Monday, December 26, 2022

(社説)生態系を守る 実効ある対策で未来へ:朝日新聞デジタル - 朝日新聞デジタル

 生態系を守っていく行動ができるか、問われている。カナダ・モントリオールで開かれていた生物多様性条約締約国会議(COP15)で、2030年までに地球の30%を保全する「30by30(サーティバイサーティ)」などを盛り込んだ新目標が採択された。地球と様々な生き物が長年かけて育んできた環境を、実効性のある対策で未来に残していかねばならない。

 世界では100万種の動植物が絶滅の危機にあるとされ、待ったなしの状況だ。

 保全は、食べたり利用したりする人間のためでもある。生物多様性と生態系の現状を科学的に評価する国際組織(IPBES)の報告書によると、人類は食料やエネルギー、薬などに多くの野生種を使うが、将来も利用できるのはその34%にとどまる。全漁獲量の3分の1は乱獲というべき状態だという。

 10年のCOP10では、20年までの「愛知目標」が採択された。「20年までに陸域の17%と海域の10%を保全」「劣化した生態系の15%以上を回復」など20項目を掲げたが、ほとんどが未達成に終わっていた。

 愛知目標の後継となるのが、今回の「昆明―モントリオール目標」だ。COP15は第1部が21年に中国・昆明で、第2部がモントリオールで開かれた。

 新目標には「陸域、海域、河川や湖沼などの内水域を30年までに少なくとも30%保全する」「プラスチック汚染を減らし、過剰な肥料と農薬のリスクを半減させる」「企業や金融機関の事業活動による影響の評価や、情報の開示を促す」「食料廃棄の半減、過剰消費の大幅削減」「有害な補助金の削減」など23項目が掲げられた。

 途上国が求めた新基金の設置は見送られたが、既存の国際基金に生物多様性も組み込むことで合意。デジタル化された生物の遺伝情報による利益を先住民や地域社会にも配分する仕組みを設ける方向となった。

 新目標も、ハードルは低くない。だが、野生生物の絶滅リスクを減らす意義を共有して合意した意味は大きい。各国が戦略を練り直し、具体的に動きだすことが重要だ。30%の保全も数字合わせにしてはならない。

 達成の実現に向け、COP16までに各国の国家戦略を評価・検証する仕組みが導入されるのも目を引く。目標倒れにせず、対策に実効性を持たせるのに有益だ。政府は、検証や情報公開の着実な実行、今回積み残した課題の調整も進めてほしい。

 食料廃棄の削減や過剰消費の抑制は、誰もが取り組める。生態系から利益を受ける企業の役割も大きい。政府や自治体は、それぞれの取り組みを促す政策を強化していくべきだ。

Adblock test (Why?)


からの記事と詳細 ( (社説)生態系を守る 実効ある対策で未来へ:朝日新聞デジタル - 朝日新聞デジタル )
https://ift.tt/QTdGIxU
Share:

0 Comments:

Post a Comment