名古屋市中区の大須商店街で増えている「コンセプトカフェ(コンカフェ)」の自主規制団体が一日に設立された。同カフェは精霊や深海といった特定の世界観(コンセプト)を、店の内装や店員のコスチュームで表現して接客する飲食店。業界団体としては、東京・秋葉原に続いて二番目となる。大須で四店を経営し、理事長に就いた男城月菜さん(35)は、名古屋初のメイド喫茶に勤務した経験から、過剰なサービスが広がるコンカフェの現状を憂い「健全な文化として、大須にコンカフェを根付かせ発信したい」と力を込める。 (曽布川剛)
団体名は、「大須コンセプトショップ協会」。新型コロナウイルス禍に、大須でコンカフェが七十店以上に急増したが、風営法の接待にあたるサービスをする店も混在するため、発起事業者となった男城さんら八事業者が、地域に受け入れられる業界を目指そうと三月から準備を進めてきた。
こだわったのは、過剰サービスの排除と、安心安全を確保した未成年者の雇用。「キャストドリンク」と呼ばれる、店員(キャスト)と飲食をともにしながら会話できるサービスを提供する店舗は加盟できないようにした。また十八歳未満を雇用する場合、身分証と親からの同意書も求める規約を設けた。これらは、参考にした秋葉原の団体にはない、オリジナルのルールだ。
重視したのには理由がある。安城市出身の男城さんは、両親が別居する家庭に育った。幼少期から母の親族が営む飲食店で働くのが当たり前。母から暴力を受け「産みたくなかった」と言われたこともある。
両親と暮らせる家庭をうらやましく思い、学校に行かず、引きこもることもあった。「何のために生まれたのか」と思うこともある中、趣味のコスプレの延長で十七歳の時に働き出した大須のメイド喫茶が「救いになった」。
お店は、名古屋で最初のメイド喫茶で、「お帰りなさいませ、ご主人様」の接客文句が生まれた店とされる。メイド服姿で、来店時や注文、会計時に客と言葉をかわすだけだが、客は自分の名前を覚えてくれて「今日はつらいことがあったけど、頑張れる気持ちになれた。ありがとう」などと声をかけられることもあった。「メイド喫茶は自分じゃない何かになれる場所。子どものころからつらいことがたくさんあったけど、メイド喫茶で働いて楽しめる居場所ができた」という。
その後、別の店でも働くなどし、八年前から名古屋や東京でコンカフェの経営を始めた。コンカフェで働くことを夢見る未成年者を雇うことも多いが、コロナ禍で増えた競合店のサービスが過剰になるのを見て「ガールズバーとコンカフェを一緒にされては、品位を保てない。地域にも受け入れられ、キャストの親も安心させるには、同業者が健全な営業を目指し話し合える場が必要だ」と、団体設立を呼びかけた。
目指すのは、自分を救ってくれたあの店のサービスが、コンカフェにとって当たり前になるような業界。「キャストドリンクがなくても、客が非日常の癒やしの場を楽しめるのがコンカフェ。大須発祥とも言えるコンカフェ文化を広めたい」と先を見据える。
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