Monday, August 29, 2022

石油中の硫黄化合物を紫外線で分解除去 | 研究成果 - 九州大学

 石油に数%程度含まれる硫黄化合物は、燃焼すると硫黄酸化物となり環境を汚染し、また自動車触媒の性能低下、燃費性能悪化などを招きます。現在、製油所で水素化脱硫という手法で硫黄化合物が除去されていますが、数十~数百気圧の高圧の水素や大規模な設備が必要であり、世界には脱硫が不十分な燃料が流通している地域も多いのが現状です。
 今回、脱硫が不十分な際に残りやすい含硫黄芳香族化合物を、紫外線を当てるだけというシンプルな操作で分解し、生成した硫黄単体を固体粉末の沈殿として分離させることに成功しました。
 九州大学大学院理学研究院の徳永信教授、村山美乃准教授、理学府博士課程3年篠﨑貴旭氏、トヨタ自動車稲見規夫氏らの研究グループは、石油中の難脱硫物質であるベンゾチオフェン類やジベンゾチオフェン類(※1)を炭化水素に溶かした状態で紫外線を照射すると、酸化反応に続いて電子環状反応などが連続的におこり、2~16時間で完全に分解することを見出しました。また、分解した後に、硫黄は硫黄単体として沈殿することを、各種の分析手法で明らかにしました。沈殿した固体はろ過などで取り除けます。
 これにより、大規模な設備や耐圧容器が必要なく、簡便な設備で硫黄分の除去が可能であることが示されました。水素化脱硫では、硫黄分が硫化水素という有毒ガスの形で排出されるため、その処理も安全に行う設備が必要ですが、今回、開発した手法では硫黄単体という無毒で不溶性の固体に変換されるため、さらなるコスト低減や、安全性の確保が容易である利点などがあります。また、従来の水素化脱硫は行える場所が製油所などに限定されていましたが、今回の手法は、ガソリンスタンドや自家用車の中などオンサイトで実施できるのも特徴です。
 本研究はJournal of Cleaner Production の電子版(投稿原稿)に8月5日(金)に掲載されました。

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