Sunday, December 25, 2022

(社説)五輪検査報告 全体像は不明のままだ:朝日新聞デジタル - 朝日新聞デジタル

 巨額の公金を投じた国際的な大規模イベントに使われた経費の総額がいくらなのか、適切に公表されなかった。招致から開催にいたる詳細を国民が理解できるよう、十分な情報が提供されていなかった。

 そんな不透明さと不誠実さを断じたのが、東京五輪パラリンピックの大会経費を国会の要請で調べた会計検査院の総括報告である。

 大会組織委員会(解散)が6月に公表した最終的な大会経費は約1兆4200億円だった。

 しかし、会計検査院は、国の負担した分を中心に「大会に直接必要な経費」を精査。組織委のまとめよりも約2800億円多い約1兆7千億円だった、と認定した。選手強化費や警備、ドーピングの対策費など、組織委が算入していなかったものも直接経費だと判断した。

 大会経費は国と東京都、組織委の三つがチェックも含めそれぞれ担当したため、総括的に算出して全体像とその詳細を公表する仕組みがない。それに乗じて、経費をできるだけ小さく見せようとしたり「付け替え」したりする行為が横行していたとみられても、やむを得ない。

 とくに大会の準備と運営を担った組織委は、民間契約が多いことなどを盾に、多くをブラックボックスにしている。働く人たちは寄せ集めで大会が終われば解散することも、構造的に無責任さを助長させたといえそうだ。会長だった森喜朗氏や橋本聖子氏、事務総長の武藤敏郎氏らリーダーたちは、今からでも説明責任を果たす必要がある。

 そもそも招致の際、国際オリンピック委員会(IOC)に示した経費は約7300億円だった。それが今回、検査院は、国や都の「関連経費」まで含め、大会に関わる総額は約3兆6800億円になると認定した。招致では競合都市との比較で費目が直接経費の一部に限られたとはいえ、金額を小さく見せることが目的化し、全体像を隠し続けたことが五輪への不信を増大させたのは間違いない。

 東京五輪をめぐっては、大型汚職の裁判が始まり、談合事件の捜査も続く。

 札幌市が招致を目指す2030年冬季五輪の開催地は、来秋の決定予定が先送りされた。札幌市は機運醸成活動を中断し、招致の賛否を問う意向調査を改めて行う方針を示した。しかし招致の是非を論ずるにはまず、巨大イベントの運営を透明化する十分な仕組みが必要だ。

 どれほどの資金がどんな目的で、どう使われ、どんな効果を生むのか。チェックはどのようにするのか。法制度の整備を含め、検討の土台となる東京五輪の検証がやはり欠かせない。

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