的な関心が高いといった事件について、連邦最高裁などで判決の中継が認められるようになった。
日本新聞協会の資料などによると、日本でも「裁判の公開」を定めた憲法が1947年に施行された後、しばらくは自由に撮影を行うことができた。
ただ、カメラマンが法壇に駆け上がるといった混乱があり、49年に施行された刑事訴訟規則で撮影が許可制に。50年代以降、公安事件で審理が紛糾するなどした「荒れる法廷」の影響もあり、事実上「禁止」になっていった。テレビや新聞が報じる現在の法廷は、開廷を待つ裁判官らの映像や写真か、法廷画家が描くスケッチにとどまり、被告の姿が映されることはない。
こうした制約の背景には、カメラが入ると被告や証人が心理的な圧迫を受け、法廷の秩序が乱れるおそれがあるという、裁判所側の強い懸念がある。
とはいえ、傍聴が法廷内に限られれば、多くの希望者はその様子を見ることができない。
1996年4月のオウム真理教教祖・麻原彰晃こと松本智津夫元死刑囚(2018年に死刑執行)の初公判は1万2292人が傍聴を希望。一般傍聴席は48席しかなく、競争率は256倍に達した。新型コロナウイルス禍では感染防止策のため、座れる席がさらに減らされた。
こうした中、法曹界からは注目すべき意見が相次いでいる。
最高裁の深山卓也裁判官(67)は昨年10月、報道各社のアンケートに「ネットは国民の情報獲得手段として活用されており、最高裁の審理の透明性をより徹底するため、動画配信を検討すべき時期が来ている」と回答。法務省の有識者検討会が今年3月にまとめた報告書には「オンライン傍聴を可能にすれば、『裁判の公開』の趣旨を促進し、国民の知る権利に資するとも考えられる」と記載されている。
からの記事と詳細 ( 海外では生々しい審理の中継も…法廷ネット公開、日本でも? - 読売新聞オンライン )
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